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第19話 そうだ、魔法の国行こう



朝陽が町を照らしセミが喧しい鳴き声を上げる夏の朝。


いつもマスコット達が待機している部屋に集まった麗とコンコン、そしてロンロンは三者三様の表情を浮かべていた。


麗はこれから始めていく魔法の国やロンロンが世話になった孤児院がどんな場所か、ワクワクを隠せない表情をして言葉を紡ぐ。



「よし、準備完了ですわ!ロンロン、魔法の国へのゲートを開いて下さいまし!」


「とほほ……あらほらさっさーなのである」



昨晩こっそりと一人で孤児院に帰り自身の出生について聞きに行こうとしたが失敗したロンロンは、溜息を吐きながら憂鬱そうな顔をしつつも麗の指示で素直にゲートを開く。


そんなロンロンの様子を見て、ロンロンがいつもの調子になっているのをどこかホッとした様子を見せているコンコンは、何も言わずゆらりとふわふわした尻尾を振っていた。



「むにゃむにゃ……ゲート経路と座標固定省略、開くのであるー」


「おー!凄いですわー!」


「おい待てロン坊、今お主何をした?」



何やら不思議な踊りのような動きをロンロンがすると、呪文を唱えるとか特にすることなく麗が潜れるぐらいの大きさをした楕円状の、極彩色に輝く魔法のゲートを作り出す。


麗がそんな不思議過ぎるゲートに目を輝かせて歓声を上げる中、コンコンはお前マジかと言わんばかりの顔をしてロンロンへ視線を送る。


そんな視線を送られたロンロンはと言えば。



「え? 我輩何かやっちゃったであるか?」


「何かも何も、魔法ゲートを作り出すときはきちんと座標指定と固定が必要じゃろうが!省略なんぞしたら下手すると異次元に放り出されるぞ!」


「え?魔法のゲートってそんな恐ろしいものでしたの!?」



コンコンの言葉に対してすっとぼけた表情をしているロンロンに、コンコンは尻尾を逆立たせながら怒鳴る。


当然と言えば当然なのだが、地球と魔法の国は文字通り次元が違う異世界の関係にある。

そのような世界通しを繋げるゲートを作り出す際には、それはもう大変な手順が存在するのだ。



「あのー、魔法のゲートってそんな開くの大変ですの?」


「大変じゃぞ、まず現在地の座標取得をした上で飛ぶ先の状況を確認。安全性の確認が取れた時点でゲートを開く経路の確認と固定、そこから飛ぶ先のゲートを開き固定した上でじゃな……」


「コンコン、三行で説明してほしいですわ!!」


「安全確認が大事

ルートと座標固定大事

そうしないと変な所に繋がる、と言ったところじゃ」


「凄くわかりやすいですわ!」



コンコンが訥々と解説しだした内容に対し、麗は途中から理解することを放棄すると勢いよく挙手して簡単な説明をコンコンに求め、コンコンは溜息を吐きながら麗が求める簡単説明を施した。



「いやコンさん、我輩も危険性理解しているであるよ?」


「明らかに手順幾つもすっ飛ばしとったじゃろがい」


「現在地の座標固定はもうこの部屋に刻印打って済ましてあるのである、経路固定と座標固定だって処理を高速化すれば楽勝なのであるよ?」



何言っているのであるか?と首を傾げてコンコンに言い返すロンロンの様子に、コンコンは頭痛を堪えるように頭を抱えた。

その様子はロンロンが無自覚に高次元な事をやっているという事実の頭痛以外に、何かを理解してしまった様子も見えていた。



「あの、コンコン。ロンロンが何かやらかしましての? 出発前にお仕置きタイムですの?」


「これでお仕置きは我輩理不尽だと思うのである!」


「いや、違うんじゃ……今、色々と地味に抱えていた疑問が解決したことによる頭痛じゃ」



これからロンロンがお世話になった孤児院に行くという、重大なタスクが無ければ寝床に戻って寝直したいぐらいの気持ちをこらえつつ、コンコンは呟く。



「のうウララ、マスコットを従えるタイプの魔法少女の強みは知っておるかの?」


「へ? ええ、存じておりますわ!魔法少女側の素質とは別に、契約を結ぶマスコットからも力を一部受け取るんですわよね?」


「うむ、そしてそれはお主との契約についても同じじゃ、しかしのう……」


「何か問題があったんですの?」



自身の眉間を揉み解しながら言い淀むコンコンの様子に、麗は不思議そうな表情を浮かべる。


何か問題があるとしても、今まで特に不具合があったわけじゃないから麗はコンコンが言い淀む理由に思い至れず、不思議そうにするしかない。



「不安にさせてすまんのう、お主の魔法少女パワーが規格外なのは儂は今さっきまで……契約をダブルブッキング出来てしまうぐらい、お主の魔法少女素質が凄まじいからと思っておったのじゃ」



