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第十二話『白の都』・ 壱

「-なるほどな~。やっぱり、牛乳は偉大だなあ~」

 北村牧場を旅立ってから数日後。俺達はいつものようにお互いを知る為の雑談をしていた。

 今回は、お互いの好きな食べ物なのだがふと栗蔵兄さんが俺の身長に触れて来たので、牛乳も大好きだと返した。

 すると、酪農家である彼は本当に嬉しそうな反応をした。

「僕も、北村牧場の牛乳は大好きです」

「まあ、私は普通くらいですね。ただ、牛乳は背を伸ばすだけでなく骨も強くなるから道場では必ず毎日飲んでましたね」

「いや、嬉しい限りだ~」

 更に、弟分と桃歌の言葉を聞いた兄さんはますます笑顔になった。

「…あっ、そろそろ見えて来ますよ」

 そんな穏やかな空気の中、ふと班長は上の方を指差した。…そう。俺達は、そこそこな傾きと長さのある整備された山道を上がりなが雑談をしていたのだ。

 まあ、俺達は元々慣れがあったり身体を鍛えたりしているから、全然苦しくはなかった。むしろ、氣で身体を強化しているのでまるで散歩をしているような感覚だった。


「-…ふう~。…あれが、私の故郷の『白の都』です」

 それから少しして、山道を上り終えた俺達の前に白く縦にも横にも長い城壁が見えて来た。流石、城郭の街だけあって守りが固そうだ。

「いや、いつ見ても立派だな~」

「…もしかして、栗蔵兄さんはこの街で修行をしていたんですか?」

「ああ、一昨年から去年の間にな~。

 元々、オイラはこの辺りの生まれなんだが三年くらい前に故郷に帰って来た時に、何の因果が楠家の人と知り合ってな~。

 んで、何故かそのままお師匠に引き合わせて貰いあれよあれよと言う間に、丑の闘士を引き継ぐ事になったんだ~」

「…へ?」

「…嘘」

「はぇ~、そんな例もあるんだ~」

 班長の質問に、兄さんは懐かしそうな顔でとんでもない体験を語った。…当然俺達は、兄さんの宿命力にとても驚いてしまう。

「…というか、この辺りの生まれなんですね。

 全然、知りませんでした」

「…あ、だから僕が村に帰った後呂奈には息子さんが来ていたのか」

「ああ、そうだ~。

 …ん~?ああ、お前さん呂奈で修行してたんだな~。

 もしかしたら、お客さんとして知り合っていたかもな~?」

「ですね」

 兄さんのもしもの話に、弟分は頷いた。…もしそうなっていたら、もっと早く出逢えていたのだろうか?それとも、変わらなかったかな?


