───夏
春が終わりを告げ、新たな生命を宿す。
その季節の名は【夏】。
太陽がサンサンと地上を照らし、春とは一味違う花たちが咲き誇る。
そんな【夏】の元を、【春】と【冬】が、訪れていた。
理由は1つ。冬の【宝物】を探すために。
「溶けそう…」
冬は、夏とは相性が悪く、雪で出来た体が今にも溶けそうになっていた。
そんな冬を見ていた春は、一刻も【夏】を探し、冬の大切な【宝物】の行方を聞かなければならないと、冬を自分の頭に咲いてある、桃色の花びらを被せながら、太陽が照らす草原の中をひたすら歩き続けた。
そして、ついに日光浴を楽しんでいる【夏】と出会うことに成功した。
「あなたが【夏】?」
春は夏に声をかけると、サングラス越しで春たちを目線を向けた。
「俺様が【夏】だ! 何の御用だ? お嬢ちゃん方?」
夏は春たちに問いかけると、冬が夏に、自分の宝物のありかを知っているのかを聞いた。
「僕の、宝物を知っている? とっても大切な宝物なんだ」
「お宝だぁ? 俺様には知ったこったねぇな。ところで、お前さん。こんなところに長くいたら、ダメだぜ? 他のところ当たりな!」
夏は冬にそう言うと、春は冬を連れ、夏を後にした。
*
再び、春は冬を太陽の日差しから守りながら、草原の中を歩いていると、後ろから小さな声が聞こえた。
「ま、まってぇ~」
春は後ろを振り返ると、頭の上から雨が降っている【梅雨】が、息を切らしながら春たちを追いかけてきたのだ。
「あたし、夏と兄妹の【梅雨】。その、兄との会話を聞かせていただきました。もしかしたら、【秋】さんなら、何か知っているかもです!【秋】さんは、物知りなので」
春たちは互いに顔を見合わせ、希望が見え始めたことに喜びを感じた。
「ありがとう! これからその【秋】さんに会ってみます!」
春は梅雨に礼を言った。すると、梅雨は何かを思い出したかのように、自分の雨で濡れた鞄から小さな傘を取り出し、冬に渡した。
「これは傘と言って、雨を凌ぐ道具なのですが、太陽の日差しからも身を守ってくれる代物なんです! 良かったら、使ってみてください!」
早速、冬は梅雨から貰った傘を使い、太陽の日差しを遮断した。
「涼しい~」
嬉しそうにしている冬を見た梅雨は、夏の言葉使いについて2人に謝罪をした。
「兄の言葉使いは、元からでして。悪気はないはずです。でも、不愉快な思いをさせていたら、本当にごめんなさい!」
「気にしていませんよ? だから顔上げて?」
春は梅雨の両肩をやさしく掴むと、梅雨は目からも雨を降らせ始めた。
「ありがとうございます…。私はこれで、道中お気をつけて!」
梅雨は2人に別れの挨拶をつげ、春と冬は【秋】へと歩き始めたのであった。