へい、毎度、薬屋です。
あたしが商っているのは薬。
へい、薬を商ってます。
え?どんなのかって?
そりゃ、治すお薬ですよ。
いろんな病気のお薬を商ってます。
病気もいろいろでしてね、
それに合わせた薬が必要ってわけですよ。
それであたしのような薬屋が出るわけです。
健康な人にゃ売りませんさ。
あたしが相手にするのは、病んだ人。
医者にかかったほうがいいとか、
そういう人なんだけどね。
なんでだか、あたしのところには、
どうしようもない人ばかり当たるのさ。
なんでだろうねぇ。
え?どうしようもない人?
それゃあんた、どうしようもない人さ。
医者がさじを投げるか、
医者にかかっても原因がわかんないとか、
もう、医者も普通の薬局も相手にしないような人。
そんな人があたしの相手でね。
何の因果でしょうねぇ、
そういう人こそ、あたしの薬が効くんですよ。
あたしの薬は、人によっちゃあ救いなんだそうですよ。
薬を飲んで効いていく間、
それまで険しかった顔が、
喜びに変わっていき、
涙を流して穏やかな顔になっていくのを、
あたしは何度も見ました。
死ぬんじゃないですよ。
勘違いされますがね。
ん?覚せい剤でもないですよ。
そんな外道を使うものですか。
あたしの薬はどうしようもないものを治すんです。
どこに作用するかというとね…おっと、
これは企業秘密ってやつです。
とにかくどうしようもないそれを、
あたしの薬は治して、
それが救いになっている。
あたしはそんな仕事に誇りを持っているわけですよ。
宗教でも医療でも道徳でも、
あたしはなんでもないんだと思います。
あたしは薬を売る。
それこそ、どうしようもない人にね。
そして、ある種の救いを持たせる。
多分どうしようもなくなったら、
あたしはあなたのところへ行きますよ。
そしたら、薬をためらわず飲んでくださいな。
今までの人のように、
きっとあなたも救われるはずさ。