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㊹無人島生活9日目02■ イベント始まるかと思ったら既に終わってた件。ぽよ。

 私は朝ごはんを終えた後、コニングとサンディ倉庫へ行った。


 コニングは、ドミニクスのこともあるし、ついでに整理を手伝ってくれるそうだ。

 本当はドミニクスについていて欲しかったんだけど、ドミニクスが嫌がってどっかへ逃げた。


 ミーシャは、ハーマンと船のことで話し合うそうだ。

 ハーマンは、彼の領地が海に面してたから造船所があり、多少の知識は幼い頃から叩き込まれていたらしい。


 いよいよ船作るんだなぁ。


「きゅぅ」


 コンちゃんがついて回ってくる。

 かわいい。

 この子がいると、ミーシャも傍にいるような気がする。

 コンちゃんの目を通して、たまにこちらを視てるかもしれないから、傍にいるっちゃ傍にいるのかもしれないけど。


「コンちゃん、倉庫はごちゃごちゃしてるから、危ないよ。いても良いけど気をつけてね」


 コンちゃんの頭を撫でる。


「きゅ」


 多分、返事な気がする。


「可愛い」

「可愛いですね」


 思わずコニングと代わる代わる愛でてしまう。

 おっといけない、倉庫整理倉庫整理。


「服が多いなあ。……あとこんなに化粧品買って使い切れないだろうに。あとバッグ? に靴か」


「それにしても、彼女はどうしてこんな空間を作り上げ、しかもとんでもないアイテムばかり所持していたのでしょうか。ミーシャ殿下もドミニクス殿下にも、一度進言したのですが二人共ゴリオの巣に放り込んだままでいいだろうって……国につれて帰るべきではないかと僕は思ったりするわけですが」


 ははは! コニング! それは長生きできない考えだよ!!


「うーん、ドミニクス殿下はともかく。神鳥がミーシャにそう言わないのならこのままが良いんじゃないかな」


「あ、そうですね。必要なら神鳥からお言葉がありそうです。……それにしても不思議だ。彼女は聖女ではなく錬金術しか魔女だったのでは、と思ってしまう。その割には知性が伴ってもいないような……」


「まあ! 考えてもしょうがないよ!」

「んー……まあ、そうですね」


 コニングは頭を切り替えたのか、作業に戻った。 

 ふぅ。コニングは知りたがり屋さんだなあ!



 それにしても、サンディ、着飾る系の課金に容赦なく金払ってるなぁ……。

 これは前世でも、めちゃくちゃ買い物してそう。

 前世はお金持ちだったんだろうなぁ。


「倉庫のほうは、トンデモアイテムはなさそうですね。ドミニクス殿下はどこを漁ったんでしょう……あ、デスクかな。例のスイッチもデスクの引き出しにありましたし」


 あー、確かに。

 私も課金アイテム買うならデスク座って吟味しそう。

 そして入るものはそのまま、スッとデスクの引き出しにいれるだろう。


 デスクはくつろぎスペースの方に置いてある。私達はそちらへ移動した。


 白を基調とした可愛らしいデスク。その上にはゆるキャラぬいぐるみやら、可愛い文房具、そしてボトルシップが置いてあった。


「意外ね。ボトルシップとか飾りそうな性格に見えなかったのに」


 私はボトルシップを手に取った。


「良い出来ですね。僕も一度、チャレンジしてみたいんですけど」

「コニングは細かい作業好きそうだねぇ」

「細かい、というか工作は結構好きなんですよ」

「へぇー……」


 ミーシャと気が合いそうだなこの子。


「あれ、船の下側に……」


 日本語で表記がある。


 『アイテムNO.97 ――サンディ号』

 『使用方法:海に浮かべてください。戻す時は降りてから梯子についた赤いボタンを押してください』


「……」


 ……これって。

 私はドキドキした。

 課金アイテムの船ってことだよね。

 この見た目のままだと、結構豪華な船だぞこれ。


 しかも、課金アイテムっていうことは、かなり安全な船なのでは?

