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第160話 チューインガムをかみながら

口さびしいとチューインガムをかむ。

かみしめていると、なんとなく安心する。

口の中が満たされると、心もどこか満たされるのかもしれない。


仕事の合間、しゃべる必要がない時、

私はチューインガムをかむ。

仕事はそれなりストレスがつきものだ。

いろいろなマイナスの感情がぐるぐると回る。

ストレスを抑えてくれるものは、

私をはじめとして、同僚によってもいろいろだ。

飴という同僚もいるし、

煙草を吸いに行く同僚もいる。

私はもっぱらチューインガムだ。

一時期グミも試してみたけれど、

口からなくなってしまうのが寂しくなって、

美味しいけれど結局止めて、

チューインガムに戻ってきた。


チューインガムは好きなだけかんでいられる。

味がなくなっても口の中にあり続けるのがいい。

かんでかんでかみしめて、

口の中にずっといつづけてくれるのがいい。

口の中が何もなくなってしまうというのが、

私は寂しいのかもしれない。

常に何か食べていたいわけではないけれど、

口の中が満たされると寂しくないような気がする。

食べたいわけではない。

カロリーや栄養を摂取したいわけでもない。

ただ、かみ続けることによって満たされたいのかもしれない。


仕事を中断して、

チューインガムを口に入れて、

ぼんやりしながらチューインガムをかむ。

赤ちゃんのような感覚だろうかと思う。

赤ちゃんは母親のおっぱいを吸うことにより、

一体感と安心を得られるとか。

口に何かを入れていることにより、多分寂しくないんだろうなと思う。

そのあたりは私も共通しているのかもしれないと思う。

仕事をするくらいの年齢になっても、

どこかに赤ちゃんが残っているのかもしれない。

まぁ、赤ちゃんから始まった私だから、

赤ちゃんが完全になくなるということもないと思う。

赤ちゃんが残り続けていてもおかしくはない。

母親のおっぱいで母乳を飲む代わりに、

口にずっと残り続けてくれるチューインガムになったということだろう。

赤ちゃんとは違って歯も生えているから、

吸うよりもかむになっているのかもしれない。

大抵みんな赤ちゃんから始まった。

一番ストレスがない時は、母親のおっぱいを飲んでいる時だとしたら、

ストレス対策にそっちに似たものを選ぶのもおかしくないなぁと思う。


仕事はそれなりにストレスにあふれている。

みんなでストレス対策をしているけれど、

口に何かを運ぶことが多いのは、

楽なのもあるかもしれないけれど、

赤ちゃんの残りだろうかと思う。

寂しいと何かを口に運びたくなる。

死ぬまで赤ちゃんはどこかに残り続けているんだろうなと思う。


抱擁や口づけがストレスにいいとか、

どこかで聞いたような気がするけれど、

仕事中にそんなことはできない。

異性にそんなことしたら男女問わずセクハラ問題になる。

仕事をする大人というのは、なんとも難しい。

赤ちゃんの抱っこや、トントンと寝かしつけられることは、

やっぱりストレスによかったりするんだろうし、

誰かとともに生活しつつ、安心できる場所で眠るというのも、

私をはじめとした、みんなの根っこのようなところで、

ストレスに効くものなのかもしれない。

結婚が難しいとかなんとか聞くけれど、

結婚がゼロにならないのは、安心できる存在を求めているからかなと思う。

大人になっても、やっぱり安心したいんだろうな。


チューインガムをかんでいると安心する。

口の中が満たされて安心する。

口の中が満たされるならば口づけはどうなんだろうかと考える。

性的なイメージもあるので、

なんとなく私の中では合わないなぁと思う。

ただ、いつか心から安心しできる誰かと口づけするようなときに、

もしかしたらすべてのストレスが吹き飛ぶのかもしれないとも思う。

想像に過ぎないのでよくわからない。


私はストレス対策にチューインガムをかむ。

満たされる心地は赤ちゃんのように。

さて、仕事をもうひと踏ん張り。

ずっと赤ちゃんではいられないけれど、

大人は仕事やストレスがつきものだけど、

私もみんなも折り合いつけて生きている。

チューインガムは私を満たすもの。

何も不安がなかった頃にかえしてくれるもの。

あの頃にちょっと戻れば、

私はまだまだがんばれる。

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