最初は、本当にただ監視をするだけのつもりだった。
暗号にレオンの影がちらついてからは、確認するために一緒にいた。
けれど、いつの間にか花音自身に興味を持っていた。
同情でも、興味本位の好奇心でもなく、純粋に律だけを見てくれて、どんなにか嬉しかったか。
人と関わることをやめたと言った律にさえ、手をさしのべてくれた。
もう二度と会えないのかと、泣いてくれた。
そこまでしてくれて、やっと律は気づいたのだ。
「……本当に、僕は鈍いのかも……」
律は、流れてくる涙を拭いながら、笑い続ける。
いつか、花音に教えてあげよう。
あの暗号に隠された本当の意味を。
彼女は、こんなときだけ父親面して、と怒るだろうか。
それとも、ざまあみろと笑うだろうか。
この先のことは、彼にも判らないだろう。
だって、それは、二人で作り上げていく未来なのだから。