数回に分けて休憩を取りつつ数十分歩き続けただろうか。
洞窟内が明るく照らされているとはいえ、いつ魔物が襲ってくるかわからない緊張感が二人の体力を削っていく。
それでも、中央を走る台車用のレールを道標に先へ先へと進み続けた。
その間、ついに一つも魔物と遭遇することはなかった。
そうしてなんとか二人は最奥部らしき場所へたどり着いた。
これまで辿ってきたレールがここで途絶えている。
明かりも今二人がいるところまでしか設置されていない。
恐らく作業員たちはここからさらに掘り進め、道を整備していく予定なのだろう。脇には入り口にあったものと同じような台車やつるはし、鉱石などが散らばっている。
「ふう、やっと最奥部です。アーノルド様、お疲れではありませんか?」
「うん、なんとかね。こんなに神経をすり減らして歩いたのは初めてかもしれない」
「本当なら休憩したいところなんですが……このレールの途切れた先……異様な空気を感じます」
アーノルドとリディアが奥を見やると、真っ暗な闇がうごめいているように見えた。明らかに空気がおかしい。何かがいることは間違いない。
と感じたその瞬間、
「グオオオオオオ!」
と、空気を切り裂くように魔物の叫び声が洞窟中に響き渡った。驚いて二人は数歩後ずさる。
アーノルドはシスターからもらった聖水を取り出し、左手にしっかりと握りしめた。リディアは剣を鞘から抜き、構える。
「アーノルド様、きます!」
ガシャガシャと気味悪い音を立てながら、闇の中からゆっくりと骸骨の魔物が姿を現した。
見た目は人間の骸骨そのものだった。特に何かを身につけているわけでもなかったが、目の奥は赤く光っていて邪悪な雰囲気が感じられた。
本来なら生きているはずのないものが、確かに意志をもって歩いている。これは明らかに魔物だ。倒さなければ……と、リディアの剣を持つ手に力が入る。
「これが……魔物」
アーノルドもラビティ以外の「魔物」と初めて遭遇した。その圧に思わず息を止めてしまう。そして慌てて唾を飲み込む。
坑道に突然現れ作業員たちを困らせているこの魔物は、目の前で武器を構えている二人を見つけると再び大きく口を開けて叫んだ。
「グオオオオオオ!」
レベル0の二人がいきなり強敵と戦う。