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第17話 あるパン

パンがある。

いたって普通のパンと思ってほしい。

手のひらで覆えるくらいのパン。

焼いてから間がたっているのか、

少ししっとりしている。

まん丸のパン。

中に何かが入っている類のパン。

こんがりと普通に焼き色がついている。

パン特有の焼いた匂いがする。

アンパンかもしれない。

ツナパンかもしれない。

カレーパンかもしれない。

食パンではないらしいが、バターロールみたいに、中まででパンかもしれない。


あるいは、食べてはいけないものが入っているかもしれない。

やばい薬だとか、

螺子とか歯車とか、

何かのかけらだとか。

そもそも、売っているパンだと定義していない。

どんなパンかもわからない。

丸いパン。


あるいは、

何かが中に入っているとして、

生き物が入っているかもしれない。

パンを割ってみたら、ひよこが出てくるかもしれない。

ぴよぴよと。

パンを割ってみたら、金魚が出てくるかもしれない。

ぴちぴちの金魚が。


あるいは。

パンの中に世界があるかもしれない。

パン世界の中でパン皇帝の悪政に耐えかねた、パン国民が、

パン乱をおこし、その日をパン記念日パン元年パン月パン日としているかもしれない。

耳をすましてみよう。

パン国民の歓声が聞こえないだろうか。


まぁ、パンはパンなので、

危険でなければ、おいしくいただくのが、

パンのあり方かもしれない。


ごちそうさま。

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