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第2話 全てを知る者

彼女は全てを知る者になった。


彼女は学生だ。

無機質な学校に通っている。

彼女は突然、全てを知る者になった。

全てを知る者だからわかった。

どうすればこの学級にいるものに全てを知らせることができるか。


彼女は、学級にいるもの全てを、

学業を修めるにあたっての、全ての知識を一瞬にして叩き込んだ。

その学校で教えること、それ以上の知識、

学業として学ぶことは全て叩き込んだ。

しかし、道徳概念は入れなかった。

その学級は天才でありながら、

教師を嘲笑する学級になった。

教師は学業を教えられなくなり、

教室から出て行った。


彼女は学級の者を見下していた。

彼らはおそらく学業では天才だ。

しかし、彼らは決定的に欠けている。


やがて、全てを知る者になった彼女を追跡する集団が学校にやってきた。

それは黒い服の男たちだ。

彼女は屋上へ逃げた。

屋上への扉には鍵がかかっている。

黒い服の男たちは、彼女を探している。

彼女は屋上の一つ下の階から、吹き抜けになっているそこに身を投じた。

全てを知っているから、どうすれば無傷で助かるかもわかったいた。

吹き抜けの近く、昇降口に身を潜める。

黒い服の男たちは無機質な学校の中を走り回っている。


彼女はふと、昇降口の外に目をやる。

そこには男が待っていた。

手招きをしている。

彼女は黒い服の男たちに見つからないよう、昇降口を出た。

手招きをしていた男は、

無機質ではない、さえない男だ。

男が先に立ち、雑然とした有機質な路地を彼女は歩いた。


「ここだ」


男は路地の行き止まりに来た。

そして、行き止まりのドアを開ける。

「今日からここで一緒に暮らそう」

そこは小さな部屋だった。

二人で暮らすのに、ようやく空間がある部屋だった。

そこには、生活感があった。


(ここが私の最後の場所だろう)


全てを知っているはずの彼女は、もう、予測しかできなかった。

予測も当たっているかわからない。

彼女は小さな部屋に入ると、

男とともに、暮らすことを決めた。


彼女には、それで十分だった。

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