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第7話 レベルアップしよう

 このVRゲーム 『マジカル・ブリリアント・ファンタジー』 では、どうやら意識を失うと自動的にログアウトするらしい。

 気づいたら俺は、現実世界の自分の部屋だった。

 寝落ちしちゃった感、半端ないけど、けっこう疲れてもいる。

 チロル、無事だったかな……

 ―― そういえば、ゲームオーバー宣言されたけど、そのときはどうなるんだったけ?


 俺は、解説書を見た。


『ゲームオーバー : HPがゼロになると、目の前がまっくらになり、ログアウトします。その後、一定時間、ゲームにログインできなくなります。ログイン後は、ステータスは保持されますが、原則、ゲーム内の自室 (始まりの部屋) からのスタートになります』


 なるほどね。一定時間、ってどれくらいなのか、書いてないんだけど…… 条件によって変わる、ってことかな?

 ま、もう真夜中だし、そろそろゲームやめて、寝ないとな……


 ―― マジカル・ブリリアント・ファンタジー …… ところどころ、フザけたところもあるけど、クソゲーと呼ぶには作り込みがすごくて……

 ルームメイトも面白くてかわいかったし……

 ガイド犬も草生やしすぎだけど、もふもふでかわいかったし……

 なにより、メシが美味かったし…… 


 続けても、いいんじゃね?


 そんなことを考えながら、俺は、ぐっすり眠ったのだった。



 で、翌朝、5時。

 洗顔もソコソコに、再びVRゲーム用の装備を身につける。

 チロルやエリザがどうなったのかも気になるし、朝ごはんまでは遊ぼう!


 腕を大きく回しながら、俺は、ログイン用ワードを叫んだ。


『マジカル・ミラクル・はじまるよっ!』


 ……もっとカッコいいのがいい。



 ☆★☆★☆



 目を開けると、学園の寮の部屋だった。

 足元にまとわりつくのは、フワフワの毛玉。

 ううう…… やっぱ、かわいい。癒される。


「チロル! お前無事だったのかぁ!」


【当たり前ですww】


 いや、本当に良かった!

 もう、抱っこして、すりすりしちゃおう!

 ほれ、ぎゅーっ! おおお…… この、もふもふ感…… なんか、懐かしい匂いもするし……

 癒される……!


 チロルは、嬉しそうにしっぽをパタパタしてくれた。


【エリザ様からメッセージを預かっています。画面を開いてください】


「? エリザは?」


【ログアウトしています】


「そっか。じゃ、メッセージを……」


 俺は空中にウィンドウを出現させ、メッセージ欄を押した。



 ≡≡≡≡ 新着メッセージ ≡≡≡≡


 ヴェリノ、ご苦労様だったわね。

 貝は貴女の分も売っておいたわ。

 学園の食堂が高めに買い取ってくれたのよ。きっと明日のメニューは貝料理ね。

 代金は机の引き出しに入れておいたから、確認しておくこと。

 いいわね!


 エリザ


 ≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡



 エリザって、やっぱり親切!

 悪役令嬢じゃなくて、やっぱり大将だよな! いやむしろ 『親分』 かな?

 じゃ、ありがたく、机のなかを確認…… おおおお!? 

 買い取り明細のメモと一緒に、大金が……っ!

 ―― えーと、まず、お札が2枚。それから、コインが1、2、3……8枚もある!


「しめて2800マル! 黒字確定っ! バンザイ! 親分最高!」


 ―― エリザの残したメモによると、俺の取った貝は4.2kg。キロ600マルで買い取ってもらったらしい。

 それから、飾り用の貝殻が全部で280マル…… ほとんどエリザがとったのに、きっちり分けてくれてる……

 やばい、嬉しくて涙でそう……


【お金を財布にしまったら、ステータス①画面を確認してみてください】


 くぅーん、と鼻を鳴らすチロルに従い、お金をしまってステータス画面を開く。


「おおおっ!」


 お金が増えてるのって、わかってても感動。

 それに! レベルも!

 あれこれ上がってますよ、奥さん!



 ≡≡≡≡ステータス ①≡≡≡≡


 ☆プレイヤー名☆ ヴェリノ・ブラック


 ☆職業☆ 学生


 ☆HP / MP☆ 30 / 10


 ☆所持金☆ 6,350マル


 ☆装備☆ 制服 /学生バッグ / 普通の靴 /ー /ー /ー


 ☆ジョブスキル☆

 ・勉強 lv.1


 ☆一般スキル☆

 ・掃除 lv.1

 ・料理 lv.1

 ・飼育 lv.2 ペット数:1

 ・買い物 lv.2

 ・おしゃれ lv.1

 ・外出 lv.3 商店街、小運河 (舟)

 ・魔法 lv.1 プチファイア


 ≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡



 飼育と買い物と外出 ―― 3つも、レベルアップしてる!


「これ、すごいんじゃね?」


【買い物は、鉄道チケットや駅弁で経験値をかなり稼げましたね。外出も、初心者で海まで行ったので、一気にレベルアップできました】


「じゃあ、飼育は?」


 チロルの人懐こい瞳が、じっと俺を見上げる。


【私を助けてくれたからですよ!】


「えっ……あれが?」


 俺、途中で気絶しちゃったけど!?


【ええまぁ一応ww  本当は、助けなくても大丈夫な仕様なんですけどね。私、AIですからwwww】


 しっぽをふりながら、盛大に草生やしやがったなコイツ。

 ……でも、なんか、前より懐いてくれてるみたいだ。


「もしかして、草は親愛の証、とか?」


【いえww 単なる個性ですwwww】


「だろうと思った…… でも俺、いい飼い主になる!」


【wwww 将来は、ペットブリーダーか飼育員でも目指しますか?】


「それは、まだ決めてないけど」


 まだ当分は、学生生活満喫したいしね。


「でも、まぁ、その…… けっこう、チロルのためになにかするの、気分いいし」


【かくして人は、ペットの奴隷となっていくのですねww】


おまえペットがいうな」


 俺は、チロルの全身をわしゃわしゃ、もふった。


「とにかく! チロルのために要るもの、いろいろ買いにいくぞ!」


【あ、それは無理ですww】


「えええ? なんで?」


【いま、こちらの世界も早朝ですから。ショップはまだ開いていません】


「がーん。せっかく、早めにログインしたのにな」


【wwww ちなみに、学校も8時半からですから。いまのあなたにできることは、掃除程度ですねwww】


「………………」


 それから俺は、現実世界での朝ごはんの時間まで、ひたすら掃除をして過ごしたのだった。


 現実世界では、朝ごはんのあとは勉強だ。

 さっさと終わらせて、すぐに戻ろう…… 次は、いよいよ!

 『学園生活』 スタートだ……!

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