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第十二話『白の都』・弐

「-本日は、ありがとうございましたっ!」

『ぴい~っ!』

 それから、鳥使いは様々な芸を見せていき俺達観客を楽しませてくれた。そして、最後の芸を見せた鳥使いと美しい鳥達は揃ってお辞儀をした。

『わああああ~っ!』

『最高~っ!』

 当然、俺達観客は彼女に歓声と惜しみない拍手を送った。…いや、本当に凄かったな。

『あー、今日も良い物見れた~っ!』

『また見に来ようっ!』

 やがて拍手が収まると、俺達以外の観客達は少しずつ居なくなっていった。

 すると、班長はまた鳥使いに近付いた。

「ふふ、本当に腕を上げたわね」

「はいっ!ありがとうございますっ!」

「凄かったです」

「いや、本当に良かったぞ~」

「お見事ですっ!」

「…あはは、ありがとうございます」

 俺達も称賛すると、後輩は照れ笑いを浮かべながら頭を下げた。…それにしても、まさかこんな事もやっているとはな。


「…あ、やっぱり『そこ』が気になるよね」

「ああ。

 -武術の道場で、『鳥使いの芸』まで教えてるとは思わなかった」

「まあ、ウチの道場くらいでしょうね。あ、勿論指南してるのはウチの所だけじゃないわよ?

 単に、ウチの所が『鳥使いの元祖』ってだけだから」

「…いやいや、熟練の指導講師と初心者向けの鳥が沢山居るうえに、修行の環境が完璧に整っているのは葛西道場だけだと思いますよ?

 だから、鳥使いの家の子供以外は皆道場の門を叩くんですから」

「「へぇ~」」

「なるほどな~」

「…知らなかったわ。それが当たり前だと思っていたから。

 あ、ごめんなさい。それじゃあ、またね」 

「いえっ!ありがとうございましたっ!」

 衝撃の事実にかなり驚いていた彼女だが、ふと話を切った。多分、これから後輩は後片付をするのだろう。

 無論、後輩は気にした様子を見せず俺達に深く頭を下げた。

「じゃあ、行きましょう」

「ああ~」

「了解」

「はいっ!」

「皆さんも、ありがとうございましたっ!」

 そして、俺達は再び班長の後について都の中を歩き始める。すると、後輩は俺達を見送ってくれた-。


「-あれが、私の実家よ」

 それから、少しの間坂道の多い都の中を進んでいるとなかなかに立派な道場が見えてきた。

「…凄い、根津道場よりも大きいです」

「いや、いつ見ても立派だな~」

 すると、弟分と兄さんはそれぞれ感想を口にした。まあ、初見と経験者の違いだな。勿論、俺

 は弟分と同じ感想だ。

「…あれ?門番が居ない?」

「ああ、ウチの門番は『あそこ』に居るよ」

 そして、これまた立派な門の前にたどり着くのだが門番の姿が見えなかった。…すると、班長は門の屋根を指差した。

『ぴい~っ!』

 そこには、三羽の鷹がおりその内の一羽はこちらを向いていた。なるほど、『鳥の都』だけに門番は猛禽類なのか。

「ちなみに、夜はフクロウ達が門番になるの」

「なるほど~」

「「へぇ~」」

「ぴい~っ!」

「あれ?道場の中に飛んで行きましたね」

 そんな事を話していると、こちらを向いていた鷹が持ち場を離れた。そして、道場の空を旋回していく。


『ーっ!来たっ!』

『いや~、やっとか~っ!』

 すると、静かだった道場の中が騒がしくなり門の方に人が集まって来ているのを感じた。…どうやら、あの鷹は俺達の到着を中の人に教えてくれたようだ。

「凄く賢い奴だな~」

「ですね」

「は~、本当に凄い所ですね」

「ありがとう。…あ」

「-お帰りなさいっ!桃歌っ!」

 そして、道場の門は勢い良く開かれ中から女性が飛び出して来た。…その人は、桃歌が成長したような容姿だったので間違いなく彼女の母親だろう。

「ただいま帰りました、お母さんっ!」

「ええ、よくぞ無事に帰って来ましたねっ!」

「わっぷっ!」

 すると、彼女の母親は娘の帰宅を喜びそのまま包容した。…いや、素敵なお母さんだな。

「…っ!」

 けれど、母親は直ぐにこちらに気付き素早く娘から離れた。…流石、道場の人だけあって凄く軽やかな身のこなしだな。


「…お見苦しいところをお見せしました。

 ささ、まずは中へ」

 そして、母親は少し恥ずかしそうにしながら俺達を招き入れてくれる。…なんか、親しみやすい人だな。

「…はあ」

「失礼しま~す」

「「お邪魔します」」

『-お帰りなさいっ!桃歌先輩っ!』

 なので、とりあえず俺達は道場の中に入る。すると、中に居た若い門下生達が一斉に彼女に挨拶した。

「皆、ただいまっ!」

「さあ、皆さんっ!休憩はここまでにして、稽古を再開しましょうっ!」

『押忍っ!』

 当然、彼女は返事をした。そして、母親は門下生達に指示を出しそれを聞いた彼らは直ぐに修行場に戻って行った。

「…ふう、すみませんね。私達は皆、この娘の帰りを楽しみにしていたものですから」

「いや、仲良いのは良いと思いますよ~」

「はい、とても素敵だと思います」

「…ありがとう。…ん?どうしたの?」

 皆がそんな話をしているなか、彼女はこちらを見て首を傾げる。勿論、俺も仲良いと聞いて素敵だと思っていたがふと気になる事があった。


「…いや、さっき此処の鳥使いの人に聞いた話だと鳥も沢山居るんだよな?

