大き目のパーカー、素足に返り血を浴びた少女は一種、凄惨なで寂し気な微笑みを浮かべていた。
チョーカーが印象的だった。
深夜、壱樹(いつき)がロープウェイの駅に進入したときに、ばったりと現場をm喰激したのだ。
セミロングの後ろを縛った、小柄で華奢な少女の足元に、男の死体が倒れていた。
誰かは分かった。
この人工都市「露夢衣(ろむい)」の統治委員会委員、登賀宗(とがしゆう)だ。
少女は顔だけではなく、身体もゆっくりと壱樹に向き直った。
手に鉈をぶら下げながら。
壱樹は脳内で素早く相手を検索していた。
十代半ば見える相手の該当者は、無し。
こうなれば、証拠の一つも必要か。
持っていたスプレー缶にやや力を入れて、相手の動きを待った。
少女はニッコリと微笑んだかと思うと、また身体の向きを変えて、止まっていたロープウェイのゴンドラに載った。
人工都市の異常である「奇怪(きかい)」が出るというので、壱樹は深夜のまだ肌寒さが残るときに、来ていたのだ。
十七歳。白い髪の毛で細い体を、ロングジャケットとサルエルパンツにヒップバックという恰好でいた。
残されたかたちとなった壱樹は、緊張を解くと、登賀の死体に近寄る。
頭を一撃でやられていた。
どうして、こんなところに統治委員という露夢衣の支配者層の人間が一人でいたのか。
疑問を持ったと同時に、視界の端で死体の指先がピクリと動いた。
そして、腕がゆっくりと持ち上げる。
生きてはいない。確実に死体だ。
証拠に脳そのものがぐちゃぐちゃにされている。
ならば、理由は一つしかない。
「異常」だ。
すぐにスプレー缶で、死体の上に、都市外に放逐する文字を描く。
絶叫するようなうめき声が上がり、登賀の身体は床にゆっくりとめり込んでいった。
だが、次の瞬間、登賀の身体の中から、人のような形をした「木偶(でく)」が現れる。
素早く、壱樹の脇をすり抜け、木偶は駅の入口に走ってゆく。
舌打ちする。
壱樹は拳銃を抜き、木偶の背中に五発を撃ち込む。
電気が放電する光が瞬き、木偶はその場に崩れ落ちた。
「くっそ、失敗かよ!」
壱樹は悪態をついてから、大きく息を吐いた。
人工都市「露夢衣」の空には蜘蛛の巣のようにロープウェイが走っている。
住人たちは、メインシステムである露夢衣中枢に意識をリンクさせることにより、様々な情報にアクセスすることが出来るようになっていた。
ここは古くの宗教から楽園の再現とうたわれていた
人々にはもう露夢衣にしかない。人工都市が人生の全てだった。
露夢衣の北東部の一画には人工都市のあらゆるところに点在する、反古魅名のコミュニティがある。
その中でも異様を誇るのは、炭(たん)燈(とう)楼(ろう)という巨大に建て増しされ続けている閉鎖的な城址と言っていい建造物だった。
炭燈楼には、変わり者が多く、能力があるが完全に社会に適応できないタイプが集まっていた。
能力とは、「祇術(ぎじゆつ)」である。人工都市に干渉して様々な現象を起こすのだ。
ゆえに、露夢衣の奇怪や事件などの黒幕は炭燈楼の住人の仕業という噂が絶えず、人々から不気味がられている。
壱樹は、不機嫌そうに迷いなく入り、複雑な通路にバラバラに設置されているカーゴを五回乗り換えて、十二階までくる。
換気が悪く、薄暗い内部は、汚水が壁からしみ出し、騒音がそこら中から響き渡り、部屋すらない住民が通路であてもなく座ったり寝ていたりしている。
目的のドアを開けると、急に純白な空間が視界に広がった。
大き目の一戸建てにあるリビングのような広さだ。
白衣を着た小柄な少女が立っている周りに、空中に浮かぶ文字が檻と言っていいぐらいに浮かんでいる。
