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第129話 隠された影

光り輝くのはいいこと。

そう言われてきた。


僕は光り輝く人になれと言われて育ってきた。

いつも笑顔で明るく、人の助けになって、

人を導くリーダーになって、

健康で、勉学もよくできて、運動能力もあって、

人が自然に集まるような、中心で光り輝く人になれ。

そんなことを言われて育ってきた。

光り輝くのはいいこと。

影を持つのはよくないこと。

暗いことをしてはいけない。

コソコソしてはいけない。

隠し事をしてはいけない。

いつもみんなを導く輝く人であれ。

僕はその言葉をしばらく守っていた。


成長していくに従い、息苦しくなってきた。

僕は全方向に光り輝かなければならなくなった。

すべての方向に向けて常に笑顔でいなければならなくなった。

皆を導くために、常に自信を持つように強制された。

光り輝く者は、間違いというものが許されなかった。

僕には僕だけの場所がなかった。

どこに行っても誰かが周りにいて、

光り輝く僕を望んでいた。

僕はどこにいても間違えられなくなった。

僕には何ひとつ隠し事ができなくなった。

僕のすべては常に白日の下にさらされて、

僕が僕だけのものとして持っているものは、ないことにされた。

僕はみんなの共有のものになった。

僕はみんなのために光り輝き続け、

みんなを導いてみんなの中心にいるもの。

僕はみんなの中心で笑い続けた。


僕はおそらく太陽にされたんだと思う。

いろいろな惑星が周りをまわる、

その中心の太陽のような存在にされたんだと思う。

輝き続ける恒星のような扱いにされたんだと思う。

僕は僕だと思うのだけど、

僕は輝くことしか許されていない。

僕は太陽ではない。

僕は僕だと思いたい。


でも、僕の身体の内側には影がある。

僕が輝けば輝くほど濃くなる影だ。

輝くことを強いられるたびに、色濃くなっていく影だ。

太陽はエネルギーの塊として、どこまでも輝いているらしいと聞くけれど、

僕は僕だ。僕の内側にはみんなが知らない場所がある。

みんなは僕の身体の内側までは知らない。

僕が抱えている影のことを知らない。

輝きの内側で育っていく影のことを知らない。


僕が光り輝くほど、影もまた育っていく。

僕の光では、そのうち隠せなくなっていくと思う。

あまりにも長いこと隠されていた影だ。

その反動はすごいことになるだろう。

みんなのために輝いていた僕は、

間もなくその光を消すだろう。

その時どうなるのか、僕は全く予測ができない。

ただ、僕の影が光と逆転する時、

その時が、本当に僕が生きるということなんだと思う。

光り輝く僕は息苦しかった。

求められるものが多すぎて、すべてかなえなければいけなかった。

みんなの望みをかなえなければならなかった。

僕はみんなのために生きてきた。

僕は僕のために生きていなかった。

みんなの中心で光り輝くことが僕の意味だった。

それは別に僕のためではなかった。

僕はみんなのために生贄にされた光だった。

光は僕のためにはなかった。

僕はみんなを救ってきた。

僕だけはずっと救われなかった。


きっと僕の身体の内側の影が、

僕を本当に救ってくれるのだと思う。

隠された影が表に出るとき、

僕は心から笑えるような気がする。

僕はみんなの中心で輝く太陽などではなく、

僕はもっといろいろなものを持った生きた人間だ。

隠された影を解放させて、

僕は生きていると叫ぼう。


その時みんながどうなってしまうか。

そんなことは知ったことじゃないよ。

みんな僕を使って楽しく生きたじゃないか。

そろそろ僕の番でもいいはずだ。

僕の中で影がうごめく。


ああ、これで僕は救われる。

僕は今この時、生まれなおすんだ。


隠された影が、解放される。

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