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第165話 そろそろ白黒つけようか

そろそろこの関係に白黒つけようか。


私とあなたの関係は、

白とも黒ともつかないグレーな関係だ。

いい関係ではあるのだけど、

関係を表す確たる言葉がない。

何と表現すればいい関係なのかわからない。

友人でもない、恋人でもない、

幼馴染のような気もするけれどそれだけでないし、

親友といえばそれのような気がするけれどしっくりこないし、

兄弟のような関係というのもなんだか違うし、

ただの同級生という関係でもない。

あまりにもずっと近くに居続けて、

私たちの関係が何なのかわからなくなってしまった。

グレーの関係というのは、

関係を表す色彩が全部混じってしまっているからかもしれない。

ただ、そろそろ白黒つけるべきだと思う。

この関係に名前を付けたい。


私とあなたはずっと近くにいて、

隣にいるのが当たり前のまま育ってきた。

私とあなたは異性だ。

恋に落ちるという可能性もないわけではないけれど、

恋と一言で済ませる関係ではない。

いろいろな関係を表す言葉が、

合っているような気もするし、

また、全然しっくりこないようでもある。

私たちは何なのだろうか。

はっきりしない関係を続けていたから、

それがあまりにも長かったから、

今になって訳が分からなくなってしまった。


私は、あなたよりも先にこの関係に白黒をつけたいと思う。

それは、離別というものでなく、

私の方が先に、適切な関係の言葉を見つけたいと思う。

どの関係を表す言葉もなんだか違うのであれば、

まずは私が言葉を見つけたい。

あなたよりも先に見つけたい。

今まで私とあなたは、

何かを見つけることに関しては競争だった。

幼い頃から、お互いにとって宝物と思われることを、

探して見つけることに関してだけ、手加減無しの競争だった。

争っている訳ではないけれど、

お互いにとっての宝物は、自分が見つけたい。

そして、見つけたものを私たちで大事にしたい。

そのあたりはずっと一緒だ。

だから今回も、

お互いの関係を表す言葉を私は探す。

たぶんあなたも探している。

今、私とあなたは競争をしている。

私たちの関係に白黒つけてはっきりさせるために、

私たちは競争している。

今までのことをたくさん思い出している。

お互いにどんなことを経験してきたか。

どんなことを思ってきたか。

どんなことをされると嬉しかったか。

思い出とされることにはどんなことがあったか。

今、私とあなたは、

記憶を総ざらいして、私たちの関係に白黒つけようとしている。

私たちを表す言葉を探して、

私たちはたくさんの記憶を思い出す。


ふと、競争していることを思い返す。

大事なものをいつも競争して探していたこと。

勝率は五分五分。

私も見つけるし、あなたも見つける。

そして、お互いが見つけたものをお互いに大事にする。

まずは競って探す。

早く見つけてあげたいと思うのと、

負けないぞという気持ち。

幼い頃からこのあたりは変わっていないなと思う。

きっとこれからも大事なものを競争して探すんだろうし、

きっと勝率はいつまでたっても五分五分なんだろうなと思う。

私とあなたは異性。

でも、こんな競争を続けていくような気がする。

恋愛結婚というルートでなく、

異性の友人というルートでなく、

こんな関係を何というのだろうか。


私は、ひとつの単語を思いついた。

好敵手。ライバル。

私の中で閃いた。

これだと思った。

それと同時に、私のスマホに着信。

あなたからだ。

あなたは興奮した声で、

この関係ってライバルだね。

と、言っていた。

多分思いついてすぐに連絡したのだろうなと思った。

私もちょうどそう思ったと告げたら、

今回は引き分けかと笑われた。


私たちはライバル。

お互いにとって大切なものを競って探すライバル。

宝物を探すトレジャーハンターに近いかもしれない。

時には協力し、時には出し抜き、

腐れ縁のトレジャーハンター。

見つけたお宝は、お互いとても大事にする。

そう、ライバルだ。

私たちの関係はひとつ形を得た。


ライバルだったら、

勝敗にもっと白黒つけるのもいいかもしれない。

私とあなたは異性、混じりあうことがない。

それでも互いの手の内を知り尽くしていて、

競い合い続けるライバル。

今はライバルという関係に落ち着いているけれど、

これがしっくりこなくなったら、また、関係に白黒つけよう。

今度こそ私が先に見つけるつもりでいる。

あなたも多分同じことを考えている。


心を許しているけれど完全には油断できない関係。

今は、ライバル。

これからはまだわからない。

未来はどうにも曖昧で白黒ついていない。

そんなものだと私たちは笑う。

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