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第30話 カチコミカチコミ申し上げますわ!



ロンロンを救出する為の手立てが整い、英気を養うために一晩の休息を挟んだ麗達。


そして夜が明け、決意の光を瞳に宿した竜の巣カチコミ隊(麗命名)は今、ゲートを開くのに最適化された部屋こといつものたまり場の部屋に集結していた。



「よし、間もなくゲートが開くぞ。覚悟は良いかの」



淫魔怪人インキュバスより情報徴収した竜の巣への行き方を下に、竜の巣へのゲートを開く直前の状態でコンコンは今一度メンバーへ振り返り、意思の確認をとる。


だがコンコンの問い掛けに対し、今更臆するような人物は誰一人としておらず……メンバーを代表する形で、麗が一歩前に出て胸を張りながら口を開く。



「愚問ですわコンコン!わたくしは元気いっぱい覚悟完了でしてよ!」



ぎらつくかのような決意と闘志に満ちているゴリラ、じゃなくて麗と仲間達の様子にコンコンは二ぃと獰猛な笑みを浮かべ、ゲートを開く為の最終手順を実行する。



「ゲート、開くぞ!飛び込むのじゃ!」


「よっしゃぁ!突撃……」


「なるべく静かに行けと言うたろうが」


「突撃でしてよー」



コンコンが合図を送ると同時に、魔法少女に変身したマジカルウララがバナナを前にしたゴリラのようにゲートへと突進。


その様子にコンコンは、騒ぐことで無駄な戦いを起こさないという打ち合わせじゃったろうが!と小声で怒鳴れば、マジカルウララは慌てて小声で気持ちこっそりとゲートへと突撃した。



「相変わらずだねーマジカルウララ、じゃぁ行こっか」


「うむ」



そんな後輩の姿にベテラン魔法少女、シューティングスターは苦笑いを浮かべながらも愛用の杖で肩をトントンと叩きながら、ガールズプリンセスのゼフィランサスと共にゲートを潜り。


彼女達を追う形でゼフィランサスの妹達も後に続く。



「コンコン様、行きますぞ」


「うむ」



そして最後に、ヒーロースーツに身を包んだ爺やことスターナイト・ブラックナイトと共にコンコンがゲートを潜り、全員が潜った事で開かれたゲートが閉じられる。


皆がゲートを潜った先の世界、そこは地球上どころか魔法の国でもあり得ないような光景が広がっていた。



「ほえぇー……ゼフィーさんゼフィーさん、こんな感じの光景って魔法の国だと当たり前だったりしますの?」


「いや、私も初めてだな。ここまでの光景を見たのは……」



目に付いた廃墟じみた残骸に身を隠しつつ、マジカルウララはその目に映る光景に思わずアホみたいに口を開きながら魔法の国出身である、ゼフィランサスへ問いかけるも。


問い掛けられたゼフィランサスもまた、むむむと軽く唸りながらマジカルウララの言葉に応じる。



彼女達の目の前に広がる光景、それは逆巻くように大気が渦巻く中で無数の瓦礫が空を舞うという光景であった。


時折大気の中を装飾が施された神殿の壁面のようなものが通り過ぎており、自分達が今身を隠している場所がかつては荘厳な建築で構成された事が窺い知れる。



「滅んだとは聞いておったが、ここまでの廃墟とはのう……」


「だけど、ドラゴンは結構あちこちに元気に飛んでるみたいなの」



その光景を前にコンコンは顎に小さな手を当てながら考え込み、目敏く周囲を警戒するように空を舞うドラゴン達をシューティングスターが指差した。



「どうやら我々がいるのは、中央から少しそれた浮島のようですね」


「そのようですわね、あの中心に見える場所に何かある気配しますわ」



周囲に見える光景と逆巻く大気の中心にある巨城の残骸、それらから総合して自分達が現在いる場所の位置関係を爺やが呟き、マジカルウララは何かがある予感を感じる巨城の残骸から目を離すことなく爺やの言葉に同意を示した。



「しかしどうしたものかのう、確かにこの場所なら例の淫魔怪人とやらがコソコソして盗掘するのには最適なんじゃろうけども……」



コンコンはそう呟きながら、こっそりと周囲や中心部へ向かうための経路の状況を改めて見回す。


現在コンコン達がいる場所は確かに監視の目が行き届いていない、警邏の死角に位置されるような場所にあるのだが、中心部へ向かうルートや大気が渦巻く中心部の付近には結構な数の竜が飛び交っているのが見えている。



