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第168話 タコの吸盤

見れば見るほどタコっぽいんだよなぁ。


俺はひょんなことから異世界にやってきた。

まぁ、なんやかんやあって、

それなりに能力は強化されている。

この異世界のバランスを取って欲しいとのことで、

モンスターを退治したりしている。

魔王の勢力が強すぎると問題だから、

そっちの方もほどほど勢力を削って欲しいらしい。

魔王を退治しろというのは、

どこかの何かの話で聞いたような気がするけれど、

とりあえず俺の役目はバランスを取るとのことなので、

ほどよくいろいろな勢力のバランスを取るべく、

魔王を退治まで行かず、勢力を削ったりしている。


さて、この異世界には、

俺とは違う世界からやってくる、

別の異世界の存在がいるらしい。

話を聞くところによると、

バランスを取る俺とは全然別の目的があるらしく、

それこそこの異世界を征服しに来るらしい。

別の異世界の存在は、空からやってくるらしく、

記録に残っている昔々の話では、

空からやってきた征服者の異世界人を、

異世界人のドラゴン部隊が退けたらしい。

その征服者の異世界人がまた来るとか、そんな話があるらしい。

空に裂け目ができているとか、

そんな話を聞いた。


俺の世界で言うところの、

宇宙人みたいなものだろうか。

確か、だいぶ前の話だったように思うが、

火星にはタコみたいな宇宙人がいるとか、

そんな話が出ていたと聞いたことがある。

火星人がタコみたいだという話は、

そのあとなんだか立ち消えになって、

銀色の目がでかい宇宙人が主流になって、

そのあとはどんな宇宙人が主流になったかな。

そっちの方はあんまり調べてないからわからん。

まぁ、征服者の異世界人が空からやってくるということを聞いて、

俺はなんとなく宇宙人を連想した。


異世界で、空の裂け目が大きくなったという情報が共有されて、

征服者の異世界人に対して、対策を講じていた頃、

俺は空の裂け目から小型の何かが出てきたのを見た。

いわゆる偵察のものだろうと俺は思った。

異世界に来た時に上がった能力を使って、

小型の乗り物を追いかけて、

ジャンプをして上から乗り物に乗り、

自作の槍のようなものを使って壊して、

小型の乗り物を墜落させる。

爆発こそしなかったけれど、

小型の乗り物は動かなくなった。

俺は小型の乗り物をいわゆる屋根らしいところから破壊すると、

中にはタコのような生き物がいた。

どうやらこいつらが征服者の異世界人らしい。

異世界に来た時に言語は通じるようになっているが、

征服者の異世界人は、俺たちのことをエサと言っていた。

エサのくせに生意気、らしい。

どうしたもんかなと俺は考える。

しかし、見れば見るほどタコのようだ。

エサ、なるほどと俺は思う。

吸盤のある触手を持っているようだし、

これはもうタコだなと俺は思った。

俺は征服者の異世界人をしとめると、

下処理して刺身にして食べてみた。

タコだ。ワサビや醤油でいただきたいな。

カルパッチョ風ならばこっちの世界でも行けるだろうか。

とにかく、征服者の異世界人は美味い。

吸盤がコリコリして美味い。

まごうことなくタコだ。


俺は偵察に来ていた征服者の異世界人を食べた旨をみんなに報告した。

みんなは最初こそびっくりしたが、

俺がその美味さを熱弁すると、

美味いものが空からどんどんやってくるという考えになった。

征服しにやってくるのでなく、

奴らは食われにやってくる食材だ。

奴らは俺たちのことをエサだと言っていた。

奴らは俺たちのことを食べ物にしか思っていない。

俺たちもまた、奴らを食べ物と思っても当然だ。

話が通じないのならば、それは食材だ。

美味いんだから食べてしまおう。

異世界の皆の食欲に火がついた。


やがて、空から征服者の異世界人がどんどんやってきた。

この異世界のみんなですべて撃墜させて、

片っ端から食べていった。

俺もだいぶ食べたけれど、本当に美味いタコだった。

宇宙人がタコというのが昔あったけれど、

異世界での宇宙人はタコだったんだなぁとしみじみする。

タコの吸盤はコリコリと。

タコ焼きにするとこの吸盤が美味いんだが、

さすがにタコ焼き機なんてものはないなと思う。


異世界の征服者が開いた空の裂け目は閉じられて、

どうやら征服者は逃げたらしい。

まぁ、敗因は美味かったことだな。

来た分すべてを食べつくしてしまったので、

次に食べられるのはいつになることやらだ。

この異世界で伝説の食材になるかもしれない。

やっぱりタコは美味い。

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