-翌日。自然に目が覚めた俺は、それとなく船の様子を見て回っていた。
「あ、おはようございますっ!」
「おはようございます。…あの、その怪我どうかされたんですか?」
すると、作業中の船員と出くわした。しかも彼は、腕に包帯を巻いていた。
「あー、大した怪我ではないのでご心配には及びません。
-昨日、ちょっと海賊とやり合いまして」
「……はい?」
彼は、話しの流れで昨日の騒動を話した。…当然俺は、びっくりした様子で反応した。
「おっと。
改めて、後程昨日の騒動の事をご説明致しますので」
「あ、はい。…っ!そうだ、一つ聞きたい事2があるんですけど」
「はい?」
「実は-」
そして、船員は驚いてる俺にそう言って作業に戻ろうとした。その時、俺は『ご飯が出てくる飯屋』について聞く。
すると、船員は幾つかの店を教えてくれたので俺は礼を言って彼と別れた。…いや、本当に怪我が深くなくて良かった。でも、もしかしたら次からはこうはいかないかもしれない。
『-不安が出て来たな』
(…ああ。…今までは何とか連中とやり合えて来たけど、この先必ず敵の闘士や厄介な奴ともぶつかる。
その時までに、俺は強くなれるのだろうか?)
すると、俺の心を読んだ寅が目の前に現れたので俺は正直に、心の内を語った。
『お前なら、強くなれるさ。
その為に、今日からお前にはいろいろな技を身に付けて貰う』
(…っ!)
寅は自信満々にそう言った後、ふと『修行』の開始を宣言した。…当然、俺は嬉しくなりつつ気を引き締めた。
『まずは、闘いの時に使える技を一つと日常的に行う氣を鍛える修行法を教える』
(…分かった)
『では、外に出るのだ』
俺が頷くと寅はそう言ったので、直ぐにデッキに向かう。…おわ、やっぱ少し荒れてるな。
『おーいっ!そっちはどうだ~っ!?』
『大丈夫でーすっ!』
少し荒れた様子のデッキでは、船員達が損傷の確認をしていた。そのせいか、デッキにはほんの少ししか乗客は居なかった。
『ふむ。あそこが良いな』
すると、寅は誰も居ない船尾の方を向いたのでそちらに向かう。そして、そこに着くと寅はまたこちらを向いた。
『では、技を教えよう。
-まずは、喉に氣を集めてみるのだ』
(…分かった)
俺はゆっくりと氣を練り上げいき、言われた通り喉に氣を集めていく。
『うむ。では、そのまま話してみろ』
「『あいう…っ!?』」
そして、そのまま言葉を発してみると俺の声は獣の唸り声のような低い声になっていた。…なんだこれ?
『ふふ、驚いたであろう。
喉に氣を集めると、そんな風に声が変化するのだ。
これは、偽りにも使えるし大きな氣を込めて叫べば敵を一時殆ど足止め出来る』
(…凄いな)
『これから、闘う時は常にそうするのだ』
(分かった)
『では、次は修行の方だ』
(…っ!)
