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第21話 訣別との再会



ロンロンの出生の秘密の手がかりを求め魔法の国の、ロンロンが育った孤児院へとやってきたマジカルウララ一行。


彼女達の目の前に現れた孤児院の院長、その姿は立派な顎髭を蓄えた老齢のゾウガメのような存在であった。



「そちらの方は魔法少女ですかな?いつもロンロンがお世話になっております」


「いえいえ!こちらこそお世話に……うん、お世話になっていますわ!」


「なんでちょっと言い淀んだのであるか」



ロンロンが亀爺ちゃんと呼んだゾウガメの言葉に、麗は我に返ると気持ち優雅っぽく頭を下げて挨拶を返す。


その際の麗の言葉にロンロンがジト目を向けるのもやむを得ないと言えよう。



「たまーに埋蔵金発掘とか言って失踪するのはどうかと思いますわ」


「ば、ばかウララ!亀爺ちゃんの前で言うのはダメなのである!」


「ロンロン、お前まだそんな事やっておるんか……」



しかし麗はロンロンのジト目と共に放たれた抗議の言葉を、こちらもロンロンへジト目を向けながら言葉を返せば、ロンロンは育ての親の前で暴露するんじゃあないと言わんばかりに慌てる。


そんな息子同然に育ててきたロンロンの様子に、亀の院長が大きな溜息を吐けばロンロンは気まずそうに呻いて黙るのであった。



「それにそちらは……お久しぶりですなコンコンさん、グレートウォーでの共闘以来ですかな?」


「どこぞで見た顔と思ったらお主であったか、久しいのう」


「え?コンさん、亀爺ちゃんの事知っていたのであるか?」


「グレートウォーの際に悪の組織の一派が魔法の国にまで攻め込んだ時があってのう、こやつは当時の防衛隊に努めておったのじゃ」



自身に呆れた目を向けていた亀院長が同僚のコンコンに懐かし気に語り掛ける様子にロンロン驚愕、慌ててコンコンに問いかけて返ってきた言葉にロンロンはビックリ仰天。


彼が知る亀爺ちゃんは荒事とは無縁の好々爺そのものだったのだから、その驚きも当然と言えよう。



「だから亀爺ちゃんが怒るとき、あんなにおっかなかったのであるか……」


「昔の話じゃわい、それよりもロンロンから急に里帰りすると聞いて驚いておりましたが……何か問題でも起きたのでしょうか?」



未成年ながらマスコット検定に合格し、孤児院を巣立っていった我が子のロンロン。


滅多に帰ってこない彼が、同僚と魔法少女を伴って帰って来た事に対して亀の院長は麗達にソファへ座るよう促しながら、自身もテーブルを挟んでソファの反対側にある座布団の上に座り込む。


更に亀の院長はテーブルの上にあるティーポットへ視線を向けると、ティーポットがふわりと吹き上がりどこからともなくふわふわ飛んできたティーカップに対して空中でお茶を注ぎ始める。



「?! コンコン!魔法ですわ!ファンタジーですわ!」




麗の乙女な好奇心が目の前で繰り広げられるおとぎ話のような光景に魅了され、コンコンに同意を求めるようにはしゃぐ。


子供に褒められて悪い気がしないのか、亀院長もノリノリでソーサーとカップを空中で踊るように舞わせ、しかしカップの中身は一滴たりとも外に飛び出すことなく麗達の前に置かれる。


