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第156話 船が港にやってくる

ここは港町。

港に向かって川があって、

川から水路がたくさん作られていて、

港町は網目のような水路の町でもある。

港に船で運ばれてきた荷物は、

小舟に乗せ換えられて、

網目のような水路を介して町のあちこちの店に運ばれる。

船で運ぶと人力で運ぶよりもいいという理由で、

水路の多い港町は、船が行きかい、活気に満ちている。


港町がにぎわうのは、

遠くの地方から大きな船が来る時だ。

遠くからの船は、珍しいものをたくさん乗せている。

商人が商売のためにやってくるのは当然として、

とにかく大きな船はとても立派だ。

ちょっとやそっとの波ではびくともしないほどの立派なもので、

遠くの地方の美しい装飾などが施されていたり、

遠くから来る航海にも耐えられるほどの造船技術が結集していたりで、

子どもは立派な船に大はしゃぎするし、

港町の造船技術者は記録をとりながら勉強をする。

荷下ろしに時間がかかる時などは、

機密でないところの船の中も見せてくれるらしい。

運んできた荷物の他にも、

遠くからの船の中にはワクワクさせるものがたくさんある。

遠くからの船が来ると、

そんなわけで港町は大賑わいになる。


港町には、商船だけでなく、

漁船もたくさん行きかいする。

新鮮な魚をとってきて、

港町の市場で売りさばき、

売れた魚は水路を通っていろいろな店に卸される。

新鮮な魚はこの港町のあちこちの台所に上り、

また、料亭などでも手の込んだ魚料理がふるまわれる。

料亭では商談などが行われることがあり、

港に上がった新鮮な魚料理で気分がよくなった商人が、

気前のいい商談をしているらしい。

商人も一筋縄ではいかないとはいえ、

やはり美味しいものを食べると気分がよくなり、

自分も相手も得するように、気分がよくなる話をまとめてしまうらしい。

港町に流れてくる川の上流では、

良質の水で酒造りも盛んであるらしい。

川の上流で作られた酒が、

船に乗って港町までやってくる。

美味い酒は料亭にも上がるし、

また、港から色々な地方にも運ばれていく。

船はいろいろなものを運ぶ。

運ぶいろいろなものは、港町を豊かにし、

人々を笑顔にし、幸せにしている。


港町の海の向こう。

船でしか知らないいろいろな地方がある。

港町は未知の場所への玄関。

海で繋がっているどこかへの入口だ。

港町から海を通じてたくさんの場所とつながっている。

まだ船がたどり着いていない地域もあるかもしれない。

聞いたことのない場所もまだまだあるかもしれない。

全ては海で繋がっている。

この港町から、どこまでも繋がっている。

知らないことはまだまだある。

海の向こうに、会ったこともない存在がたくさんいる。

港町の住人は、海を見るたびに思う。

海の向こうにどんなものがあるのだろうかと。

それを考え始めると好奇心が止められない。

港町の住人は皆、海の向こうに憧れを持っている。

今度はどんな船が来るのだろうか。

どんな品が届くのだろうか。

この港町から出て行った港町の品の評判はどうだろうか。

漁船は大漁だろうか。

どこかの船にはどんな人が乗っているのだろうか。


今日も港町に船がやってくる。

港町はいつものように活気に満ちている。

水路には船が行きかい、

大きな船から珍しい品が荷下ろしされる。

老いも若きもみんな笑顔で、

船がやってくることを歓迎している。


海の向こうにいる誰かと、

こうしてつながれることがとても嬉しい。

港町の住人は皆、そんなことに喜びを見出している。

底抜けに明るい港町の住人たちは、

今日もやってくる船を歓迎する。

海で繋がっていれば、みんな海の家族のようなものだ。

離れていた家族を歓迎するように、

港町はやってくる船を歓迎する。


ここは港町。

幸せで豊かな港町だ。

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