「誠に勝手ながら、皆様を拉致させていただきました」
男の声が響いて来るのと同時に、オレは目覚めた。
朦朧とする意識の中、周囲を見回すと、そこは白い壁に包まれた何もない部屋。部屋の奥には壁一面を覆う程のモニターが取り付けられていて、その画面にはピエロの仮面を被った謎の人物の姿が映し出されていた。
先程の声は、このモニターに写っている人物のものだろうか?
そんなことを考えながら周囲を見回すと、そこには同じ高校のクラスメイトたちの姿があることに気付いた。
何故かは分からないが、この部屋にはオレを含めたクラス全員が居た。担任の教師の姿もある。
確かオレたちは、修学旅行に行っていたはずだ。
そこで、オレはハッとなる。突然、謎の集団によって修学旅行に向かうオレたちのバスが乗っ取られたことを思い出したのだ。その後、ガスを浴びせられ、意識を失ったことも思い出す。
もしかして、オレたちは……。
最悪の状況を想像し、オレは恐怖に身体を震わせた。予想が正しければ、この後、オレたちはデスゲームに参加させられることになるだろう。
モニターに写っているピエロの仮面を被った人物は話を続けた。
「これから、皆様にはゲームに参加していただきます。なお、拒否権はございませんので、予めご了承ください」
オレはたちまち戦慄した。
ピエロは話を続ける。
「皆様には、これから、ちょっと、愛し合ってもらいます」ピエロは淡々と呟いた。
オレは首を傾げた。
「何ですと? 殺し合いではなく、愛し合う……とは?」目を点にする。
「我々は恋のデスゲーム運営委員会と申します。これから、皆様には恋をしていただき、互いに愛を育み、カップルを作っていただきます」
その瞬間、オレを含めたクラスメイトたちは全員、この世の終わりを見たような絶望の色を顔に浮かべた。
「ちょっと待て! 何故、それを、男子高校の生徒であるオレたちにさせるのか、意味が分からんのですけれども!?」思わずオレは叫んでいた。
そうなのだ。オレたちは男子高校の生徒だ。当然、この場には紅一点など存在しない。むさくるしい坊主頭の男子生徒しか存在していないのだ。この状況で、どうやって愛し合えというのだ?
「それが仕様だからです」ピエロは静かに答えた。
「仕様???」
「何故なら、我々は恋のデスゲーム運営委員会のBL担当だからです」
その瞬間、オレは絶句した。
「それでは始めましょうか、恋のデスゲームを。ちなみに、カップル不成立の者はすべからく処刑致しますので、頑張ってカップル成立を目指してくださいね。カップル成立の条件としては、キスのもっと先にある最果ての駅に到着した場合に限りますので」
果たして、この後、オレたちの運命はどうなるのであろうか。
そして、何故、何人かのクラスメイトたちは、オレを見て頬を赤らめているのだろうか。
これより、オレたちは、絶望的な恋のデスゲームに参加することを余儀なくされるのであった。