「-あっ!お嬢だっ!」

「本当だっ!お帰りなさいっ!」

 そんな事を考えている内に、都の出入り口である巨大な城門の前にたどり着いた。…すると門番達は班長に気付き、手を振ってきた。

「人気者だな」

「本当、ありがたいわ」

 感想を言うと、彼女は本当に嬉しそうにした。

 そして、俺達が門に近付くとしっかりとした装備で身を固めた門番は笑顔を浮かべていた。

「お帰りなさい、桃歌お嬢っ!」

「お疲れ様ですっ!あ、桃次郎もお帰りっ!」

「ただいま帰りました。お二人共、お役目お疲れ様です」

「ぴい~っ!」

「…っ!お嬢、まさか彼らが?」

「はい」

 彼女と小鳥が門番達と挨拶を交わすと、次は俺達の番になった。…当然、門番達はますます喜んた。

「…っ!おお、彼らがお嬢と共に闘う方々ですかっ!」

「「こ、こんにちは」」

「宜しくな~」

「まさか、一気にお三方お連れになるとは思いもしませんでした。

 あ、失礼しました。どうぞ、お通りください」

「ようこそ、白の都へ」

「「「ありがとうございます」」」

「ありがとうな~」

 片方の門番がそう言うと、もう片方は俺達に歓迎の言葉を掛けてくれた。

 なので、俺達はお辞儀をしてから街の中に足を踏み入れた。


『-さあ、どうぞ見ていってくださいっ!』

『ぴい~っ!』

 すると、門前の広場から女性の声と複数の鳥の鳴き声が聞こえた。どうやら、何か催しをやるみたいだ。

「あ、運が良いな」

「もしかして、名物か?」

「うん。…ねぇ、皆。もし良かったら見て行かない?」

「お、良いね」

「はいっ!」

「良いぞ~」

 ふと、彼女は催しを見たいと言って来たので俺達は二つ返事で頷いた。…正直、少し興味を惹かれたのだ。

「じゃあ、行こう」

 すると、彼女は嬉しそうにしながら催しの所に向かった。…多分、催しの責任者と知り合いなのだろう。

 そんな予想をしながら、俺達は彼女の後を追い掛けた。


「あっ、ようこ…って、桃歌先輩っ!?」

「久しぶりね、苺。元気にしてた?」

「お、お帰りなさいっ!今、お帰りになったんですか?」

「そうよ。…あ、紹介するわね。

 彼女は、榎本苺。ウチの道場の人間よ」

「初めましてっ!……あれ?……嘘っ!?」

 榎本さんはお辞儀をした後、ふと俺達の事を見て来た。…そして、直ぐにその表情を驚愕に変えた。

「す、凄いですっ!まさか、一度に三人の『選ばれし方々』にお会い出来るなんてっ!」

「相変わらず、察しが良いわね。

 -さて、お話は一旦ここまでにしてそろそろ『鳥使い』の催しを見せてくれない?」

 後輩は感動しながら俺達にそう言った。それを見た班長は、とても喜びつつ後輩に本題を告げた。

「あ、はいっ!…~~っ!」

『ぴい~っ!』

 すると、彼女は笑顔で頷き指笛を鳴らす。それを聞いた、綺麗な赤や黄色や緑の身体の鳥達は一斉に空へと飛び立った。


「さあ、まずは皆さんへご挨拶をさせて頂きます。…~っ、~っ」

『ぴい~っ!ぴい~、ぴっ』

 まず、彼女はそう言って短く二回吹いた。直後鳥達は俺達の目の前に降りて来て、ぺこりと頭を下げた。

「うわ、凄いですね」

「どうも~」

「こんにちは」

「ふふ、可愛い」

『-あ、鳥使いやってるっ!』

『やった~っ!間に合ったっ!』

 当然、俺達は驚いたり返事をしたり癒されたりしていた。…すると、他の人達も催しに気付いたのか徐々に広場が賑やかになっていく。

『ぴい~っ!』

 けれど、鳥達はびっくりする事なく他の観客にも挨拶していった。…いや、野生の鳥とは大違いだな。

 多分、相当大変な訓練をして沢山場数を踏んだのだろう。

「…~~~っ」

『ぴい~っ!』

 やがて、ある程度挨拶が終わったのを確認した鳥使いは、少し長く指笛を吹いた。すると鳥達は、挨拶を止めてまた空中に飛び立つ。


「さあ、お次はちょっとした芸をお見せ致しましょう」

 次に、鳥使いは傍に置いていた箱から木製の輪投げで使う輪っかを取り出した。…ほお?

「え、あれを使うんですかっ!?」

「輪の大きさは少し余裕があるが、少しでも呼吸がズレたら失敗だな~」

 それを見て何をやるのか察したので、俺はワクワクして来た。一方、仲間達は不安そうな様子になった。

「…へぇ、『アレ』も習得したんだ」

 そして、鳥使いを良く知る班長は期待の眼差しを向ける。…やはり、相当難しい芸らしい。

「…さあ、皆さん。よーくお空に居る鳥達を見てて下さいねっ!

 …~っ、~っ、~っ、~っ、~っ」

『ぴい~っ!』

 無論、鳥使いは少し緊張した様子でそう言い複数回短く指笛を吹いた。すると、鳥達は返事をしてバラけていく。

「-はっ!」

「ぴい~っ!」

 それから少しして、鳥使いは輪の一つを空高く投げる。直後、赤い身体の鳥が輪目掛けて飛んで行き空中にある輪を楽々とくぐり抜けた。


『おお~っ!』

「す、凄いですっ!」

「ああ、大したもんだ~っ!」

「やるねぇ、彼女」

「でしょう?」

 それを見た観客は、歓声を上げたり拍手をしたりした。勿論、俺達も彼女と赤い鳥に称賛を送った。

「…っと。はいっ!」

「ぴい~っ!」

「それっ!」

「ぴい~っ!」

 すると、鳥使いは落ちてきた輪を掴み残りの輪も立て続けに投げていく。そして、黄色と緑の鳥は素早く輪をくぐり抜けた。

『おお~っ!』

「…ほっ、とっ。…ふぅ」

 当然、俺達観客は歓声を上げ拍手を送った。一方、彼女は落ちてきた二つの輪を華麗に掴み安堵した-。

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