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第150話 ソーダの泡のように

ここはあの世とこの世の狭間。

いろいろな描かれ方をしている場所ではある。

川があるとか、天国があるとか地獄があるとか、

輪廻があるとか、どうしたこうした。

そのあたりは宗教も絡んでくるし、

あの世とこの世の間を経験したことがないと、

その独特の感覚や、感じ方などはできないものだと思う。

生きている間にいろいろなイメージがついてきて、

それが元になって感じるものでもある。

まだこの世を引っ張っていて、

また、あの世にも向かっている。

その狭間はいろいろな感覚を持つものだと思う。

どの描かれ方も正解なんだと思う。

この世から持ち込んだイメージが元になっているから、

まぁ、どの感じ方も正解だ。

ここには宗教戦争はない。

ただ、あの世とこの世の狭間である場所だ。


さてと、僕はあの世とこの世の間の、

うーん。なんと言うかなぁ。

お手伝い役とでもしておこうかな。

僕は特定の宗教やイメージを持っていないから、

あの世とこの世の狭間のこの場所が、

この世からのイメージのフィルターを通していない。

その僕が見ているこの場所の風景は、

あなたにわかるように言うと、

開封したボトルのソーダ水の泡が上へと上がっていくようなんだ。

下がこの世。命が終わった魂は、肉体がなくなって魂だけの存在になって、

ソーダの泡のように上へと上がっていく。

開封したボトルのソーダの泡は、

最後にはシュワシュワといって、

ボトルの口のあたりから空気に消えちゃうよね。

魂はソーダの泡のように上へといって、

無事にあの世にたどり着くと、あの世の中に溶けてしまう。

意識がなくなるわけではないと聞くけれど、

あの世でケンカしているとは聞かないから、

まぁ、ゆるっと平穏なんだろうなと思う。


さて、僕はお手伝い役なんだけど、

ボトルのソーダ水を想像してみて、

ボトルに張り付いた泡があるのがわかるかな。

なかなか上に行かないソーダの泡。

あの世とこの世の中でも、魂がたまにそうなることがあって、

あの世に行きたくない、この世に未練があると、

魂が張り付いちゃうんだよね。

僕はそんな張り付いている魂を説得して、

傷つかないように剥がして、

また、上へと上げてあげるのがお仕事だ。

だから一応お手伝い役。

上へと上げるためのお手伝い役。

僕をはじめとしてお手伝い役は何人かいるけれど、

この世で持ったイメージなんかを引きずっていると、

僕らは天使に見えるらしい。

宗教が違ったらまた別のありがたいものに見えるのかな。

まぁ、とにかくなんだかありがたいものと呼ばれている。

ただのお手伝い役なんだけど、

この世のイメージを引きずっていると、

僕らの存在もまた、フィルター通していろんなものに見えるらしいね。


今日もソーダの泡のように魂があの世へと向かう。

上へ上へと上がっていく。

僕はソーダのボトルの中にいるような感じで、

シュワシュワと上がっていく泡のような魂を見る。

多分人だけではないんだろうなと思う。

いろんな生き物の魂が上がっていく。

魂が未練で張り付くのは、決まって人だけど、

やっぱり人は未練を持ちやすいんだろうなと思う。

なんというかなぁ。

あの世に対するイメージを持っている生き物なのかもしれないね。

死の向こうをイメージしているのかもしれない。

死の向こうがあるのならば、

そこまで至らなければ戻ることもできるのかもしれないと、

思っているのかもしれない。

だから時々魂が未練で張り付くのかもしれない。


僕はお手伝い役ではあるけれど、

張り付いた魂を説得するのも悪くないと思うよ。

未練が残るくらい、精一杯生きてきた魂だから、

よくやったねと褒めてあげたいと思うんだ。

残してきたものも大丈夫だよと。

魂が築いてきたものは決して無駄じゃないと。

生き様は残り続けると。

いろいろな言葉で説得する。

魂はしばらくすると剥がれて上へと上がっていく。

安心してくれると、僕も嬉しいね。


僕はあの世とこの世の狭間でお手伝い役をしている。

イメージのフィルターがなければ、

もしかしたら僕に会えるかもしれない。

いろんなイメージのフィルターを持ってここに来たら、

まぁ、いろんな姿になると思うよ。

それでも僕は魂を上に上げることがお仕事だよ。

どんな姿でも多分僕だから、

もしもの時は、びっくりしないで僕だと思ってほしいな。


とにかく、こんなところに来るのはずっと後になって欲しいから、

もう少し長いこと生きてから来てね。

ここに来るようなことがあったら、

あの世まで上がっていくのをお手伝いするから安心しててね。


君の魂もいずれはソーダの泡。

シュワシュワきらめく、きれいなソーダの泡だよ。

それじゃ、泡になる前に人生楽しんできてね。

精一杯生きて楽しんだ方がいいからね。

生き抜いたらここにおいで。

またね。

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