多分、私は路地から生まれた。
路地からにじみ出る何かが、私の親といえば親。
私はそれをまとって生まれた。
暗く汚い路地で、私はひっそり産声を上げる。
暗がりは優しく私を包む。
遠い喧騒は、希望の現れ。
私はぼろをまとい生きはじめる。
路地から這うようにして生きはじめる。
私はここにいる。
生きることをつなぐ生き方。
路地から生まれた私には、
その日を生きることでいっぱいだ。
残飯をあさり、野良猫のように生きる。
希望らしい希望があるわけでない。
ネオンはけたたましいけれど、
癒してくれるわけでもない。
私は町を歩く。
路地生まれの私には、町は広すぎる。
人波は多すぎて、くらくらする。
私は路地の暗がりをまとって生きる。
多分、私は路地から生まれたのだから。
私はここにいる。
少ない時間の中で、私は私なりにわかりはじめる。
私はこの人波と違うのかもしれない。
私は何も持っていない。
ぼろをまとって、暗がりをまとっている以外、
私には何もない。
言葉もない。もしかしたら意味もないのかもしれない。
暗がりから生まれた私はなんだろう。
人波の人とは違うのだろうか。
あれとは違うのだろうか。
人はどうして生まれているのだろう。
どうしてあんなに、しっかりしていながら揺らめくのだろう。
確実なものが何もないのに歩けるのだろう。
私は戻る。
懐かしい路地に戻る。
暗がりに身をゆだねる。
ため息と、涙が生まれる。
私は路地から生まれた。
そして、帰る場所も路地なのだ。
私はひっそり路地から消えよう。
そしてまた、路地から生まれるのかもしれない。
それを命というかはわからない。
多分、私は路地から生まれた。
あなたのそばも、通り過ぎていったかもしれない。