「あの中心へ向かうには難儀過ぎるのー」


「そうだな、幾つか渡れそうな経路は見えるが……そこを通ればドラゴン達に察知されるのは間違いないだろう」



色とりどりかつ大小さまざまなサイズの竜達が暴れ狂う大気の中を飛び交う姿を見て、コンコンが呟けばゼフィランサスは頷いてその意見に応じる。



「しかしここで手をこまねいていても状況は好転しないな。サイサリス、デンドロビウム、ガーベラ……行けるか?」


「無論」


「おっけー!」


「相変わらず姉上は思い切りが良すぎるようで」



何かを決意したゼフィランサスが妹達へ振り返り声をかければ、彼女の意図を汲み取った妹達は思い思いの言葉を口にしながら強く頷いた。



「マジカルウララ、我々ガールズプリンセスで派手に陽動を行う。その隙に中心部へ駆け抜けられるか?」


「やれるかどうかじゃなく、やりますわ! でもゼフィランサスさん達は大丈夫ですの?」


「例の大怪獣に比べれば大したことは無い、それに空を自由に飛べる私達が適任だろう」



ゼフィランサスは妹達と共に機械じみた装備を展開しつつマジカルウララへ作戦を提案。


提案された作戦にマジカルウララは、確かに作戦としてはアリだが友人に危険があるのではないかと心配の声を上げるも、その様子にゼフィランサスは力強い笑みを浮かべながら友人の方を優しく叩いて声をかける。



「ここは私達に任せろ、マジカルウララは大事な家族を取り戻してこい」


「……ええ、わかりましたわ。感謝ですわ!」



ゼフィランサスからの力強いエールにマジカルウララは満面の笑みを浮かべて応じ、その様子にゼフィランサスは満足そうに頷くと4人そろって大空へと舞い上がる。


そしてわかりやすく空を飛び、存在を誇示する4つの人影に気が付いた竜達は咆哮を上げ仲間達に侵入者が現れた事を告げる。



「そうだ、こっちに向かってこい……!」



自分達に迫る竜の群れを目の当たりにしゼフィランサスは竦むどころか、闘志をむき出しにして向かい来る竜の群れの戦闘めがけ燐光による光の軌跡を描きながら突進していく。



「姉上に続くぞ!」



そしてそれはゼフィランサスの妹であり若干騎士かぶれの気があるサイサリスも同様で、下の妹二人はそんな姉の様子に若干引きながらも後に続いた。


そして始まったガールズプリンセス達と竜達の戦闘の様子に、竜達が陽動に引っかかった事を察するとマジカルウララは残った全員へ振り返り、宣言するように叫ぶ。



「よし、皆さま……行きますわ!」



その言葉にコンコンは頷いて見せるとマジカルウララの肩に振り落とされないようにしがみつき、シューティングスターとブラックナイトは弾丸どころか砲弾がごとき勢いで中心の巨城めがけて駆け出したマジカルウララに追従する。



決戦の時は、すぐそこにまで近づいていた。






【マスコットによる解説劇場~竜の巣について~】

「コンコンと」

「ポンポンの」

「「マスコット解説劇場~」」


「引き続きの出演、すまんのうポンポンや」

「大丈夫なの~、でも今回は何を説明するの~?」

「今回は、そうじゃなぁ……竜の巣について説明しようかの」

「ああ、あの崩れゆくファルムア」

「ストップじゃポンポン!それ以上言うのはまかりならぬ!!」


「でもそう言いたくなるの~、渦巻く大気に飛び交う瓦礫とかそのものずばりなの~」

「それについては否定せぬ、しかしそれにはしっかりとした理由があるのじゃよ」

「理由って何なの~?」

「あの大気は言ってみれば天然の要塞を構築する防壁であり、侵入者を刈り取る為の狩場なのじゃよ」

「物騒なの~」

「まぁグレートウォーで戦いによって巻き込まれた結果、歴史ある建造物の大半が瓦礫と化したらしいがのう」

「勿体ないの~」


「でもコンちゃん、気になるんだけどさ~。凄い立派な装飾や彫刻がされてるらしいけど~、誰がそんな細工を施したの~?」

「何でも手先が器用な竜達が暇つぶしにえっちらおっちら建築したり細工したりするらしい」

「まさかの暇つぶしの産物だったの~」


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