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第3話

 教師陣からの依頼はこうだった。


 最近、中高生の軽犯罪が増加傾向にある。犯罪抑止を目的に、急遽、教師達が繁華街を巡回することが決まったが、教師には部活の監督という仕事もあり、どうしても手薄になる時間帯ができる。生徒会で、この穴を埋めてもらえないだろうか。


 具体的には、放課後から数十分間を生徒会が担当することで合意した。

 しかしあいにく、生徒会の方も予算会議の準備があって忙しい。そこで会長は、役員を二つのグループに分けることにした。役員の誰がメンバーなのかまでは教えてもらえなかったが、予想はつく。交渉ごとに向かない者や男子生徒を巡回組に振り分けたのだろう。


 かよわい女子生徒の参加は論外、というわけだ。

 だが、そんなものはただの差別ではないか。


 少なくとも、護身術の心得がある私は、廊下を歩いていた海野を締め上げることができた。案の定、バスケ部ともめ事を起こした彼は巡回組に分類されていた。護身術をこういう場面で使うのはルール違反だが、何はともあれ、腕力だけで向き不向きを判定できないことは証明できたと思う。


 時計を見たら、ホームルームからだいぶ時間が経っていた。

 敗者に選択権はない。会長から渡されたという巡回地図を海野から奪い、私は印の付いた場所へ急いだ。


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