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第十三話

「助けていただきありがとうございます」

蒼月がしばらく本堂で寝転んでいたら、若い女性が声をかけてきた。

視線を声のする方へ向ける。

見たことない振袖、袴、ブーツ姿の女性だ。


「どちら様?」

蒼月が寝転びながら返事をすると、女性は話を続ける。


「友人と遊んでいたらはぐれてしまって、それから妖にここまで連れてこられたんです。不安で不安で」

女性は涙を拭う仕草をする。


あぁ、そういえばそんなクエスト受けてたなぁと蒼月は思い出す。


「無事でよかった。一人で帰れる?」


「帰り道危ないので、送っていただけると助かります」


「あはは、了解」

蒼月は起き上がり、女性NPCと一緒にオウサカへ戻る。

オウサカにつくと門の付近に友人を探していた女性NPCが待機していた。


「サエコ!」

女性NPCが蒼月と友人の姿に気付き駆け寄ってくる。


「本当にありがとうございました!ささやかですがこちらを」

女性NPCが巾着袋を蒼月の方へ差し出す。


「それでは失礼します」

女性NPCは二人とも頭を下げて何処かへ行った。

その後クエスト達成のポップアップが表示される。


「なるほどねクエストをクリアするとこういう感じなのか」

蒼月は先程貰った巾着袋を開けると30万円程入っていた。


「マジかよ。ボス撃破が必須とは言え、初期の方のクエストでこんなにもらって大丈夫か」

このクエストはクリア人数によって料金が分散される仕組みで、蒼月は一人でボスを撃破した。

なので分散前の金額を総取りとなりこの金額になったのだ。


「そういえば、装飾品が開放されたって言ってたな。お金も貰ったし見にいくか!」


蒼月が装備屋に入ると聞き慣れた声が装備屋の中から聞こえる


「これいいですわねー。あら!これも綺麗ですわ!」

店内をうろうろと歩き回り装飾品を物色するモンブランを発見する。


「よう、お嬢!」

蒼月が声をかけるとモンブランは蒼月の方へ視線を向ける。


「あらっ!蒼月様良いところに!」

モンブランは蒼月の手を引き、装飾品の棚へ向かう。


「どれがワタクシに似合いますか?」


この質問は何と答えてもダメなやつだ。

モンブランの中で答えはすでに決まっていて、ただ後押しが欲しいだけの質問だ。

蒼月は直感で感じ取る。


「お嬢、こんなとこにあるやつで満足なのか?」

だから蒼月は敢えて第三の答えを出す。


「えっ?どういうことですの?」


「こんな凡骨な装飾品はお嬢には似合わねぇ。だから俺がお嬢にもっと似合うものをくれてやるて言ってんだよ」


「・・・。」

モンブランは少し考えてから頬を赤らめる。


「そ、そんなこと言って!ワ、ワタクシをどうするつもりですの!?」


「どうもこうもねえよ。ほらよ」

蒼月はさっき鬼から獲得した歯をモンブランに向かって放り投げる。


モンブランは蒼月が放り投げたものを受け取るために両手でお椀の形を作りキャッチしマジマジと観察する。


「っ!?きゃあああああああああ!」

投げられた物が歯だと気付き、モンブランは慌てふためく。


「ははは!」

蒼月はモンブランの慌てふためきようを見て笑う。


「なんてものを放り投げてるんですか!初めて乳歯が抜けて喜ぶ子供じゃないんですから!」


「すまん!すまん!でも、それ効果見てみろよ」


モンブランは嫌そうな顔をしながら蒼月に言われた通り、歯をタッチして効果を見る。

「確かにここに売ってるものより効果自体はいいですが見た目が・・・」


「ならよ!こういうの加工してくれるプレイヤーとか探そうぜ。んでそれをもっと綺麗に加工してもらったらいいじゃん」


「まぁ!そんな方いらっしゃるのですか?」

モンブランは蒼月の言葉に目を輝かせる。


「んー、多分な。ほら雑貨屋とかで生産職向けのアイテム売ってるだろ?だからそういうのが好きなやつもいると思うんだよな」


「わかりました。綺麗に加工できるのであれば今回のことは水に流しますわ」


「よっしゃ!じゃあ探しに行こうぜ!」

蒼月は体を翻し、生産をメインでやってるプレイヤーを探しに向かう。


「ちょぉぉぉぉぉぉぉとお待ちになって!ワタクシが持ってる歯を回収してくださいましぃぃぃぃ!」

モンブランは受け取った歯をどうしたらいいのか分からず、お椀の形にした手を崩せない。

だが蒼月が歩を進めるので叫びながら蒼月の後を追従する。

その後すぐにアイテム欄に収納したらいいじゃんと蒼月に言われて渋々収納する。


「思い切って出てきたのはいいが、正直行く当ても何もない」

果たしてこのゲームで生産職みたいなことをしている人物がいるのかどうかすら不明だ。

そういう人物に心あたりがないかモンブランに尋ねる。


「ワタクシ蒼月様と別れてからずっと街にいたので存じ上げませんわ」


「えっ?ずっと?レベルとか上げてないかんじ?」


「はい!全く!1レベですのよ。No.1でオンリーワンですわ!」

誇らしそうに胸を張る。


「マジか、なら一緒にレベル上げ行く?暇だし手伝うぜ」


「まぁ!それはなんて素晴らしいのかしら!是非ともお願いしますわ!」


「オッケーならグル組むか」

蒼月はUIを操作してお嬢をパーティに誘う。


モンブランがポップアップのYesを選択するとモンブランのHPバーが頭上に表示される。


「よっしゃ行くぜ!」

モンブランを引き連れて泥田坊の狩場まで赴く。


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