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第136話 キネマストリート

キネマストリートにおいでよ。

そこにはどんなキネマもあるよ。


君のところにキネマを映している場所はあるかな。

映画館というんだね。

シアターともいうのかな。

ふむふむ。そんなに映画を見ないんだね。

映画は高いと思っちゃうんだね。

長い時間がもったいないと思っちゃうんだね。

いろんな事情があるんだなぁ。

ならさ、キネマストリートにおいでよ。

そこでは映画じゃなくてキネマと呼ぶんだけどさ。

どんなキネマも楽しめる場所なんだ。

上映館はストリートに無数にあってさ、

君の望むキネマが必ずあるんだ。

ないキネマはないよ。

なんでもあるんだよ。


キネマストリートは、僕のような案内人が来たら、

どんなところに君がいようとも行ける場所なんだ。

案内人はいつだっていろいろな人に声をかけているんだけど、

案内人の声が聞こえる人は少ないんだ。

そのあたりはもったいないなぁと思うんだけど、

キネマを必要としていないのかもしれないね。

すっごくもったいないと思うんだけど、

必要なものってそれぞれ違うから、何とも言えないね。

でも、キネマストリートに来れるんだったら、

ぜひとも来てほしいんだ。


君のように、案内人の声が届いたら、

君の行きやすい場所にキネマストリートへの扉をつなぐよ。

扉をつなげば、開いた扉の向こうはキネマストリートだよ。

いつだって行けるし、いつだって戻れるよ。

そして、キネマストリートの時間は、

君のいる場所の時間とは全然違うんだ。

うんとね、キネマストリートで世界中の映画を全作品観たとしても、

戻ってきたら一分も経っていないんだ。

だから、時間の無駄と思ってみなかったキネマだって見れるし、

前評判だけで判断していたキネマも自分の時間でじっくり見れるし、

どれだけバカバカしいキネマを見たってかまわない。

それらすべてのキネマが、全部見放題。

お代は一切いただかないよ。

君はキネマを楽しめばいいんだよ。

誰にも何にも気をつかわずに、

ただただキネマを楽しむ場所。

それがキネマストリートさ。


キネマストリートには、映画製作会社のものや映像作品とは別に、

人生を流しているキネマがあるよ。

君の人生を思い返すキネマでもあるし、

また、君の親の人生のキネマもあるよ。

ご先祖のキネマもあるよ。

人生のキネマは、その人の主観のキネマなんだ。

ほら、人生の主人公って自分じゃないか。

あくまで、自分がどんなことを考えて、

どう行動して何を見たのか。

そんな主観の人生のキネマなんだ。

君が君の人生の主人公のように、

父親だったら、あの時何を考えていたか、

おじいさんはどんな人生を生きてきたか。

それらをじっくりとキネマで見ることができる。

キネマストリートの時間は無限だからね。

じっくりといろいろな人生を味わうことができるよ。

映画とされているものは、

どうがんばっても人生がドラマ仕立てでダイジェストだからね。

つまみ食いの節が否めないよ。

キネマストリートの人生のキネマだったら、

いろいろな人生をキネマとして観ることができる。

それぞれが主人公の人生。

このキネマで脇役だった人は主人公だとどう考えていたのか。

いろんな味わい方がいくらでもできる。


キネマストリートの案内人はね、

もっとみんなに人生を楽しんでほしいって思っているんだ。

もっと、みんなに主人公として生きて欲しいって思ってるんだ。

時間が使えないから映画は見ないとか、

ダイジェスト見たから本編観ないとか、

前評判悪かったから時間の無駄と思って観ないとか、

そんなことじゃなくて、

主人公として、もっといろんなことを自分で決めて欲しいって思うんだ。

楽しいと思ったことにはどんどん飛び込んでほしいし、

好きと思ったことに正直になって欲しい。

君がそうして主人公になったキネマは、

とっても面白い最高のキネマになると思うんだ。

たくさんの最高のキネマがあると、

キネマストリートはとっても豊かになる。


君の人生にたくさんのキネマを届けたいんだ。

おいでよ。キネマストリートに。

君が、人生の主人公。

君はいつだってキネマのスターだよ。

キネマストリートはいつでも近くにあるから、

好きな時にいつでもおいでよ。

キネマはいつでも歓迎しているよ。

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