しかしコンコンの様子は冷ややかなもので、苦笑いを浮かべながら口を開く。



「落ち着けウララ、お主は魔法少女じゃろうが」


「こういう素敵な魔法パワーなんてわたくしには無縁でしてよ!」


「哀れすぎるのである」



麗からの力強い返答に、そう言えばこやつビームも不思議パワーも殆ど使えないフィジカル特化じゃったわと思い出したコンコンは、そっと気まずそうに目を逸らした。


思わずロンロンが哀れむのも残念でもない当然の話である。

しかしロンロンは気を取り直すと、亀院長が淹れてくれたお茶で喉を潤して意を決すると口を開いた。



「亀爺ちゃん。爺ちゃんは我輩がこの孤児院に預けられた時、卵の状態で孤児院の前に放置されていたって言ったのであるな?」


「うむ、そう言うたのう」



ロンロンの真剣な感情が籠った言葉に、亀院長は顎髭を揺らして首を傾げながらとぼけた口調で反応を返す。


亀院長のその様子は麗から見ても明らかにとぼけているというのがわかる様子である為、麗が口を開こうとしたがそれよりも早くロンロンは言葉を続けた。



「亀爺ちゃん、本当の事を教えてほしいのである」



ロンロンの言葉に亀院長はぴたりととぼけた動きを止め、瞑目する。

部屋の中にある時計の動く音、孤児院の庭で走り回り遊ぶ子供達の声が外から聞こえてくる中ゆっくりと亀院長は目を開くと、重々しく口を開いた。



「真実と言うのは何も良い事ばかりだけではない、ロンロン……お前は卵で孤児院の前に放置されていた、それでは納得できぬか?」


「出来ないのである、最近我輩の故郷から来たと名乗る妖しい女がやってきて我輩を王子とか言っているのであるよ。手がかりがほしいのである」



好々爺とした声音とは打って変わり、重々しい口調でロンロンへ告げる亀院長の言葉にロンロンは戸惑いつつもはっきりと己の意志を伝える。


麗とコンコンが二人の会話の流れを見守る中、ゆっくりと亀院長は座布団から立ち上がると院長室の外へ向かうドアへ歩き始める。



「真実は時に残酷じゃ、それでもその真実を受け止める覚悟があるのなら……ついてきなさい」


「な、何を言い出すのであるか亀爺ちゃん!」


「御客人のお二人はここでお待ち下さい」




ロンロンが知るいつもの亀院長とは異なる様子に、ロンロンは戸惑いの声を上げる中亀院長はソファから立ち上がろうとしたコンコンと麗へ目線を送り、ここで待つよう告げると。


魔法の力でドアを開けて外へと出て行き、ロンロンは慌ててソファから飛び降りると見た目以上に足が速い亀院長の後を慌てて追いかける。



「ロンロン、大丈夫でしょうか……」


「わからん、じゃが待つしかあるまいて」



二人が出て行ったドアを見て心配そうに呟く麗、コンコンは溜息を吐きながら思った以上に大ごとになりそうな予感を感じていた。



一方、亀院長の後を慌てて追いかけたロンロンは孤児院の裏庭へと亀院長に案内されていた。


そして亀院長は裏庭の隅にある、小さくも良く手入れされた石碑の前で足を止めるとゆっくりと口を開き始める。



「ロンロン、この下には……お前の卵を抱え、瀕死の重症を負いながら孤児院の前までたどり着いた女性……お前の母親が眠っておる」



亀院長の静かな言葉、その言葉はロンロンの心を激しく打ちのめすものであった。





【マスコット達による解説劇場~ロンロンについて~】

「コンコンの」

「マスコット解説劇場―」


「19回目の解説じゃが、ロン坊が亀のヤツについていって離席しておるから今回は儂だけでお送りさせてもらうのじゃよ」

「と言っても何を説明したモノかといったところじゃが、今回はロンロンとの出会いについてでも説明するかのう」


「儂があやつと出会ったのは、ウララと契約を結ぶために偶然鉢合わせたのが始まりじゃった」

「その時は随分すっとぼけた若僧だと思ったものじゃ」

「儂が一足先にウララと契約を交わした際、『ワンチャンあるかもしれないから我輩も契約したいのである、なんかイケる気がするのである』とか抜かす上、ウララも乗り気じゃったから見守っておったんじゃがな……」

「まさか成功させるとは思わなんだわ、その結果ウララの特性がフィジカル特化になったのはもはや笑える話と言えよう」


「それからはまぁ、同僚として共に過ごしておったが……今思えばアヤツは家族と言うモノに対して、かなり強めの感情を見せる事が多々あったのう」

「あのいけ好かないドクロ怪人の時も、普段は前に出ず応援ばっかりしているロン坊が自らの意志で戦いに参加した辺りも含め、もしかするとアヤツは自身が思っている以上に家族と言うものに憧憬を抱いておるのやもしれぬなぁ」

「それはウララのヤツも変わらんと言えるが、なんでこう若いモノばかり苦労せにゃならんのじゃろうなぁ……」




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