狩ること。
それが、意味。
シノは持ち前の機動力で、狩るものを追いかけていた。
狩られるものは、必死になって逃げている。
シノが怖いのか…
狩られることが怖いのか…
あるいはその両方か。
父のガロウが持ち込んできた、いつもの仕事。
シノはアサキ、コトマルとともに、
違法にやってきた異形を狩る。
お上から言われたものだけを狩る。
そうして、賞金をもらう。
そういう仕事をしている。
夜。
満月があたりを照らしている。
通りには誰もいない。
異形は、獣のように走っている。
そういう異形なのだろう。
シノは、走りながら言葉を唱えた。
最後に、構えを取ると、
シノの手に、大きな鎌が現れた。
死神のそれと酷似しているのは、偶然だろうか。
シノは異形を追い…
追いついた。
大鎌が異形の首にかけられる。
異形は…
泣いていた。
ぽろぽろ涙をこぼし、震えていた。
(助けてくれ)
シノの頭の中に、声が響く。
(何もしない、だから、助けてくれ)
シノは…黙って大鎌を振った。
異形の首が飛び、
返り血がシノにかかった。
(ありが…)
異形の首が何かを伝えようとしたらしい。
しかし、異形は数秒もしないうちに、
灰のようなものに変わり、消えた。
返り血は消えない。
空からアサキがやってくる。
カラスの羽で飛んできたらしい。
「…不器用ですね」
アサキは、灰を認めてそういった。
「生け捕りにすれば、賞金が高くなると知っていて、ですか?」
「…」
「強制的に返された異形がどうなるか、知っていて、ですか?」
「どっちもだよ」
シノは言葉を唱え、大鎌を消した。
「ガロウさんと似ていますね」
アサキがつぶやいた。
「殺すことが、不器用な優しさになってしまうあたり」
シノは黙っていた。
満月は輝き、
その下で、
異形が一体殺された。