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第37話 旅人

ひたすら歩いた先には、

何があるだろう。


山を越えて谷を越えた先に、

町を越えて港を越えた先に、

何があるだろうと思わずにはいられない。

ひとところに落ち着けないのは、

性根が旅人だからかもしれない。


ゆらゆらと歩いて、

風とともに、雨とともに歩いて、

金色のお日様を、

前に、あるいは背に歩いて、

歩き歩いた果て、

何があるだろう。


この大地を歩きつくすことなど、できるだろうか。

出来ないと言い切ることは簡単だ。

やらなければ出来ない。

こんなに広いのだから、歩きつくせない。

地図の上で語るのは簡単だ。


それでも旅人は歩く。

地図では少しにされてしまう距離を、

風とともにえんえん歩く。

果てに何もなくても。

満足することがなくても。

ひたすら歩く。


いつか、すばらしい景色があるのかもしれない。

それは人の作ったものかもしれないし、

自然が作り出したものかもしれない。

美しいものかもしれない。

全ての歩みを肯定するものかもしれない。


旅人の心は千里を駆け抜ける。

果て無き大地を、

果て無き海を駆け抜ける。


旅人は旅をする。

果てに何もなくても。

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