「あのー……。君、もしかして、
気がつくと、先ほど注目していた男子生徒が目の前にいた。
何度か声をかけられていたようだ。いつも冷静沈着を心がけている私だが、会長が絡むとつい、怒りで我を忘れてしまうことがある。
反省しつつ、平静を装って顔を上げた。彼は近くで見るとやはり背が高く、切れ長の目が緊張してこわばっているように見えた。
「ここへは、生徒会の仕事で……だよね?」
「……ええ。急遽、メンバー交代になりましたので。失礼ですが、あなたは?」
なぜそのことを知っているのか。当事者である私でさえ知らなかったことを、一般の生徒たちが知っているはずがないのに。
ネクタイの色を見ると三年生のようだが、面識はない。
全校生徒の名と顔を覚えたという妖怪みたいな会長ならば、一目で誰なのかわかるのだろう。その点、私は、部活や委員会などのトップのような目立つ生徒しか、把握できていなかった。
彼は私の持っているプリントを見て、小声で何か言った。
「まさか、本当に……?」
「え?」
聞き返すと、彼は慌てたように、左腕につけた腕章を指さした。
「あ、ああ、ごめん。ええと、俺は空手部の