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おまけ:孫静風著、閨事の秘術

『おまけ:孫静風そんせいふう著、閨事の秘術』 




 第一章:夫婦の道、心の交わりから始めよ




 主上。おそれながら、夫婦の間において、互いの心を知ることこそ最も肝要でございます。


 愛情を深める術とは、言葉ではなく、気持ちを察する技術でございます。


 これは、剣術の「気を読む」に例えれば分かりやすいのでございます。敵の動きすら読めるならば、愛する者の心を察することなどたやすいはず――臣下は、そう考えております。


 以下は、心得でございます。声に出して唱えてくださいませ。




 心得その一、まずは相手の心の声を聞け。何を欲し、何を嫌うかを知るのだ。


 心得その二、焦るな。剣も交わりも、早急に決着をつけるものではない。


 心得その三、相手を尊重せよ。尊重なき交わりは、ただの戦いに過ぎぬ。




「心得その一、まずは相手の心の声を聞け。何を欲し、何を嫌うかを知るのだ。心得その二、焦るな。剣も交わりも、早急に決着をつけるものではない。心得その三、相手を尊重せよ。尊重なき交わりは、ただの戦いに過ぎぬ」




 第二章:接触の技術




 主上は天に才能を賜りし大陸随一の剣士でいらっしゃる(褒めて伸ばす作戦でございます)。剣士であらせられるからには、手の使い方を熟知しているはずでございます。しかし、戦場の剣術と閨房での接触は異なります。柔らかく、包み込むように触れることが肝要でございます。我が娘の肌は剣ではございません。くれぐれも乱暴に扱ってはならぬのでございます。くれぐれも。以下は、心得でございます。心を籠めて唱えてくださいませ。




 心得その一、相手の体の反応を見極めよ。剣術で敵の弱点を察するように、愛する者の敏感な箇所を見つけるのだ。


 心得その二、触れたときに相手がどう反応するかを感じ取れ。無理をさせるな。


 心得その三、繊細さと力強さの均衡を意識せよ。剣も交わりも、この均衡こそが極意である。




「心得その一、相手の体の反応を見極めよ。剣術で敵の弱点を察するように、愛する者の敏感な箇所を見つけるのだ。心得その二、触れたときに相手がどう反応するかを感じ取れ。無理をさせるな。心得その三、繊細さと力強さの均衡を意識せよ。剣も交わりも、この均衡こそが極意である」




 第三章:言葉の秘技




 主上。戦場では声を出すことで士気を高めることもございますね。閨房でも、言葉は重要な役割を果たすものでございます。主上におかれましては、この部分を特に意識していただきたく存じます。言葉責めの境地にはまだ早いかと存じますので、まずはよしよし作戦でまいりましょう。


 覚えていただきましょう。好意は、伝えなければ伝わらぬのでございます。例え好意がなくとも、人間関係を良好にするためには言葉を尽くさねばならぬのでございます。


 胡坐をかいていては、女の心は射止めぬのです。もちろん、主上は美男子であらせられる上、いと高貴な身の上でいらっしゃるので、胡坐をかいていても女の心が勝手に落ちていく困った現実もあるかと存じますが、我が娘の心は容易く落ちませぬ。容易いと思ってくれるな。そう簡単に落とさせませぬ。


 それでは心得でございます。




 心得その一、褒めよ。愛する者の美しさや魅力を惜しみなく伝えるのだ。


 心得その二、恥じるな。素直な気持ちを言葉にする勇気を持て。


 心得その三、無理に言葉を重ねるな。沈黙もまた一つの美徳である。




「心得その一、褒めよ。愛する者の美しさや魅力を惜しみなく伝えるのだ。心得その二、恥じるな。素直な気持ちを言葉にする勇気を持て。心得その三、無理に言葉を重ねるな。沈黙もまた一つの美徳である」 




 第四章:呼吸とリズムの調和




 剣士は呼吸によって動きを整え、力を最大限に引き出す。閨事でも同様に、呼吸とリズムの調和が重要である。




 心得その一、相手の呼吸に合わせよ。共鳴することで深い繋がりを得られる。


 心得その二、乱れた呼吸を落ち着けよ。焦りは技を鈍らせる。


 心得その三、自然なリズムを保て。無理な動きは双方に負担をかけるだけである。




「心得その一、相手の呼吸に合わせよ。共鳴することで深い繋がりを得られる。心得その二、乱れた呼吸を落ち着けよ。焦りは技を鈍らせる。心得その三、自然なリズムを保て。無理な動きは双方に負担をかけるだけである」




 第五章:精神の統一




 主上。剣士は精神を統一することで一刀必殺の技を繰り出すもの。同様に、閨事においても心を一点に集中させることで、より深い体験を得ることができるのでございます。


 ですから、ああ、もう、面倒になってまいりましたので、心得に進みましょう。




 心得その一、過去の失敗を引きずるな。常に新たな気持ちで臨め。


 心得その二、相手に集中せよ。自分本位の行為は避けるべきだ。


 心得その三、心と体を一つにせよ。これこそが真の交わりである。




「心得その一、過去の失敗を引きずるな。常に新たな気持ちで臨め。心得その二、相手に集中せよ。自分本位の行為は避けるべきだ。心得その三、心と体を一つにせよ。これこそが真の交わりである」




 終章:愛とは剣の道に通ず




 主上。剣士が真の道を求めるように、愛する者との関係もまた終わりなき修行でございます。互いに高め合い、支え合うことで、道は開けるのでございますな。




 ここから本編:実はここから本編でございます、主上。これより先は実践編。手書きの図解付きで行為の進め方を猿にでもわかるよう、心を籠めて書き申した。春画がございますゆえ、くれぐれもおひとりの時にご覧ください。




 以下、猿のような男女が絡み合う様子を表現したいのだろうな、と思われる画とその解説が続く……。




孫静風そんせいふうは……絵があまり……ふむ。まあ、いい。俺は学徒だ。粛々と学ぼう……」




 皇帝の夜は、静かに更けて行く……。

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