空中ディスプレイで、回りを囲んでいるのだ。
壱樹は、冷蔵庫から疑似ビールを取り出し、ともう一つだけの家具であるソファに座った。
少女がやっと気づいたらしく、壱樹にいやらしい笑みを浮かべる。
「失敗したらしいねぇ。あんなに余裕かましてたのにさぁ。ほら、泣き言ならきいてやるから、話してみなよ?」
陽慈璃(ひじり)は壱樹と同い歳。だが、背はかなり小さく、百四十センチしかない。ボブの髪の毛を紅く染め、首から腰のあたりまでの鎖で懐古時計をぶら下げ、黒いTシャツにプリーツスカート、軍靴という恰好だ。
表情はいつも相手を小ばかにするかのような冷笑を浮かべている。
見た目どうり、性格は悪い。
壱樹は疑似ビールを喉を鳴らしながら飲んで、息を吐く。
陽慈璃の半ば挑発な言い方に、上目使いで鼻を鳴らす。
無言で棒付きの飴を口に含むと、アルコール同位体と合わせて、脳がしびれるかのような感覚が来て、延髄から全身に冷たい感覚が走る。
「その飴、まだ使ってたのかい」
呆れられたようだが、壱樹は気にしない。
気にならない状態といったほうが正解か。
「いつも通りに依頼が来てな。ロープウェイそのものが最近、不思議な事ばかり起こるというので、守紀(もりき)駅を調べにいったんだが」
壱樹は続けて起こったことを全て話した。
「登賀かぁ。それは良いとして、その女の子が気になるね」
「こうは考えられないか? あのガキも登賀も奇怪が俺の脳内に作り上げた寄生記憶だって。なにしろ、登賀から木偶が出てきたんだぜ?」
ヘラヘラとした笑みのまま言う。
快楽物質を出す飴の影響だ。
木偶とは、古魅名を通さずに反抗組織が作り上げた露夢衣で活動する自動人形だ。
「困ったちゃんだなぁ、君は。ごまかそうとしても、失敗は失敗だよ。クライアントのロープウェイ会社も覗いたけど、また評価さがったみたいだねぇ。報酬はでないよ。奇怪を消そうとして、登賀を殺しちゃったんだからね」
壱樹は知ったことかと、軽く頭を振る。
陽慈璃は細い指を空中で躍らせて、文字列をどんどん回りで流してゆく。
壱樹の目の前にも文字が浮かんだ。
彼女が送って来たもので、ロープウェイでの事件が記事になったものだった。
そこには、登賀委員の暗殺事件が書かれていた。
「登賀は死んだとさ。都市外に放出したと言ってたけど、木偶は残った。どこかの誰かがやっぱり、登賀には消えてもらいたかったみたいだね」
「とばっちりだ。あのガキさえいなければなぁ」
憎々し気に吐き捨てる。
「僕も今調べてるけど、引っかからないなぁ。これは、本当に寄生記憶かもよ? よかったねぇ、壱樹」
嫌味に陽慈璃は笑む。
彼女の祇術は歳の割りに一級品だ。
人間ではないという噂がたつほどに。
陽慈璃に見つけられないと言われれば、壱樹には手がない。
疑似ビールを一気にあおって飲み干し、缶をそのまま床に置く。
少女は一瞬その動作を座った目で見たが何も言わなかった。
「登賀の方はどうなんだ?」
「ああ、そっちはねぇ、ちゃんと出生時刻から統治委員としての記録に穴がない」
「だよなぁ」
「うん。君は面識があったんだよね」
「だから、すぐにわかった」
「可能性としては登賀委員の、ダミーってところかな。ただ、君が奇怪の処理に向かった時に起こった事件というのが、妙なんだよね」
「そこな」
「君はまだあのコミュニティと関係あるんだろう?」
コミュニティとは、上級市民と下級市民に断絶された社会が、それぞれの思想・嗜好などで個人的に集まる閉鎖的な集団組織ネットワークである。
