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第48話 遅刻切符

大変大変。遅刻をしちゃうよ。

遅刻をしたら切符が切られるよ。

遅刻切符なんだ。

遅刻切符は住所とかが書いてある切符なんだ。

遅刻切符は罰則なんだ。

でも、住所とかがわからない人は、

ありとあらゆる手段で住所を割り出して、

遅刻切符を作らないといけないんだ。


遅刻切符を作るために、

最寄のコーヒー屋にまで連絡がいったよ。

大事なものなんだ、遅刻切符は。

会社にだってあるし、学校にもあるよ。

時間を守るためにある罰則だよ。

時間を守らないといけない。

そういう規則のもとに作られたものだよ。


遅刻切符をたくさん切られるとね、

信頼というものが、どんどん落ちていくんだ。

信頼は遅刻切符と違って形になっているものじゃない。

でも、表にはすごくはっきりとあらわれる。

形ないのに形があるって不思議だけど、

信頼というものは、すごくはっきりとあらわれる。

それは遅刻切符のほかの罰則切符でも現れることだけど、

時間を守るための遅刻切符は、

一番信頼に響く。

だからみんな切符を切られるのを怖がる。

遅刻切符はそれだけ大事で重いものさ。


時間は無限にあるように思われているかもしれない。

でも、割り当てられている時間は有限だ。

限りある時間を無為に使うことがないよう、

教育として、また、法として、

遅刻は厳罰なんだ。

だから遅刻切符はいつだってみんな持ってる。

名前、時間、住所、生年月日。

そして、生まれてからの遅刻の回数。

信頼をどれだけ減らしてきたかの回数。

かたちなき心をどれだけ踏みにじってきたかの回数。

だから遅刻が許されることはないんだ。

どれだけ時間を守っても、

遅刻が許されることはないんだ。


大変大変。遅刻をしちゃうよ。

君も遅刻切符を持っているかい?

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