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第17話 タチの悪いどっきりであるか?!byロンロン

マジカルゴリラ、じゃなくてマジカルウララが完全復活を宣言した日に怪人出現の報告を聞いたマジカルウララは意気揚々と現場である桜塚市郊外の自然公園へマスコット達と共に向かう。


そして現場に駆け付けたウララ達が見たモノ、それは。


薄絹のようなローブを身に纏った女性のようでありつつも、頭から生えた一対の捻れた角と背中から生えたロンロンが持っている羽にも似た立派な翼。


そして鱗に包まれた長大な尻尾を持つ異様な外見をした女怪人であった。



「今までお相手してきた怪人達とは、明らかに雰囲気違いますわね」



淫魔怪人に代表されるように人間に近い見た目をした怪人をマジカルウララは見てきており、外見からそのような事を述べたわけではない。


ならば何故マジカルウララがそのような感想を漏らしたのか。

それは、今まで出現した怪人と言うのは大体が周囲に対して何かしらの行動でアプローチを開始してきたという違和感が原因である。


今、マジカルウララの視線の先にいる竜女怪人はこの場に出現しておきながら、周囲のどよめきも自身に降り注ぐ視線もまるでどうでも良いモノだとばかりに振る舞っている、それが彼女にはとても不気味に思えていた。



「コンさん、年の功的に心当たりないであるか?」


「しばき倒すぞ小僧、しかし言われてみれば覚えがあるようなないような……」



自然公園の中央にある噴水の縁に腰掛け、特に暴れる様子もなく瞑目しているどこか彫刻めいた美しさを持つ竜女怪人に対し今までと比べて明らかに何かが違うと麗は感じながら、じりじりと距離を詰める。


一方ロンロンはコンコンに対して何か情報ないか確認するが、コンコンもまた思い出せそうで思い出せないと言った様子のようだ。



「あの、一つ確認よろしいですの?」



とりあえず一般通過系無害怪人を問答無用でしばき倒すのはマジカルウララの流儀に反する為、噴水の縁に座り瞳を閉じている竜女怪人へ麗は話しかける。


竜女怪人は麗の言葉に閉じていた瞼を開いて視線だけを麗に向け、麗の足元にいるロンロンにその瞳を大きく見開く。



「あのー、もしもーし。聞こえてますのー?」



一方マジカルウララは反応を示してくれたことにホっとしつつ応答がない竜女怪人に再度呼びかける。

しかし次の瞬間竜女怪人が無言のまま立ち上がるのを見ると、即座に構え臨戦態勢を取る。


そして飛び掛かるように走り出した竜女怪人、その様相にやはり敵でしたわね!とマジカルウララは拳を握りしめて迎撃の構えを取る、しかし。



「生きておられたのですね!王子!!」


「ぬわー!なのであるー!」


「へ?」



竜女怪人はマジカルウララをスルーし、彼女の足元でのほほんとしていたロンロンに飛びつくように抱き着いた。


突然王子と呼ばれた上に抱き着かれたロンロンは、まるで鳩がショットガンを撃たれたかのような顔が驚きビビり散らかしている。


ついでに盛大にスルーされる形になったマジカルウララはファイティングポーズの構えを取ったまま、状況についていけず目が点になっていた。



「あ、あのー……ちょっとよろしくて?」


「王子!王子!」


「タンマ!タンマなのである!まずはウララの話を聞いてほしいのである!」



状況についていけないどころか、全力で置いてけぼりになっているウララはロンロンを抱きしめる竜女怪人に目が点になったまま呼びかける。


しかし呼びかけられた竜女怪人はウララの呼びかけを明らかに無視し、ロンロンを王子と呼び感極まった様子を隠そうとしておらず、とりあえずロンロンは竜女怪人にまずはウララの話を聞いてほしいと懇願した。



「王子のご命令ならば、そちらの人間の雌の言葉に耳を傾けましょう」


「こ、この怪人慇懃無礼にもほどがありますわね……!」



今まで相対し屠ってきた怪人共とは、明らかにタイプが違う竜女怪人の様子にマジカルウララは困惑しながら、とりあえず竜女怪人の腕の中からロンロンを奪還するため……。


マジカルウララは竜女怪人の腕の中から逃れる為にじたばたもがいている、ロンロンの両腕と掴むと勢いよく引っ張り始めた。



「王子を人間の雌程度が触ろうなど、不敬よ」


「藪から棒に何言ってやがりますの、ロンロンはうちの子ですわ!」


「あいだだだだ!伸びる!我輩の胴体伸びるのである!!」



突如腕の中のロンロンを奪われそうになった竜女怪人は不快さを隠すことなく、マジカルウララをその切れ長の目で睨みつける。


そして腕の中のロンロンを奪われまいと、マジカルウララに引っ張られた勢いですっぽ抜けそうになったロンロンの足を掴んで力を籠めた。


無論マジカルウララもまた、竜女怪人の腕の中からロンロンを奪還するために負けじと腕に力を込めてロンロンの両腕を引っ張る。


その結果双方向に引っ張られる羽目になった哀れなロンロンは、悲鳴を上げながら抗議を上げるのであった。



「Oh、オオオカサバキー!」


「アホ言ってないで逃げるぞトム!」



そんなロンロンの有様を遠巻きに見物していた一般市民、海外からの観光客と思しき青年がトンチキな事を言い出し、彼の友人と思われる日本人の青年がその腕を引っ張って避難をしたりしている。