 けど、門番以外の鳥の気配がしないのはどうしてだ?」

「…っ!…あ、本当だ」

「そういえば、どうしてだ~?」

 すると、仲間二人も気になったようだ。…というか、兄さんは知ってると思っていた。多分どうしても知りたい気持ちにはならなかったのだろう。

「…なるほど。どうやら、貴方は既にある程度力を扱えるようですね」

「ふふ、凄いでしょう?

 まあ、その理由は後で教えるわ」

 一方、彼女の母親はこちらの実力を把握し娘は機嫌良くそんな事を言った。

 そして、俺達は敷地の中を進んでいき大きく歴史を感じさせる家にたどり着いた。

「ここが、私と家族が住んでいる母家よ」

「おお、立派な家だな~」

「そうですねっ!」

「…此処、何人で住んでるんだ?」

「…?私達家族しか住んでないから四人よ」

 仲間二人が感動するなか、俺は思わず質問してしまう。すると、彼女は不思議な顔をしながから答えた。…なんとなく分かっていたが、彼女は相当なお嬢様のようだ。


「ふふ、驚かせてしまったようですね。

 この屋敷は、先祖より代々受け継いで来た物の一つです。それに、昔はこの屋敷が手狭になるくらい人が住んでいたんですよ」

「…な、なるほど(いや、マジで歴史がある道場なんだな)」

 そんな話をしていたら、彼女の母親が軽く説明してくれた。当然、余計に驚いてしまう。

「さあ、どうぞお上がりになって下さい」

「はい、失礼しま~す」

「「お邪魔します」」

「ただいま~っ!」

 そして、母親は引き戸を開けて俺達を招き入れた。なので、俺と兄さんと弟分はお辞儀をするのだが班長は帰宅の挨拶をした。…多分、久しぶりの帰宅だからか彼女は本当に嬉しそうに中に入って行った。

「…?」

 それから、玄関で靴を脱ぎ上がらせて貰うと目の前にあるふすまがゆっくりと開き、中から弟分と同い年くらいの少年が出て来た。

「あ、彦一っ!ただいま~っ!」

「…お、お姉ちゃん」

 すると、彼女は嬉しそうに弟に挨拶した。…一方、弟の方はびっくりした顔をしていた。


「…お帰りなさい。…あ、こんにちは」

 けれど、弟は直ぐに満面の笑顔になり姉の帰宅を喜んだ。そして、弟はこちらに頭を下げてくる。

「こんには(…ウチの弟分といい、良い所の子って皆礼儀正しいのか?)

「ああ、こんにちは~」

「は、初めまして」

「弟の彦一よ。歳は、智一と同じね」

「へぇ~」

「…あ、お母さん。お茶の準備、終わったよ」

「ありがとう。じゃあ、とりあえず部屋に戻ってなさい」

「…うん。…それでは、失礼します」

 そして、弟は再びお辞儀をして家の奥に消えて行った。…いや、驚いた。あの歳で全然隙がないのな。

「さあ、皆さん。どうぞ居間に」

 すると、母親は広い居間に入るように言ってきたので俺達は中に入り、立派な座卓を囲んで床に敷かれたふかふかの座布団に座る。

「では、お茶を淹れてくるので少々お待ち下さい」

「あ、どうも」

「すみませ~ん」

「ありがとうございます」

 そして、母親は居間から出て行き居間には俺達だけになった。…なんか、落ち着かないな。


「はあ~、久しぶりの我が家だ~。…ん?もしかして、落ち着かない?」

 一方、彼女は大分気楽な様子だった。だが、俺達の様子に気付き聞いてくる。当然、俺達は直ぐに頷いた。

「…当たり前だろ。こちとら、山奥の村人なんだぞ?」

「…正直、僕の実家よりも大きいですよ」

「敷地も足すと、オイラの農場と良い勝負になるんじゃないか~?」

「…そうだったわね。いや、私は『これ』が当たり前だったわ」

 すると、彼女はようやく認識の違いを理解し申し訳なさそうにした。…まあ、感覚が麻痺するのは仕方ないか。

「…あ、そうだ。さっきの仁の質問は、もう少しだけ待ってくれる?」

「今直ぐに知りたいと思ってないから大丈夫だよ。…それに、せっかくおもてなしをしてくれるんだから、しっかり受けないと失礼だろう」

「だな~」

「ですね」

「ありがとう」

 仲間二人も頷くと、彼女はにこりとした。

 それから少しして、母親がお茶とお菓子を運んできてくれたので俺達はしっかりとおもてなしを受けた-。

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