この船のキャプテンとして、私には責任がある。
昔々、船と言えば水の上を走るものであったらしい。
私たちの祖先は母星で文明を発達させていって、
母星から技術を使って、宇宙へと繰り出した。
そのときには、船と言えば宇宙も走るものも指すようになった。
特別に宇宙船と呼ばれたのは、宇宙に繰り出した初期のこと。
移動手段に宇宙を走るものも、
いろいろな惑星で水の上を走るものも、
だいたい船と呼ばれて久しい。
宇宙を走っている船が、惑星に入ってきて、
そのまま惑星のいわゆる大気圏内の、
水の上を走ることもある。
宇宙と惑星とコロニーと、
いろいろなところをそのまま走れてしまうのが船というわけだ。
母星から祖先が宇宙に出て、
宇宙にいろいろな集まりを作っていって、
母星の他に暮らせる惑星を見つけて、
そこでまた違った文明ができて、
母星で国というものがあったように、
惑星やコロニー間で国のようなやり取りがある。
同盟を結んだり、戦争をしたり、
平和なところでは貿易をしたり、
物騒なところでは、貿易している船を襲ってくるものがいたり。
母星では海賊などと言われていたようだけど、
宇宙では海ではないので、
星間賊などと言う言葉がそのまま使われている。
私は星間賊が多発する地域を取り締まる、
星間同盟の軍の、戦艦の艦長だ。
艦長という言葉よりも、私はキャプテンと呼ばせている。
戦艦はひとつのチームであると私は思っている。
誰が欠けてもいけないと思っている。
チームのキャプテンとして、私はありたいと思っている。
スポーツのチームもキャプテンという言葉が使われていると聞き、
私もそれにならってキャプテンという言葉を使わせている。
平和ならばその方がいい。
スポーツのチームのような平和なものであればその方がいい。
ただ、平和を乱すものに対しては、
この戦艦の戦力を総動員して、
星間賊を鎮圧する次第だ。
そのときも私たちの戦艦は、
星間賊多発地帯を航行していた。
レーダーに反応。
星間賊が貨物船を襲っている。
副キャプテンが貨物船と星間賊の来たであろう地域を割り出した。
貨物船は密輸船のようだった。
船の地域の偽造が見られていて、
違法なものを運んでいるらしい。
星間賊はその違法なものを許せないらしい。
多分正義感から襲っているのだろう。
しかし、正規の組織には所属していない。
このままでは星間賊が裁かれるし、
密輸船が助けられて、また、違法なものを運ぶことになる。
私は考えた。
そして、キャプテンとして答えを出した。
私は戦艦の砲撃を指示した。
星間賊と密輸船の接しているあたりを通して、
密輸船の動力を撃ち抜く。
星間賊を攻撃したという大義名分は成り立つ。
密輸船は密輸船であることを隠しているので、
我が艦から救助に向かうという前提で、
違法なものを見つけ出して証拠にすればいい。
星間賊に関しては、
正義感の有り余った一般人の行動として報告しよう。
全ては私が責任をとる。
私が決定したことだ。
そう皆に通達すると、すぐさまそれぞれの役目に取り掛かった。
密輸船は証拠を押さえられ、
司法の手に引き渡されることになった。
相当悪質なものを運んでいたらしく、
おそらく厳罰だろうとのことだ。
星間賊に関しては、私は一般人だと報告をした。
星間賊の頭であろう若者が、
私になぜだと言ってきた。
私は答えた。
この正義感を持ったチームを処罰するのは私の性に合わない。
君が船のキャプテンであるのならば、
そのチームを導き、責任をとれるようになりなさい。
君の正義感についてくるものはいる。
星間賊でなく、正規の手順を踏んで、
君は正義を行うチームのキャプテンになりなさい。
私がそう告げると、
星間賊の若者はうなずいた。
あの若者は若い頃の私によく似ている。
正義を追い求めて無茶をしていた頃の私によく似ている。
船のキャプテンになって、
私は責任の重さを感じ、
その責任を引き受けることによって、
皆を導こうとしている。
あの若者もいずれそうなるだろう。
キャプテンの責任の重さは、たくさんの命と正義が乗っている重さだ。
私はその重さのひとつひとつを大切に感じ、
宇宙の正義を守っている。
守るものはとても多い。
そのすべてを守るのが、キャプテンというものだ。
私はそう信じている。