露夢衣に幾百もあるコミュニティの内の一つに、アマテウというものがある。
そこでは、都市犯罪の平和をうたい、犯罪者予備軍の情報を集め、監視するという集団だ。
壱樹はそこで、確定されてまだ刑事事件化されていない殺人鬼を狩る仕事を請け負っている。
「ああ」
陽慈璃は考える風になった。
「ところで、君はあそここそが、犯罪を生んでいるのではないかとか、殺人鬼という寄生記憶を植え付けられているんじゃないかとか思わないのかい?」
「その辺が面白いんじゃないかよ」
ヘラヘラと笑う。
陽慈璃は仕方がないという風に首をひねった。壱樹は意地になる性格なので、やんわりと行っても無駄かと思ったのだ。
「そういう陽慈璃だって、ひでぇもんじゃねぇかよ」
「何がだい?」
「自覚ないならいいけどな」
「自覚? 僕は別に純粋に研究をしているだけだ。そのためには、余計な感情をさしはさまない主義だけだけど?」
陽慈璃は鏡のような瞳で見つめて来て、口だけを歪めた。
心の奥底まで読まれているような視線だった。
「今、僕が人間規定値として君を測ったけど、損傷率は29%。暗殺者のくせに、って数値だけど、標準並みだ。ただ、どこがどれだけやられているか見ると、致命傷だよ。君は人間じゃないとこまで行く寸前だ」
電子タバコの煙をもうもうと吐く壱樹は無表情だった。
「かまわんね。問題ない。頼みがあるんだけど、登賀を調べておいてくれないか?」
「クローニングが必要なぐらいなんだけどねあー、そっちは頼まれなくともやるよ。これは面白い事例だから」
さすがは、人を人とも思わない祇術師のセリフだと思った。
「じゃあ今日は行くよ」
「次回来たといは、分解するからね」
彼が立ち上がると、さらりと言って少女はすぐに文字の檻の中の作業に集中した。
壱樹は気にせずに飴を舐めながら、しっかりとした足取りのくせに、だるそうな雰囲気丸出し炭燈楼の中から外に出た。
昼間だというのに、都市は薄暗く、代わりに電飾看板の群れが明かりを照らしている。
雑多な人々が往来して、にぎやかだ。
この人々のうち、どれだけが「本物」なのだろう?
ロープウェイから空を見ると、夜空の巨大な星が見える。
司天という者たちが使う装置でもある。
星からも解放された、人々とは?
そう思いながら、ロープウェイに乗って地区を離れた。
壱樹は東区のスラムに近い自分の事務所に戻った。
駅から続く高架歩道を進み、降りるとすぐに廃墟のような小さなレンガの外観をしたビルがある。
三階建て。すべて壱樹一人が間借りしている所だ。
事務所兼私室として、全フロアをつかってる。
すでに夕方である。
三階の私室に上がるとリビングで、ソファにどさりと座った。
飴は小さくなっているが、効力は続いていた。
壱樹は光を見たことがある。
そのなかでは、人が丸まって狭い球体の中に入っていた。
そんな球が幾億も空に散りばめられ、輝いていた。
露夢衣の人々は常に、巨大な何かを感じているという。
壱樹もだ。
ただ、それらが何なのかはわからない。
アマテウには、答えがありそうなのだ。
そんなことよりも、彼は今追っている連続殺人鬼がいる。
名前をアマテウではバタフライ・シーカーと名付けていた。
壱樹は部屋に戻ると、そのことで頭がいっぱいになる。
犯行手段はばらばら。同一犯だとわかる手がかりは、人間の規定値損傷率が70%未満のものばかりを、狙っているところだ。
普通に奇怪かと思われたが、アマテウの人間管理能力から見ると、同一犯だと確定がでているそうだ。
すでに、犠牲者は十四人という数になっている。一か月でだ。
連続殺人犯のパターンから言って、異常な数字である。
