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第23話 ペットショップへ行こう(4)

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 ☆お買い上げ品 / 金額☆

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 ・ブラシ 『夢見わんにゃん』  

 1,000 マル


 ・トリミングセット(バリカン付)

 2,500 マル


 ・本 『犬種別☆おしゃれカット集』

 800 マル


 ・犬用おやつ 『骨calガム・3種の味ミックス』

 900 マル


 ―――――――――――――――――――――――

 合計 5,200 マル


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 空中に浮かぶウィンドウに表示された金額を、レジのゴリラ店員に支払う。


 本当は一緒に遊べるオモチャや、夏向けの冷感シートなんかも買ってやりたかったけど…… とても、お金が足りなかった。


 うう……財布の残り金額、450マルか。


 お小遣いの5,000マルが貰えるのは土曜日だから、月曜日にしてこれだと……今週は、めちゃくちゃキツいなー。

 どこかで、何かで稼ぐとか、うーん…… 王子にたかったら、またランチおごってくれないかな?


 飯代さえなんとかなれば、一週間しのげるもんな…… けど、NPCと一緒に飯食うと、好意値も上がっちゃうんだよな……

 ということは。

 ここは、ランチをねだりつつ、好意値を下げる道しかない!

 YES 昼飯、NO 壁ドン! (標語)


 みんなで店を出たあと、俺はガイド犬に尋ねた。


「なぁ、チロル~! 王子に嫌われる発言とか、あんの?」


【王子の目の前でヒロインサクラさんに嫌味連発するとか、ヒロインを階段から突き落とすとか、すれば】


 ……それ、確実に、昼飯に誘われなくなるパターン。


「ほかの方法ないの? たとえばさ、面と向かって 『王子ってバカですね』 とか」


【wwww ま、やってみては? wwww】


「おし、じゃあそれで行くか!」


【wwwwwwww】


 チロル、草生やし具合ひどくない?

 なんか、それほど効果あるとは思えなくなって…… いやいや。何もしないより、きっと、絶対、マシだよね!



「どうしたんですか?」 


 サクラが心配そうな顔を、俺とチロルに向けた。


「お金…… 足りなければ、お貸ししましょうか?」


「サクラ…… ありがと! でも、お金はいいよ。なんとかなるし」


「そうですか? 困ったら、言ってくださいね」


「ありがと! サクラ、優しいなー!」


 エリザも優しいけど、サクラも優しい!

 こんな親切な子たちと、ゲーム序盤からお近づきになれるなんて…… 俺、なんてツイてるんだ。


「ふっ……貸すとか借りるとか、貧乏人はしみったれているわね?」 


 エリザがイヤみったらしく、勝ち誇った笑みを浮かべる…… いやあ。悪役令嬢が板についてますな。

 と、思ったら。


「あたくしなんて、もう持っていたのに、間違えて同じものを買ってしまって……しかも2つも。ま、余裕なんですけどね?」


 エリザは、フリスビー (1,300マル) を両手に持って俺たちに見せびらかした。

 くっ…… さすが、悪役令嬢……!

 俺が、チロルに買ってやりたくて、迷いまくってたモノを、容赦なく……!

 ハイヒールのカカトでグリグリ踏まれてるような気分になっちゃったよ、俺はいま。踏まれすぎて逆に気持ちいいくらいだけど、でも……!


「おーっほっほっほっ! ザマァご覧なさい!」


「ひっ、ひどい、エリザ…… なあ、サクラもそう思うだろ?」


「はっ、は…… ふふ、ふぁい…… ちが、はい……」


 サクラも、うつむいて肩を震わせている。俺と同じ気分なんだな、きっと!

 エリザは胸をばいーんと張り、フリスビーを揺らしつつ、ためいきをつく。


「はあ…… このあたくしが間違えて、このようなモノを買ってしまうなんて…… それもこれも、初心者だの思い上がったヒロインだのの相手をして、心労が過ぎたせいよね!?」


 それは、悪役令嬢が過ぎないか……?

 自慢どころか、あからさまに俺たちをディスってくるなんて……!


 エリザ、どうしたんだろう…… もしや。

 お出かけ前に俺がうっかり、その立派なお胸にラッキース○ベ…… いやいや、偶然にも仕方なく、うっかりとぷみゅぱってしまった件を (あっ、脳内でかんだ)、根に持って……? あ。


 こ れ だ わ 


 うん、普通に考えて、きっと嫌だと思うに違いないもんな。

 たとえば、俺の架空の胸にエリザが思い切り…… ぶつかられてみたい…… げほげほげほっ(咳払い)

 じゃなくて。

 エリザは、嫌だと思ったんだよ。うん。

 ならば、俺は、誠意を、みせる!


「エリザ、さっきは、本当に済まなかった!」


「……な? なんですの……っ! いきなり!」


「うっかり胸に激突したら、そりゃ嫌だよなぁ! 今度からは気をつけるし、埋もれたいとか揉みたいとか、思わないようにするから!」


「………………っ!」


「お詫びの印に、本気でなんでもする!」


「………………っ!」


 エリザの頬に血が上り、うつむくサクラの肩の震えが大きくなっている。

 サクラ…… 俺のとばっちりで、ついでにディスられてしまって、申し訳なかったな……。


 とにかく。

 俺は、皆とできるだけ仲良くする、って決めたんだ。そのためなら、頭だっていくらでも下げる! それが漢だ! たぶん。


「あああ、謝ればそれですむと……っ、じゃなくて、違うのよ!」


「ああ、そっか。俺の最敬礼、エリザはあんまり好きじゃなかったよな…… じゃ、どうしたらいい?」


「だから、そういう話じゃなくってよ! サクラ!」


「サクラにまで、八つ当たりするなよ、エリザ…… 悪いのは俺なんだからさ…… あっそうだ! いいこと思いついた!」


 俺は地面に片膝をついて、エリザに手を差し伸べてみた。


「こんなの、どう? とあるアニメの名(?)シーン」


「もっもう、なんなのよ! 意味わかんなくてよ!」


「うん、俺もわからん! でも妹が、憧れてた! だから恥ずかしいけど、がんばる!」


「勝手に頑張らないでちょうだい!」


「ここまできたんだから、とめるなよな。いまやめたら、かえって恥ずかしい!」


 黙って俺とエリザのやりとりを聞いていたサクラの震えが大きくなり、ひぃぃっ、と口から小さな悲鳴がもれた。

 ディスられすぎて泣いてるのかな、サクラ…… 待ってろよ。

 俺が、決着をつけるから……!


 俺はキメ顔をつくり、エリザに向かって叫んだ。


「さぁ! 俺の女神よ! なんなりとご命令を……!」


 ―― うん。恥ずかしいな、これ。

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