風が春めいてきたなと感じる。
これは多分春の季節風だ。
天気図が出てきてもあいかわらずさっぱりだけど、
天気予報をぼんやり見ていると、
西高東低の冬型気圧配置、というのが減ってきている気がする。
最近の天気予報はわかりやすくしてくれているのか、
日本各地の風向きを地図に重ねてくれている。
そうしてわかるが、北風率が減っている気がする。
ああ、春が本番になってきているんだなと感じる。
雨が降ることもあるし、寒い日もたまにはあるけれど、
この寒さが数ヶ月続くという感じはない。
数日もすればあたたかくなると、
天気予報を見なくてもなんだかそう感じられる。
春本番に向けての天気の移り変わりなんだと、
体感で感じられる。
西の風は大陸からの風だとか。
大雑把に言ってユーラシア大陸。
北の風だとシベリアからで、
西の風だと大雑把に中国。
南の風はあたたかい地域からだけど、
日本の南は基本海だから、
南の風はあたたかさと湿気を持ってくる。
春一番は南の風。
しかもとても強い風。
これも季節の風なのだろうなと思う。
木枯らし一号というのも聞いたことがある気がするけれど、
これは多分北風かな。
風は季節を届けてくれる便りだ。
次の季節がやってくるよと、
いち早く知らせてくれる便りだ。
確かに天気予報はわかりやすいけれど、
外に出て、風を感じていると、
季節の便りが届いているのを感じられる。
あたたかい季節風、
冷たくなってくる季節風。
湿気が多くなってくる季節風。
からからに乾いた季節風。
季節風は、身体にじかに触れることによって、
季節の移り変わりをダイレクトに伝えてくれる。
この風を感じるのは、やっぱり外に出ないとなと思う。
家の中は安全で快適ではあるけれど、
外に出ないと本当の季節風は感じられない。
肌を撫でていく、本当の季節は、
やっぱり外に出ないと感じられない。
いろいろなお店の季節限定品も季節感はあるけれど、
それよりまず、季節風が吹くことを感じられたら、
大きく季節が変わっていることを感じられるような気がする。
私は晴れた昼の庭に出る。
風が強く、花粉が大変だと聞いた。
船が帆で風を受けて進むものは、
やっぱり季節による風向きを知ることが大事なんだろうなと思う。
昔はタンカーなんてなかったから、
季節の風を知り尽くした船乗りが、
荷物を載せた船を操っていたんだろうなと思う。
その船は、港をいくつも回って、
日本だけでないどこかの国まで行ったんだろうか。
日本とは違う季節風を知っているガイドがいて、
この季節はこの風を受けるなど、
風を知りながら世界をめぐっていたのだろうか。
風は世界中に吹いている。
多分各地で季節風の感覚は違うんだろうなと思う。
この風が吹くと春が来るというのも、
世界各地で何となく違うんだろうなと思う。
昼の庭は風が強い。
今日は春風が吹いている。
空気がある限り世界のどこかとつながっていて、
この風がつながっている世界のどこかで、
私のように季節を感じている誰かがいるかもしれない。
その誰かも春を感じているかもしれない。
そこでの春はどんなものだろうか。
心地いい季節であればいいなと思う。
この世界をぐるぐると、季節風が吹く。
天気図はあいかわらずわからないけれど、
世界に国境なんてひかれていないことはわかる。
季節風は国境なんてお構いなしに、
季節の便りを届けに来てくれる。
生きるものが季節対策をいくらどうにかしようとも、
結局季節はお構いなしに変わっていく。
風は本当に自由だと思う。
ああ、どこにでも行けて、誰とでも触れ合えるんだなと思う。
私もそのくらい軽くなれたら、
世界中を回る風になりたいなと思った。
春の季節風が吹く。
春本番まであと少し。
じきに桜も咲くだろうか。
心浮かれる季節の便りがもうすぐ届く。
外に出るのがとても楽しい季節の便りがもうすぐ届く。
季節風は便りを届けてくれる。
私は外に出て、季節の便りを感じよう。
季節は全部の感覚で感じないともったいない。
せっかく季節があるのだから、
全力で感じて全力で楽しまないともったいない。
季節風は私の頬を撫でていく。
私はその心地よさに微笑んだ。