「先手必勝!」
リディアが敵に向かって踏み出す。剣が骸骨の胸骨あたりを確実に捉えた。しかし魔物の体は思っていた以上に堅く、傷一つ付けられず弾かれてしまった。
「うそ!?」
リディアは一旦相手と距離を置き、体制を整える。
アーノルドは右手にナイフ、左手に聖水を持って構えてはいるものの見ているだけで何もできなかった。
自分が想像していた以上に恐怖と緊張で体が動かなかった。
骸骨はリディアをまず排除する相手と見定めたようだ。
アーノルドの方をチラリと見てから、戦うに値しないと判断したのかリディアの方に体の向きを変える。そして、
「ガアアアアッ!!」
と叫び声を上げてリディアに襲いかかった。
「ぐっ!」
武器を持っていないが、その体……骨自体が十分強力な武器となっていた。
骸骨が腕を上から振り下ろす。
それをリディアは剣で受け止める。しかし圧倒的な力に耐えきれず、リディアは後ろに退くしかなかった。
「はぁ、はぁ……どうしよう……」
たった一度攻撃をしのいだだけでこの疲れようだ。
長期戦では明らかに勝てない……しかも今の攻防でアーノルド様とも距離ができてしまった。
これではお守りすることもできない……いや、近くにいると攻撃のまきぞえをくらってしまうかも……どうすればいいんだろう……。
息を整えながら、リディアの頭の中がぐるぐると回る。
どうすることが正解なのかわからないまま、敵の次の攻撃がやってくる。
横殴りの攻撃をリディアはまたしても剣で受け止めるしかなかった。勢いに押され、数メートル横に吹き飛ばされた。
「リディア!」
アーノルドが叫ぶが、一歩が踏み出せない。
「大丈夫です、アーノルド様もお気を付けて!」
リディアは横たわったまま返事をし、顔を上げたときだった。
ちょうど骸骨の後方にアーノルドがいることに気がついた。しかも,自分よりも近い位置にいる。骸骨は倒れているリディアの方を向き、とどめを刺そうと力をためている。アーノルドのことは気にもとめていない。
チャンスは今しかない。そう思った。
「アーノルド様! 聖水を骸骨に投げつけてくださいまし!」
リディアが叫ぶと、アーノルドははっと思い出したように左手に握りしめていた聖水を骸骨の魔物に向かって投げつけた。
慌てて骸骨が後ろを振り向いたが間に合わなかった。