───秋
夏が終わり、梅雨を迎えれば秋となる。
草木は枯れ、紅葉やイチョウの葉が風になびかれ、地上に舞う。
人間は何故か秋になると、食欲旺盛になったり、本を読みたくなる時期へと突入する。
それは季節も同じで、【秋】で暮らす者たちは皆、自分で食料を調達したり、葉に書かれた文字を読んだりする。
そこに春と冬は、冬の宝物を探しに【秋】を訪れていた。
梅雨から、【秋】は知識豊富で、何か知っているかもしれないという話を聞いたからだ。
「もう、傘差さなくていいの?」
梅雨から貰った傘を今まで指していた冬だったが、秋に辿り着いたおかげで、傘を折りたたみ始めたのを見た春は、冬に問いかけると、小さく頷いた。
「うん。もう涼しくなってきたし」
【秋】は、冬よりもまだ寒くはないが、肌寒いのが特徴だ。
「良かった~」
春は肩に乗っている冬の頭を撫でると、冬は少し嬉しそうに笑った。
すると、2人の様子を大きな樹の下から眺めていた【秋】がいた。
春は【秋】に気づくと、【秋】は風に乗って2人の前に姿を現した。
「風の噂で聞いたけど、本当に大切な宝物なんだね」
【秋】の言葉に驚いた春と冬。【秋】は驚かせてしまった2人に謝罪をした。
「おっと、すまなかったね。わたくし、【秋】と申します。以後、お見知りおきを」
謝罪を兼ねた自己紹介を終えた秋は、春と冬に微笑んだ。
そんな秋に春は早速、冬の宝物を知っているのかを問いかけた。
「私は春。こっちが冬です。突然なんですが、秋さんは冬の宝物がどこにあるか、分かったりしませんか?」
春は秋に問うが、秋は少し難しそうな表情を見せた後、首を横に振った。
「すまない。わたくしもどこにあるかは知りもしないのです」
秋が返した言葉に、肩を落とす冬。
だが、秋は続けて2人に話を続けた。
「ですが、その宝物というのは、いずれ見つかりますよ。絶対に」
「ほ、本当に!?」
冬は目を輝かせ、秋にの肩に飛び乗った。
「本当です。だから、諦めずに次の季節に行ってみてください。そこに、あなたの探し物が見つかると思いますから」
秋の言葉を信じた春と冬。
彼女の言う通りに、2人は秋を後にし、次の季節…【冬】に向けて歩き始めたのであった。