アンロック洞窟は王都から東に向かう途中、港町シャイナとのちょうど中間地点に位置する。
洞窟の中で武器の材料となる鉱石が採れることから、多くの作業員たちが働いていた。しかし、突如現れた骸骨の魔物のせいでここ数日、作業が中断しているということだった。
「アーノルド様にお任せしてよいものか……どうかお気をつけて……」
と依頼主である洞窟の向かいにあるアンバー酒場の主人、フォートは困惑していたが、男女二人組の勇者は意気揚々と洞窟の中へ入っていった。
洞窟の中が鉱石の採掘場になっていることもあって道は整えられており、中央にレールも敷かれていた。
荷物運搬用の台車は横転し,中の荷物や鉱石があちらこちらに散乱していた。慌てて逃げてきたのだろうと容易に推測できる。
また、道は一定間隔ごとにランプが付けられていて周囲の様子をはっきりと映し出していた。洞窟というよりは坑道といったほうが適切かもしれない。
「骸骨の魔物は最奥部っていってましたね。もしかしたら移動しているかもしれないし、ほかにも魔物が潜んでいるかもしれません。アーノルド様、慎重に参りましょう」
リディアが先頭に立ち、剣を抜いて一歩一歩周りを見渡しながら進んでいく。アーノルドも少し腰を落とし、右手はナイフの柄を握っていつでも取り出せるように準備をして後に続く。
洞窟の中は静かだった。
リディアとアーノルドが時折立ち止まり、耳を澄ましてみるが何も聞こえない。魔物の足音や息づかい、気配も何も感じない。
「ここまで静かだと魔物もいないんじゃないかって思ってしまうね」
しかし二人は慎重に奥へ奥へと進んでいった。
しばらくして、
「アーノルド様、絶対そこの横穴に、何かいますよ」
とリディアが視線を向けた先には通路の右の壁に大きな穴が開いていて、闇が広がっていた。
明らかに道ではなく、何かが潜んでいそうな怪しい場所だった。
洞窟に入ってから今までが安全すぎた。
明るい道をただひたすら進むだけで危険らしい危険は何もなかった。
一瞬にして二人の緊張が高まる。
「うん、少し様子を見ようか」
というアーノルドの言葉を聞く前にリディアが道に落ちている小石を拾い上げ、闇の中に向かって投げた。
カン! という乾いた音が響いて……
バサバサバサバサッ!
黒い塊が羽音を立てて一斉に飛び出してきた。