ふらふらと立ち上がり、シャワーを浴びると、部屋着に着替えてそのままベッドに倒れ込む。
まどろんだ意識は、いつもの魂がパッケージ化した夢を彼に見させる。
彼らは眠っているようで、閉鎖的な空間の中で好きな情報だけを取り、成長してゆく。決して、魂以外のモノにはならないのに。
乗り気ではなかった。
同じコミュニティの仲間とは言え、考え方が違う関係なのだ。
それでもリーダーは行ってこいという。
久宮(くく)はいつものチョーカーにロングパーカーを着てロングTシャツ、プリーツスカートという恰好で、男の横を歩いていた。
人々の往来が激しい中央区と南西部の境目にある芽倉(めぐら)市は、あらゆる組織やコミュニティからのからの空白地帯だ。
有名な屋台街でもある。
午後八時を過ぎて、小さな店の列には客たちがにぎやかに酒を飲み、食べ物を食べている。
「人多い。午前中に来たかったなぁ」
聞いて、隣を歩いている頭一個分大きな男は嘲笑した。
不思議な模様のお面を首から下げて、ロングカーディガンにタンクトップ、手首にはブレスレットを幾つもはめて、革のズボンに軍靴という恰好だ。
電子タバコを咥えて、時折煙を吐いている。
二十五歳。典馬(てんま)という名前であるぐらいにしか、この男の過去を久宮は知らない。
異様な雰囲気を持った男である。
暗くそれでいて、どこか妙な色気がある。
「多いから楽しいんじゃないか。人がいなければ意味ないだろう?」
「……あぁ、うん……うん」
久宮は何か言おうとしてやめた。
無駄なのだ。
「それよりな。おまえの逃げ道だが、ちゃんと造ったのか?」
「はぇ? 造ったよ?」
「そうか。チェックしてみたが、なんか怪しいぞ?」
典馬の言うことが分からず、久宮は小さく唸った。
それぞれに祇術で人工都市の空間をぶち抜いた逃走用空間を造ったのだが、どういうものか見られるとは思わなかった。
典馬は無言でマンホールの蓋を開けて、小さな四角いものを中に落とすと、元に戻した。
その場に立ち止まって、不気味に頬を釣り上げる。
「見ろよ。あの平和そうな顔を。楽しそうに歩いてる連中をよ。反吐が出る」
「歪んでるなぁ」
典馬は意外だとでも言いたいかのような顔をむけた。
「俺は人間が好きだよ。だが、ここの連中は人間じゃない。歪んでるのは、あいつらのほうだ」
憎々し気に言った割に、顔には嘲笑を浮かべている。
「そうなのね」
とりあえず、面倒くさいことになる前に納得して見せる。
リーダーの典馬評では、彼は誰よりも純粋だ。堕天使たち以上に、ということを思い出す。
露夢衣のどこかでひっそり暮らしている堕天使と呼ばれる連中は、人工都市の住民からは理想の存在と称えられている。
どうして、そんな連中以上なのか、久宮はわかる気がしている。
わかりたくもなかったが。
「さてと、準備はいいか?」
「何も、あたしは逃げるだけじゃん?」
軽く笑ってしまう。
「そうだな」
実質は典馬の護衛のようなものだが、ここまで来るとすでにその任は果たしたと言ってよい。
典馬は電子タバコをから煙を吐くと、ぶら下げら腕の先にある手の指を軽快に躍らせた。。
とたんに地響きが辺りで鳴る。
芽倉市の往来を行く人々が何事かと、首を振る。
次に大地が揺れた。
人々から不安の声が上がる。
典馬の背後から、金属とも言い難いものでできた、巨大な人型の頭部が地面から這い上がった。軋んだ音を立てながら、次に肩、そして手が上半身の腰まで這うような恰好で現れる。
まがまがしい瘴気を立ち上らせながら、巨大な口をゆっくりと開けるあいだに、全身から細かい破片が散るように落ちていた。