『今、お前はある程度の氣を練り上げているだろう。
その状態を日々維持するのだ』
(…っ、マジか)
そう言われて、俺は冷や汗を流す。…今は良いけれど、後々しんどくなるのが簡単に予想出来るからだ。
『そうすれば、日々氣の量が増えていきまた今よりも素早く氣を練り上げられる』
(…なるほど)
『まあ、最初は一刻(一時間)程維出来れば上等だ』
すると、寅は課題を出して来た。…つまり、それだけ大変な修行だという事だ。
(…分かった)
とりあえず、俺は喉に氣を送るの事だけを止めて部屋に戻った-。
○
-それから、時は流れて数日後。船はあんなトラブルがあったのにも関わらず、定刻通り大陸の港街に到着した。
『どうぞ、足元お気を付け下さい』
『前の方に続いて、ゆっくりとお進み下さい』
そして、俺達は船員の案内従ってゆっくりと船を降り世界の中心にある大陸に降り立った。
「…なんか、感慨深いな」
「…だね」
「…俺達、今大陸に立ってるんだよな」
「…ああ」
当然、俺達は感動で震えていた。そして、まず俺達は港の案内所に向かう。
「…はあ、それにしてもまさか俺達が夢の中にいる時に海賊が来てるとは思わなかった」
「…うん」
「…本当、船員達には感謝だな」
「…ああ」
その道中、同郷の一人が小さな声でそんな事を言った。…当然、俺達は微かに震えながら返した。
実は、朝の食事前に船長が食堂に来て海賊の襲撃があった事を伝えたのだ。
当然、乗客達はざわめいたが船長が運行に問題がないと伝えると少し落ち着いた。…ただその時船長は、『助太刀した人』について話す事はなかった。
「…おっ、あれだな」
そうこうしている内に、地元の何倍もの大きさの案内所に到着した。…本当に、『都会』に来たんだな
「じゃあ、一旦ここでお別れだ」
「例のご飯屋さんで待ってますね」
「ああ」
そして、俺達はそこの前で一旦別れる。…実は彼らは、事前に日雇いの仕事を見つけていたのだ。本当、しっかり準備してたんだな。
俺は感心しつつ彼らの背中を見送り、案内所に入った。
-その後、とても順調に事は運び俺は直ぐに蒸気自動車の開発をしている会社の倉庫で働く事になった。
そして、監督役の人に自分のやる事を聞いて作業を始める。その作業は、少し大変だっだが村での役割と同じくらいだったので、あまり苦ではなかった。
しかも、定期的に…確か一時間くらい働いたら休憩時間になるのだ。…なんか、授業で聞いてたのとは大分違うな。
そのおかげか、大分体力に余裕があった。…まあ、氣によって身体を強化しているおかげでもあるのだが。
あの日から修行はどんどん厳しくなってはいるが、一歩ずつ乗り越えていった結果大分氣が増えた気がする。
しかも、氣の扱いが巧くなったおかげかこうして闘い以外でも役立てるようになって来た。
「-良し、昼休憩だっ!」
確かな成長を実感していると、監督役の人が俺達作業員に昼休憩を告げた。…しかし、既に個人用の時計があるとは思わなかったな。
確か、柱時計よりも高額な物らしい。…つまりこの会社は、かなり国から期待されているという事だ。
「…おい、新入り」
「…はい?」
そんな事を考えていると、監督役の人に呼び止められた。…まあ、多分注意とかではないだろうが少し身構えてしまう。
「…飯屋は決まっているのか?」
「…っ。えっと、友人達と待ち合わせしています(…凄く良い会社だな。正直、宿命の事がなければ正規の社員を目指していただろう)」
しかし、予想に反し監督役の人は昼ご飯の心配をしてくれた。なので、俺は内心感動しながら約束があると伝えた。
「そうか。…では、昼飯が済んだらなるべく倉庫の近くで休憩するように」
「はい、分かりました」
しかも、俺がきっちりした時間感覚を身に付けていない事を察していたのか、忠告までしてくれた。…いや、会社がしっかりしてるとそこで働いてる人もしっかりしてるんだな~。
「…ん?」
内心でまた感動していると、ふと監督役の人は足を止め右側の方を見たので、俺もそちらを見る。…すると、覆面をした怪しい集団が、こちらに向かって堂々と歩いて来ていた。
「おいっ!誰だお前達はっ!」
『……』
当然、監督役の人は警告するがそいつらは全く怯まずどんどんこちらに迫って来た。……っ。
その反応を見て、俺は直感的に奴らの正体を察した。
「ここは、一般人立ち入り禁止だっ!直ぐに立ち去らないと、憲兵を……っ!?」
一方、監督役の人は最終警告を出すが次の瞬間奴らは一斉に懐から短刀を取り出し、駆け出して来た。