唐突に始まったコンコン空の解説に、麗は頭にハテナを浮かべて首を傾げつつもコンコンの問い掛けに答える。

一方ロンロンは、女子は何事もお出かけに時間がかかるのであるなーなどと思いつつ部屋に備えられたクッキーをポリポリかじっていた。



「勿論それもある、むしろウララの素質は正真正銘の規格外じゃ」


「まさに規格外のゴリラであるな」


「吊るしますわよ?ロンロン」



自身の言葉を噛みしめるようにコンコンが呟くと、その内容を茶化すようにロンロンが告げた内容に麗がこめかみを引くつかせながらロンロンの首根っこを掴んで持ち上げる。


このまま、最近手触りが癖になってきているロンロンのもちもちしたお腹をぺしぺし叩いてやろうか、などと麗が考えているとコンコンが顔を上げてロンロン臍の視線を向ける。



「しかし、ウララが真の規格外となった原因、それはロン坊じゃ」


「我輩、何かしちゃったのであるか?」



麗に首根っこを掴まれたままおとなしくしてるロンロンがすっとぼけた事を言う、地味に背中の小さな羽をパタパタさせて逃げようとしているが、頑張ってもホバリングしかできない程度の羽ではゴリラの手から逃げる事は不可能であった。



「お主、マスコット検定の時にパワー測定したじゃろ?その結果どうじゃった?」


「ああ、そう言えば我輩のパワーがとんでもないって騒ぎになったりしたのである」


「こ、こやつ自分のトンチキ具合に無頓着過ぎる……!」



ソレが何か問題であるか?と言わんばかりのロンロンの様子にコンコンは頭を抱えた。



「コレはロンロンが世話になったという、孤児院の院長にも詳しく話を聞かねばならぬのう。確認する事が雪だるま式に増えていくわい……」


「大丈夫ですの?」


「大丈夫じゃ、その辺りはこっちで引き受けるからウララはこやつが逃げたりせんようとっ捕まえておいてほしいのじゃ」


「良くわからないけどわかりましたわ!」


「我輩の自由が行方不明なのである」



ともあれ話はまとまり、一人と2名のマスコットは今世界を渡る極彩色のゲートをゆっくりと潜る。


そして。



「き、きぼぢわるいでずわぁ~~~……」


「慣れないと魔法ゲート移動は大変なの、言い忘れていたのである」


「このタワケ!!」



麗は初めて行った魔法の国で知った事は、魔法の国の公衆トイレはとてもキレイで人間サイズでも使えるよう配慮されているという、知りたくも無かった事実であった。





【マスコット達による解説劇場~魔法少女とマスコットの相関性~】

「ロンロンの」

「マスコット解説劇場―」


「ウララがトイレと仲良く語り合っている間、17回目の解説を始めるのである」

「ちなみにコンさんはウララの付き添いで欠席なのである」

「なので今回はさくっと説明するのであるよ」


「魔法少女には色んな種類あるって前に話したと思うのであるが、そこのおさらいからなのである」

「まず道具で変身するタイプはシンプルであるな、己と道具だけで戦うタイプなのである。道具の適性とかは色々あるけど、一番取り回しが良い魔法少女タイプなのである」

「変身解除タイプ魔法少女も道具変身タイプに近いであるが、出身地で得意な事がガラッと変わるのである。でも総じて特化したタイプが多いであるなー」


「そんでもってウララみたいに、我輩たちマスコットと契約する魔法少女であるがー……」

「これも契約するマスコットと魔法少女本人の素質で凄まじく振れ幅があるのである、ダブルブッキングできたウララなんてまさに振れ幅の極点であるな」

「でも普通ダブルブッキングなんて、不可能なのであるけどなぁ……我輩もコンさんもしっかり契約結べているし、ウララに魔力やらパワーを融通するパス経路は間違いなく繋がっているのである」


「多分ゴリラ、じゃなくてウララが規格外なのであろうなー。ほんととんでもない魔法少女なのである」



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