「あー…… いっぱい、たべた……」
俺は学生寮の部屋で、ごろごろ寝転がっていた。
満足感が半端ない…… そして、落ち着く……
エリザは、さっき忙しそうにログアウトしてしまったが、俺はもうちょっと、まったりしていたい。
みんなでのランチ、めちゃくちゃ楽しかったなぁ……
エルリック王子たちNPCイケメンはみんな親切だったし、料理は文句なく特上級のうまさだったし。
どれくらい、うまかったかというと……
―― 『仔羊のフィレなんたら』 の、とろけるようなそれでいてアッサリとした仔羊と甘味のある新鮮野菜の取り合わせに涙を流し、
『オマールエビのグラタンなんたら』 を食べて、プリプリとしたオマール海老とマッタリとしたチーズの名コンビネーションに踊り出しそうになり、
『ハマグリの白ワイン蒸し』 で、貝のくにゅくにゅした舌触りと上品な白ワインの香りにノックアウトされた。
(ちなみに、貝は俺とエリザが潮干狩りでとってきたやつ)
最後の 『デザート四種盛り』 なんか、デコレーションがめちゃくちゃキレイで食べるのがもったいなかった…… でも食べた。
口のなかで幸せにとろけるアイスクリームも、フルーツたっぷり、ふわふわのスポンジケーキも。ぷるっと優しいプリンも、脳ミソ破壊してくるかのごときチョコレートムースも……
俺としては、このゲームの味覚担当さんには国民栄誉賞を差し上げたい!
で、料理だけじゃなくて、もちろん、みんなとのおしゃべりも。
とにかく、盛り上がって楽しかったなー!
エリザはやっぱり、サクラに対してツンケンしようとしてたけど、そこまで意地悪じゃなくて、ほほえましかった。
悪役令嬢、得意じゃなくても頑張ってるんだな、エリザ……
(エリザ以外のみんなが思ってそう)
午後には、女の子3人でペットショップに行く約束もしたし …… もうこのゲーム、最高じゃない!?
さて。これからリアルに戻って、普通の昼メシを食べてから勉強だ。
できるだけ早く終わらせよう。
「チロルぅぅぅ!」
俺は、ガイドのシェルティ犬を抱き上げて、おでことほっぺを思いっきり、すりすりした。
この、ほどよい重みと温もり…… 尊い。
「午後みんなでペットショップに行くぞー! なんでも買ってやるからな!」
「ぅおんっ」 【まぁ、重課金で怒った親御さんからゲーム取り上げられない程度でヨロシクですww】
「とうぜん! 無課金じゃなきゃ、怒られちゃう!」
【wwww】
チロルは嬉しそうに 【
「さ、ステータス見たら、俺もログアウトすっかぁ!」
俺はウィンドウを開き、ステータスを確認していった。
≡≡≡≡ステータス ①≡≡≡≡
☆プレイヤー名☆ ヴェリノ・ブラック
☆職業☆ 学生
☆HP / MP☆ 30 / 10
☆所持金☆ 6,350マル
☆装備☆ 制服 /学生バッグ / 普通の靴 /ー /ー /ー
☆ジョブスキル☆
・勉強 lv.1
☆一般スキル☆
・掃除 lv.2
・料理 lv.1
・飼育 lv.2 ペット数:1
・買い物 lv.2
・おしゃれ lv.1
・外出 lv.3 商店街、小運河 (舟)
・魔法 lv.1 プチファイア
≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡
授業は受けていないから、ジョブスキルの 『勉強』 には変化なし。
―― おお。『掃除』 レベルが1上がってる……! 朝に掃除しといた効果か。
「ぅおんっ♪」 【掃除レベルはlv.20で 『プロ清掃人』。 清掃バイトの受注ができるようになりますよ】
「そっか…… スキルのレベルを上げたら、稼げるようになるんだ!」
「ぅおんっ♪」 【手っ取り早くレベルを上げるためには、『特製・レベルアップポーション』 もオススメです。デパートで50,000マルにて販売中】
ふっわふわの身体でじゃれつき、クンクンと鼻を鳴らしつつ、懐こい瞳で見上げてくるチロル。
「いや高価いから!」
【別に買えだなんて言ってませんよww いざという時のための豆知識ですww】
「いざという時でも買えるか!」
【wwww】
さて。
次のステータスは……っと。
俺は、空中で指をスライドさせて、ウィンドウを変えた。
≡≡≡≡ステータス ②≡≡≡≡
☆持ち物☆
制服★ 学生バッグ★ 普通の靴★
潮干狩り基本セット
☆称号☆
◆潮干狩り初心者 ◆なりそこないライフセーバー ◆企画初心者
≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡
おおっ、②画面に称号欄が、突如として現れた!
「称号ってあると、違うのか?」
【場合によっては、経験値が若干多めに貰えたり、取引やバイトの際に貰えるお金が僅かに多くなったり、仕事の依頼が増えたりしますよ】
「へえー! すごいな、称号!」
【ま、ほんの少しですけどねww 称号に頼るより、自力で頑張った方が早い感じでww ちなみに称号は3000マルから売っていますww】
「え、じゃあ 『○○マスター』 みたいな称号も買えるの?」
【それは500,000マルです】
「
チロルが俺を引きとめるみたいに、しめった鼻をぐりぐりとふくらはぎに押しつけてきた。
【交遊関係の画面も、ぜひ、見てみてくださいね!】
「おー、そうだったな!」
交遊関係は、エリザしか知り合いがいないから気にしていなかったんだけど。
今日で知り合い、一気に増えたんだもんね!
「どうなってるかなー? 楽しみ!」
俺はワクワクしながら、ステータス画面③ 『交遊関係』 へと指をスライドさせた。