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第31話 闇鍋

君の世界を閉ざそう。


君が泣くほど、声が聞こえるなら、

君の耳を閉ざそう。

君が泣くほど、物が見えるなら、

君の目を閉ざそう。

君が泣くほど、しゃべりたくないなら、

君の唇を閉ざそう。


僕の手で、君が閉ざされていく。

僕も閉じる。君の手で。

真っ暗の闇に溶けていく。


五感全てを二人で閉ざして、

僕らの世界は閉ざされる。

五感以上に凶悪で原始的な感覚。

二人で一つになりながら、

絶対に拒絶するもの。

優しさが暴れている。

決して溶け合えない塊。


闇に溶けよう。

そこは大きな鍋の中。

僕らはそこに溶けていく。

君はまだ泣いている。

泣いている君を感じるのに、

僕は君をこれ以上閉ざせない。


君の世界を閉ざそう。

この中なら、誰も君を泣かせないから。

安心してとろけておしまい。


君の世界を閉ざそう。

僕の世界も閉ざそう。


二つの塊が、それ以上の塊が、

鍋に放り込まれて、とける。

真っ暗の鍋、それは闇鍋。

得体の知れない感情の塊。


おあついうちに召し上がれ。

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