英雄と呼ばれる男がいた。
そして、女戦士がいた。
英雄と女戦士は、騎士や聖職者や魔導師、盗賊、
そんな面子で旅をしていた。
旅は苦しくもあるが楽しく、
様々の世界を彼らは見た。
山を越え、森を越え。
幾つもの町や村を越え。
気のいい仲間は旅をした。
怪物とだっていくつも戦った。
そのたび、彼らの絆は深まった。
たまには野宿だってした。
英雄はいつも女戦士を気遣った。
彼女は気が強いが、
ただ一人の女ということもあったかもしれない。
女戦士はくすぐったかった。
それでも、ぷいと英雄からそっぽを向いていた。
英雄は、いつも女戦士を守るように戦った。
女戦士は何も言わなかった。
英雄も、何も言わなかった。
女戦士は探している。
自分の故郷を滅ぼした仇を。
そして、仇を討ったのならば、
一人の女になろう、と。
英雄に今まで守ってくれて、ありがとうと、
一人の女としてみてほしいと。
女戦士はそこまで考え、
大概ロマンチストになったと自嘲した。
英雄はわかっている。
強さを求めるあまり、誰彼かまわず戦い、
やがて、村を一つ滅ぼしたことがあったことを。
きっと女戦士が気がつくことがあるだろう。
そのときは、全力で戦い、そして、討たれよう。
彼女に残るのが憎しみならそれでもいい。
ただ、最後に映るものは、
女戦士の顔であってほしい。
こんなに守りたいと思ったものは、なかったから。
ひどいロマンチストと、英雄は自嘲した。
血塗られた英雄は、死に場所を探している。
何もかもなくした女戦士は、仇を探している。
そしてお互い、ひどく、
お互いを大切にしている。
愛になるのかならないのか。
その境界で、きっと彼らは気がつくのだろう。
ぎりぎりの戦いの、
生と死の狭間の果てで。
最後の場面で彼女は涙を流し、
きっと彼は安らかに微笑むだろう。
誰も知ることのない、
ロマンチストたちの物語である。