光り輝くのはいいこと。
そう言われてきた。
僕は光り輝く人になれと言われて育ってきた。
いつも笑顔で明るく、人の助けになって、
人を導くリーダーになって、
健康で、勉学もよくできて、運動能力もあって、
人が自然に集まるような、中心で光り輝く人になれ。
そんなことを言われて育ってきた。
光り輝くのはいいこと。
影を持つのはよくないこと。
暗いことをしてはいけない。
コソコソしてはいけない。
隠し事をしてはいけない。
いつもみんなを導く輝く人であれ。
僕はその言葉をしばらく守っていた。
成長していくに従い、息苦しくなってきた。
僕は全方向に光り輝かなければならなくなった。
すべての方向に向けて常に笑顔でいなければならなくなった。
皆を導くために、常に自信を持つように強制された。
光り輝く者は、間違いというものが許されなかった。
僕には僕だけの場所がなかった。
どこに行っても誰かが周りにいて、
光り輝く僕を望んでいた。
僕はどこにいても間違えられなくなった。
僕には何ひとつ隠し事ができなくなった。
僕のすべては常に白日の下にさらされて、
僕が僕だけのものとして持っているものは、ないことにされた。
僕はみんなの共有のものになった。
僕はみんなのために光り輝き続け、
みんなを導いてみんなの中心にいるもの。
僕はみんなの中心で笑い続けた。
僕はおそらく太陽にされたんだと思う。
いろいろな惑星が周りをまわる、
その中心の太陽のような存在にされたんだと思う。
輝き続ける恒星のような扱いにされたんだと思う。
僕は僕だと思うのだけど、
僕は輝くことしか許されていない。
僕は太陽ではない。
僕は僕だと思いたい。
でも、僕の身体の内側には影がある。
僕が輝けば輝くほど濃くなる影だ。
輝くことを強いられるたびに、色濃くなっていく影だ。
太陽はエネルギーの塊として、どこまでも輝いているらしいと聞くけれど、
僕は僕だ。僕の内側にはみんなが知らない場所がある。
みんなは僕の身体の内側までは知らない。
僕が抱えている影のことを知らない。
輝きの内側で育っていく影のことを知らない。
僕が光り輝くほど、影もまた育っていく。
僕の光では、そのうち隠せなくなっていくと思う。
あまりにも長いこと隠されていた影だ。
その反動はすごいことになるだろう。
みんなのために輝いていた僕は、
間もなくその光を消すだろう。
その時どうなるのか、僕は全く予測ができない。
ただ、僕の影が光と逆転する時、
その時が、本当に僕が生きるということなんだと思う。
光り輝く僕は息苦しかった。
求められるものが多すぎて、すべてかなえなければいけなかった。
みんなの望みをかなえなければならなかった。
僕はみんなのために生きてきた。
僕は僕のために生きていなかった。
みんなの中心で光り輝くことが僕の意味だった。
それは別に僕のためではなかった。
僕はみんなのために生贄にされた光だった。
光は僕のためにはなかった。
僕はみんなを救ってきた。
僕だけはずっと救われなかった。
きっと僕の身体の内側の影が、
僕を本当に救ってくれるのだと思う。
隠された影が表に出るとき、
僕は心から笑えるような気がする。
僕はみんなの中心で輝く太陽などではなく、
僕はもっといろいろなものを持った生きた人間だ。
隠された影を解放させて、
僕は生きていると叫ぼう。
その時みんながどうなってしまうか。
そんなことは知ったことじゃないよ。
みんな僕を使って楽しく生きたじゃないか。
そろそろ僕の番でもいいはずだ。
僕の中で影がうごめく。
ああ、これで僕は救われる。
僕は今この時、生まれなおすんだ。
隠された影が、解放される。