木偶、にしては巨大だ。奇怪と言っていいだろう。
人々は急に現れた家屋一つ分はあろうかという存在に唖然となった。
「ベルナ、やれ」
典馬が命じると、巨人は咆哮した。
地面に亀裂が走知ったかと思うと一気に陥没し、中から大爆発が起こった。
爆風や穴に飲み込まれる人々に、家屋や屋台が吹き飛び、炎に巻かれて、一帯は阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。
何とか逃げ出す人々が典馬たちの脇をすり抜けるが、その背後でも爆発と地面崩壊が起こる。 煙と炎に巻かれた中で、典馬は笑いを噛みしみていた。普通に笑うよりも、興奮の度合いが違うのだ。
逃げてきた若い男が、典馬の足元で転んだ。
「た、助けて……」
典馬は煙を吐いた。
容赦なく無言で、その顎を蹴り上げると、男は宙に浮き、そのまま道の亀裂の中に落ちていった。
彼の脇を、久宮は無言で突いた。
反応がない。
その代わり、目だけは向けてきた。
人が楽しんでいるのに、邪魔するなという非難の色を浮かべて。
「そろそろ、脱出しないと、ヤバいんじゃない?」
「ああ、俺はもう少しいる。おまえはさっさと行け」
「そうする」
遠慮なく答えた。
「気をつけろよ。おまえ、かなりドジだからな」
「うっさいな。ドジじゃないし」
珍しい優しい言葉に、つい多少むくれてやった。
久宮は腕を横に伸ばした。
指先の空間に波紋のようなものができる。
ロープウエイのワイヤーで網のように覆われた露夢衣の天上で星が一つ、輝くのが分かった。
空間が開いた。
久宮は中に飛び込んだ。
暗闇の通路は真っすぐ伸びるように造ってある。
彼女は、ゆっくりと前に進んだ。
真っすぐ?
半ばまで着た時何か、感覚が変だと思った。
次の瞬間には、見えない壁に顔面を強打していた。
しゃがんで痛みを我慢しながら、何故と疑問が頭をめぐる。
腕を伸ばし、空間を探る。
横に伸びる通路があった。
ひりひりする顔を手で抑えながら、そちらに進む。
それしか方法がないのだ。
やがて、とうとつに出口から露夢衣に出た。
そこは、凸凹な地面と崩れた家屋の廃墟と化した芽倉市中だった。
辺りには自警団の人々が防弾チョッキと軽機関銃などの完全装備でうろついている。
「……おい、いたぞ、あいつだ!!」
ウチ、一人が久宮を見て叫んだ。
一斉に、視線が集まる。
久宮は照れるような苦笑いした。
場違いである。
「あー、えと誰と間違ったのかなぁ?」
彼らは問答無用でそれぞれ遮蔽物の後ろに身を置いて、銃口を向けてきた。
「大人しく言うことを聞け! まず手を後ろに組んで、膝を付くんだ!!」
駄目なようだ。
久宮の表情がすぅっと、冷めていく。
上空の星が一つ、光った。
いきなり、久宮の姿が消えたかと思うと、一人の自警団がサブマシンガンを構える背後に立っていた。
容赦なく、引き抜いていた鉈を延髄に叩きこむ。
見ていた者たちは驚愕した。
慌てて狙いを定め直すが、その時にはすでに、別の男の背後に表れていて、鉈が横から首に振られていた。
自警団はパニックになった。
「こいつ、司天だぞ!!」
距離を超越した少女の動きに彼らは気づく。
露夢衣に祇術意外で干渉できる方法は、空に浮かぶ、巨大な五つの星を使うしかない。
人々は、彼らを司天と呼んで恐れる。
まったく、気にも留めず、久宮は次の犠牲者を出していた。
自警団は自棄になって銃を乱射するもの、逃げ出すものと、バラバラな行動を始めた。
久宮は、もういいかと思い、彼らから離れた場所に移動してから、思い切り走り出しだ。
つまり、逃げ出した。