『恋愛強者』 その称号は。
【『恋愛なし』 コースや 『悪役令嬢・婚約破棄』 コースであるにも関わらず、ライバルに好意値を抜かれない限りは 『成就エンド』 確定となった強者に贈られます。
特典としては、好意値の上昇率が +25% upしますww】
ふむふむ。俺の好意値の上昇率は、たしか、オーソドックスなヒロインコースの50%だったから…… 称号獲得によって75%になるわけか。
「って、嬉しくねぇぇぇ!」
寮の部屋で、ショックのあまりゴロゴロと転げ回る、俺。
―― エルリック王子の 「送っていくよ」 攻勢を必死でかわし、逃げ戻ってきたところだ。
「『恋愛なし』 の意味! 『成就エンド』 確定ってナニ!」
【つまり、この後あなたがどういう行動に出ても、王子の
「早すぎるだろー!」
エルリック王子と出会ってから、まだ5日だぞ?
【大丈夫ですw 古典の名作には5日間で心中エンドを迎えものも、ありますからww】
「…… そいつら、アタマ大丈夫?」
【wwww まぁ、『恋愛なし』 コースで5日は、確かに記録です。クリア後は殿堂入り確定でしょうねww】
「要らねぇ……っ!」
【まーまーw 『アタシはそんなつもりないのに、スペック高いイケメンに追いかけられて困っちゃう』 女子感を楽しんで下さいよww】
ううむ。
気持ちは分からんこともない。
俺だって、 『そんなつもりないのに、スペック高い美少女たちに奪い合われて困る』 みたいなシチュエーションが、うらやましいほうだからな。
だが、しかし。
【大丈夫ですよw エルリック王子の
「怖いこと言うなよ……」
ついつい、エルリック王子の唇の感触を思い出してしまい、頬と額をゴシゴシとこする。
――― 『成就エンド』 確定だなんて、冗談じゃない!
ヒロインのサクラにはもちろん、悪役令嬢として真面目にサクラをいじめてきたエリザにも、申し訳なさすぎる。
…… よし。
俺は絶対に、エルリック王子から嫌われてやるんだ!
―― でも、どうやったらいいのかな……?
「とりあえず、何かとディスる作戦は中止だな。効果がないんじゃ、意味ないし」
【やっと気づきましたかww】
「もっと早めに言ってくれよ、チロル……」
【攻略に関することは、言えないんですってばww】
「それは知ってるけどさ…… うーん。どうやったら、エルリックの好意値をガン下げられるんだろうなあ……」
考え込む俺に、チロルがしっぽを振りながら飛びついてきた。
【とりあえず、ステータスを確認してみませんかww】
「おっ、そうだな…… ステータス、オープン!」
俺は空中で手を動かし、ステータス画面を表示させた。
≡≡≡≡ステータス ①≡≡≡≡
☆プレイヤー名☆ ヴェリノ・ブラック
☆職業☆ 学生
☆HP / MP☆ 30 / 10
☆所持金☆ 2,320 マル
☆装備☆ 制服 /学生バッグ / 普通の靴 /ー /ー /ー
☆ジョブスキル☆
・勉強 lv.1
☆一般スキル☆
・掃除 lv.2
・料理 lv.1
・飼育 lv.2 ペット数:1
・買い物 lv.4
・おしゃれ lv.1
・外出 lv.4 商店街、小運河 (舟)
・魔法 lv.1 プチファイア
≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡
おおっ、買い物と外出レベルが伸びてるな。
この5日間で、サクラと天文台にも行ったし、学園祭の準備であちこちに出掛けたり買い物したり、したからなー。
飼育レベルも伸びてほしかったけど…… 1回、チロルをブラッシングした程度じゃ、無理でもしかたないよな!
ま、地道に行くか。
さて、次は持ち物と称号だ。
≡≡≡≡ステータス ②≡≡≡≡
☆持ち物☆
制服★ 学生バッグ★ 普通の靴★
潮干狩り基本セット レターセット(白無地)
Pブラシ Pトリミングセット(バリカン付) Pフリスビー
P骨カルガム
B『犬種別☆おしゃれカット集』
☆称号☆
◆潮干狩り初心者 ◆なりそこないライフセーバー ◆企画初心者 ◆生き物ふれあい初心者 ◆幸運の使者見習い・初級 ◆恋愛強者
≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡
レターセットが持ち物に入ったほか、称号も増えた。けど……
「はぁぁぁ…… 『恋愛強者』 は、やっぱり、嬉しくないなあ……」
ついつい、ためいき出ちゃうよ!
「ねぇねぇ、チロル。称号って、売れないの?」
【無理ですww】
「えーっ。売ったら絶対、高いのに!」
【ww いちおう、運営にはプレイヤーの意見としてあげておきますww】
「おっ、さすがチロル! よろしくぅ!
さて、と次は……」
次はいよいよ、問題の交遊関係だ。
エルリック王子の好意値、いったい、どうなってるんだろうな……
≡≡≡≡ステータス ③≡≡≡≡
☆プレイモード☆
恋愛なし(好意値半減)/友情
称号効果 +25%
☆交遊 (PL)☆
◆エリザ・テイラー : 公爵家令嬢・学生・ルームメイト
◆サクラ・C・R : 子爵家令嬢・学生
◆リーナ2525 : ショップ 『リーナの万屋』 店長
☆交遊 (NPC)☆
◆エルリック・クレイモア : 王子
(好意値)560 (友情値)390
◆ジョナス・ストリンガー : 侯爵家次男
(好意値)0 (友情値)0
◆ミシェル・ブロックウッド : 伯爵家長男
(好意値)40 (友情値)40
◆イヅナ・T・J・クルス : 海運王家・男爵家長男
(好意値)35 (友情値)45
≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡
「うっそぉ……」
俺は、びっくりして、何度も数字を見直した。
どれだけ見ても、変わらないな……
「エルリック王子の好意値、500超えてる! 友情値も390…… なんでこんな!?」
チロルがパタパタしっぽを振りつつ、無邪気な黒い瞳で見上げてくる。
【この1週間、王子を狙い撃ちした甲斐がありましたねww】
「バグじゃない!? 上昇値の内訳、どーなってんの!?」
【言えませんwww】
「ひどっ……」
チョロリとラブリーに舌を出す、チロル。
くっそう……!
チロルのやつ…… ヒドいくせに、なんで、こんなに可愛いんだ……!
「このこのこの! こんな可愛い子は、こーして、こーしてこーしてやる!」
俺はチロルの毛の中に手を差し込み、地肌をモミモミしてあげた。温かくて、気持ちいいな……
エルリック王子のせいで荒れた心から、ささくれがボロボロ落ちていくようだ。
「クン、クン、クゥン……」
チロルは、嬉しそうにお腹を見せ、しっぽをめちゃくちゃに振ってる……
普段は生意気だけど、こういうところは合わせてくれるんだな……
くぅぅぅ……っ!
さすが、俺のガイド犬 兼 1st. ペット!
「ほれー♡ モミモミモミモミー♡」
「クゥン、クゥン、クゥン、クゥン……♡」
んんんんっ! たまらんっ!
チロルだけは、わかってくれてるんだなぁ…… きっと、そうに違いない!
―― それから俺は、現実逃避を兼ねて、ひたすらチロルをもふりまくったのだった。