「ぐぎぎ、ロンロン!気合と根性ですわ!」


「やっと見つけた王子、もう離しません!」


「もうちょっと我輩の事も考慮してほしいのであるー!助けてコンさん!」



ロンロンの体で綱引きをするかのような状態になったマジカルウララと竜女怪人、尋常じゃないパワーで双方向から引っ張られる紐とかしたロンロンは、何かを思い出そうとしてうんうん唸っているコンコンに半泣きで助けを求める。


ロンロンの叫びに漸く思考への没頭から返ってきたコンコンは一目見て状況を大体把握すると、思い溜息を吐いて自らの尻尾をごそごそとまさぐり、まるで手りゅう弾のような物体を取り出す。



「ロン坊、耳……は塞げんじゃろうがとりあえず目は瞑っておれ」


「待ってコンさん、何それ絶対ヤバイヤツなのである!?」


「安心せい、殺傷力はないわい」



コンコンが小さな手に持っているその物体にロンロンは引っ張られて身じろぎも出来ない状態ながら、嫌な予感を隠すことなくコンコンへ慌てふためいた様子で物体について問いかける。


コンコンはそんなロンロンの訴えに対し、怪我するようなもんじゃないから安心せい。などと言い放つと手りゅう弾のピンを抜くと……ロンロン綱引き大会が繰り広げられている中心へ向けて放り投げた。


そして地面に落ちたソレがカツンと音を立て、ロンロンを引っ張り合っていたマジカルウララと竜女怪人が音を立てたソレに目を向けた瞬間、閃光と共に手りゅう弾が爆発。



「Oh!ステイツのパピーみたいね、あのFOX!」


「流石マジカルゴリラのマスコット、まともじゃないにも程があるぜ……!」



そんな無常すぎる強制鎮圧を安全な場所から眺めていた市民が歓声や戦慄の声を上げる中、コンコンは轟音と閃光で地面に倒れ伏すマジカルウララと竜女怪人を尻目に、地面に落ちて倒れたロンロンをぺちぺちと小さな手で叩いて起こす。



「よし、生きておるかロン坊」


「み、耳がキーーンとしているのである……さっきの何であるか?」


「マジカルチェーンソーを作った友人の作品じゃ、マジカルフラッシュグレネードというらしいのう」


「それもうマジカルでも何でもないと思うのである!」



思った以上に手段を選ばなかったコンコンの行動に、お礼を言ってよいのかロンロンは若干迷いながらよろよろとその体を起こすと、一拍遅れてマジカルウララと竜女怪人も立ち上がる。



「ようやっと思い出したわ、そこのお主。竜の巣出身の雌竜であろう?」


「……ええ、その通りよ」


「竜の巣、なんですの?それ」



感覚器が人間に比べ敏感なのか竜女怪人はコンコンに一際強い警戒を向けつつ、コンコンの質問に答え、聞いた事のない竜の巣という単語にマジカルウララは頭の上にはてなを浮かべながら首を傾げる。



「儂も詳しくは把握しておらぬ、グレートウォー以前から在った異次元にある領域であり……グレートウォーの最中に滅んだ、それぐらいしか知らぬがの」


「……竜の巣は滅んでなんか、いないわ」


「お主が今ここにいるという事は、そうなのじゃろうな」



コンコンがマジカルウララに説明した内容に、竜女怪人は心の底から不快そうな表情でコンコンが説明した内容に異議を申し立てる。


だがしかしそれ以上の情報を話す事はなく、これは難物じゃわいとコンコンは肩を竦め溜息を吐くのであった。



「ともあれ……一旦この場は儂が仕切らせてもらうのじゃ、まずはそうじゃのう。そこの未だに避難していない商魂たくましいクレープ屋にでも行くことを提案させてもらうのじゃよ」


「あのクレープ屋さんも怪人襲撃に慣れたのか逃げなくなりましたわよね……ええ、わたくしはそれで構いませんわ」


「……いいでしょう、さぁ王子。お手を」


「いや、アンタは何か怖いから遠慮するのである」



そんな事を話しながら、魔法少女とマスコットと怪人と言う珍奇な一団は自然公園で店を出し続けるガッツのあるクレープ屋へと向かうのであった。


尚、状況をこっそりと店の陰から見守っていた現在クレープ屋でバイト中の淫魔怪人(人間擬態済み)は彼女達の会話の内容に、嘘だろお前と冷や汗を流したのは言うまでもない。





【マスコット達による解説劇場~コンコンの不思議な尻尾について~】

「コンコンと」

「ロンロンの」

「「マスコット解説劇場―」」


「今回マジで酷い目に遭ったのであるけども、15回目の解説劇場を始めるのである」

「大変じゃのう、ロン坊」

「いやコンさんが投げたマジカルフラッシュグレネードも大概だったのである、助かったのは事実だけど!」


「と言うかコンさん、さっき投げたグレネードもそうであるがマジカルチェーンソーとかまで格納できるその尻尾、マジでどうなっているのであるか?」

「マスコット魔法の不思議ポケットの応用の一環じゃよ、お主だって不思議ポケットにマスコット免許やらなんやら仕舞っておるじゃろう?」

「普通は手提げかばんぐらいの容量なのである、グレネードは百歩譲って入るにしてもチェーンソーは無理なのである」

「そこはそれ、経験と技術の蓄積ってやつじゃよ」

「いや不思議ポケットの容量拡張って、並外れた難易度が必要なのであるが……これ以上突っ込むと藪蛇になりそうだから、やめておくのである」

「賢明じゃのう」


「コンさんの尻尾が不思議ポケット直結なのは理解したのであるが、実際どのぐらい入るのであるか?」

「コツコツ拡張しておるからのう、儂も正直よくわかっておらぬわ」

「大丈夫であるか?100年単位で閉まったまま存在忘れているモノとかあったりしないであるか?」

「お主、儂をなんじゃと思っておる」



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