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第36話 花

一雨ごとに季節はかわり、

風は雲を運んでいく。

誰のためでもないのに花は咲き、

誰のためでもなく花は散る。


花が美しいのは、

多分無垢だから。

欲がなく、ただ、咲くために生きている。

だからきっと花は美しい。


それは誰のためでもなく。

それは花の意識ですらなく。

花は咲く。

当たり前のように。

花は散る。

当たり前のように。


それは、雨がなぜ降るかと同じこと。

雨は誰のために降っているわけでもない。

流れがそうであるように、雨は降る。

風が吹いて、季節がかわる。

当たり前のような、順番。


誰のためでもなく。

ただあるがため。

ちっぽけな花は、大輪の花と同じように、

無垢で無邪気で無頓着だ。

風に吹かれて、微笑むように花は咲いている。


いつも微笑んでいれば、

花の気持ちがわかるかもしれない。

いるだけでいい。花はいるだけでいい。

そこに気持ちに行きつけたら、きっと心から笑えるだろう。

そんな気がする。

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