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第22話 ペットショップに行こう(3)

「あー…… けっこう買わされた……  3回+2回+スチルとか、やりおるな……」


 『生き物ふれあいコーナー』 を出たときには、俺のサイフはかなり軽くなっていた。


 ―― 結局、リクガメのエサは3回も買わされたし。

(「もっと?」 って感じで見つめてくる無邪気な瞳に勝てるやつ、いる? いないよな?)


 そのあと、タカのエサを2回分。

(だって、手から食べてくれるんだもん!)

 それで、腕に止まらせて背中をなでさせてもらうときに  【200マル払えばスチルが残せますよ】 って、チロルが言うからさぁ!

 スチル代まで払っちゃうのは、もう 『お約束』 っていうかね! しかたないよね! 悔しいけど!

 スチルはゲームを周回しても、スチルボックスに残っていく仕様だし、200マルは損では、ない……! あとでスチルボックスを見るのも楽しみだし!


 所持金だって、まだ、ちゃんと残ってるしね…… チロルのペット用品代くらいは、ぎりぎり。

 ―― つまり、俺は。

 これ以上の誘惑に屈する前に、早いとこペット用品コーナーに行ってしまわなければならないのだ……!


「ふぅ……かわいかっ…… なんてことはなくて、つきあってあげただけですからね!」


「2匹目のペットを飼うのって少し躊躇ちゅうちょしちゃいますけど、こうして時々ふれあえるのは有難いですよね」


「俺、すでにやめられなくなりそう」


 俺は、エリザ、サクラと、3人で連れだって店の端に移動した。

 壁一面に、いろんなペット用品が置かれた棚。

 すごいなー! こんなにたくさん、あるなんて。

 まず物量に感激しちゃうよ!

 よし、買おう!


「絶対欲しいのはブラシだな!」


「それにこれから夏ですから、トリミング用品も要りますよ」


「トリミング?」


「夏は毛を短く切ってあげるんです。カットの仕方が載った本も買っておくといいですよ」


「へえ…… 面白そう!」


「はい。好みのカットをしてあげられると、楽しいですよ」


「きゅぅぅん……」


 サクラはトイプードルりゅうのすけのふわふわの長毛をなでた。夏にはこれが短く…… きっと、ぬいぐるみみたいになるんだろうな。見てみたい! 


「じゃあ買うのは、ブラシと、トリミング用のセット、『犬種別☆おしゃれカット集』っと……」


「こっちのカット集、シェルティのかわいいカットがのってますよ」


「おっ、ほんとだ! じゃあ、これにしようかな」


「こっちも」


「うーん。予算的に1冊しか……」


 悩むけど、買い物、楽しいなー!

 顔を寄せあって相談する俺とサクラに、エリザが安定の見下し目線を送ってくる。


「あたくしのガイド犬アルフレッドは、美容室に行っていますけどね! あなたがた庶民では、ムリなのかしら?」


 エリザ、今日も悪役令嬢がんばってるなあ……! マウントが、超キマってる。


「美容室はここの2階よ。あなたがたも1度くらい、プロにお願いしてみたら? とっても素敵に仕上げていただけてよ!」


「そうですね、たしかに……」


「いや、わかるけど、絶対高いやつだろ!? いくら?」


「…… 犬種によって異なりますの。あたくしのパピヨンアルフレッドは5500マルですわ!」


「やっぱり、高価たっか……!」


「そうねえ。やはり庶民には、厳しいかもね。シェルティは、たしか……7,000マルだったもの」


「うううう…… 俺は確実に無理だな。すまん、チロル……」


「まぁ、焦る必要はなくてよ!」


 おーほほほほ!

 エリザが高笑いする。気持ちよさそうだな。


「愛情こもった自前カットも、また価値があるものですわよ…… ヘ タ で も ね!」


「愛情…… そうだよな。ヘタでも、愛情が一番だよな!」


 エリザ…… 上から目線をキープしつつも俺をはげまそうと、してくれてるんだな……

 やっぱり、めちゃくちゃ良い子だ!

 俺は思わず、エリザの手を両手でぎゅうぎゅうしていた。やわらかくてすべすべ。


「エリザ、俺、頑張るよ! ありがとうな!」


「べっ、別に……っ! あたくしは、なにもっ」


「うん、わかってる、わかってる」


 そうだ、俺はわかってるから、いい。けど、サクラは……

 サクラは、俺とエリザから目をそらし、下を向いてふるふる震えていた。やっぱりな。


「サクラ、気にするなよな!? 美容室に行けなくても、自分でトリミングするのも楽しそうじゃん!」


「は、はい……」


「エリザは、俺たちをはげまそうとしてくれたんだよ! 愛情のこもったカットはプロよりもいい、ってな」


「そそ、そうですね……」


 サクラ、まだ震えてる…… やっぱり、気にしてるのかな。繊細なんだな。

 エリザ、悪役令嬢だからか、わざと自分から誤解を生産していくとこあるし…… よし、俺、ふたりがもっと仲良くなれるよう、頑張ってフォローしていこうっと!



「わー。これが、レジか……」


 買い物の最後は、当然だけどお会計。

 俺たちは買い物カゴを持って、レジに並ぶ。


「休日だからかしら。混んでるわね」


「けど、こうやって待つのも新鮮で楽しいな!」


「リアルでは、ネットでポチするだけですからね」


「だよなー。地下しか知らないけど、このゲームやってると地下って特殊なんだな、って改めて思う」


 ぼそぼそ話していると、順番はすぐにきた。

 ここを仕切ってるのは、犬と猫のアップリケ付きエプロン姿のゴリラだ。


「…………」


 無言でバーコードを読み取る姿がサマになってる…… レジの機械も、カッコいいな。


「あっ、お願いします!」


「…………」


 俺がカゴを店員さんに差し出すと、自動的に空中にウィンドウが開かれて、買い物明細を映し出した。

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