 これがあれば、王都へも楽々と帰れそうな気がする。

 あとで海へ持って行ってみよう。


「指輪のメモはどこでしょうね」


 コニングが机の引き出しを開ける。

 中はもうスカスカだったので紙はすぐ見つかった。


「アナスタシア様、これだと思うのですが、読めます?」

「えー、なになに。……『闇落ちの指輪』 ……。」



「「嫌な予感しかしない!!」」


 私とコニングは叫んだ。

 コンちゃんがビクっとした。


 ああ、ごめんね、びっくりしたね、とコニングがコンちゃんを抱き上げる。


「ドミニクスルート用……」


 これ、ドミニクス用だったんだ。へえー。

 偶然にも本人の手に渡ったわけか。


「ルート?」

「あ、えっと。ようはドミニクス殿下に使うってメモがね」


 おおう、言葉に気をつけないと。


「彼の心の闇を吸収した指輪が真っ黒になった時、その闇が増大し、ダークサイドに堕ち、凶鳥が召喚される……」

「ん~……ドミニクス殿下、元から闇落ちしてません?」


 結構言うな! コニング!


「たしかにそうだけども!! というか凶鳥? 凶鳥ってあの凶事を呼ぶ神鳥の真反対の性能のヤバイやつ?」

「ヤバイですよ! そんなの連れて王都帰ったらドミニクス殿下、処刑されちゃいますよ!! 指輪、なにがなんでも外さないと!!」


「しかし、朝とれなかったよね……えっと、続きがまだあるよ。……えーっと……彼をダークサイドから愛によって救い出した時に、ドミニクスは覚醒し、凶鳥は改めて神鳥となる……」


 ――そして課金のみの特別ルートを選択可能。

 ――闇落ち彼氏が溺愛してくる件……。


「ごふっ!」


 私は白目をむいた。

 どこから突っ込めば良い!?

 まず、闇落ちしたまま神鳥連れてる王族なんて聞いた事ねぇよ!?

 ダークキングにでもするつもりか!


 あれか、ドミニクスは本来神鳥を得て、まっとうな王様になるルートがあるけれど、それまでの闇落ち状態のドミニクスが良いファンのために作られたアイテムか!? ひょっとして、だけど。



「なにが書いてあるっていうんですか!? あ、でも。闇落ちはともかく、ドミニクス殿下が神鳥を得られるなら、まったく悪いアイテムってわけでもないんじゃないですか?」


 いや、闇落ちは、ともかくにしちゃいけないよ!? コニング!


「確かにね……あ、ちょっとまって。読み飛ばしてた。……指輪をはめた人間を溺愛する……」


 あれ?


「……殿下、ご自分ではめてましたよね」

「え、これどうなるの!?」

「わかりません!?」



 ――その時。


「……アナスタシア」


 背後からドミニクスの声が聞こえた。


 私とコニングが恐る恐る振り返るとそこには。



「ぽよ……」


 肩に小さな白い雛鳥を乗っけたドミニクスが立っていた。


 ぽよ!?



「見てくれ、アナスタシア。オレにも神鳥が現れた……」

「ぽよ……」


 ぽ、ぽよ……。

 白くて丸いシマエナガのような可愛いヤツがドミニクスの肩で首をかしげる。


「「可愛ぇえ!?」」


 コニングと私が同時に声をあげる。

 なんかフワフワしてコロコロしてる……。

 正直言うと、ちょっと触らせてほしい。


 というか、知らない所で既に凶鳥イベント終わってるやん!!


「可愛いだろう。生まれたばかりだからな……」


 ドミニクスが愛でるように雛神鳥を見る。


 え、そんな顔、できたんですね……。


「コニング、少しアナスタシアを借りるぞ」

「え?」

「アナスタシア、頼む、ちょっと来てくれ」

「え、なに、ちょっと待っ……」


 コニングが聞き返す間もなく、ドミニクスは私を連れて、闇テレポートした……けど。


 今、『頼む』って言った!? ドミニクスだよね!?

 なんか瞳が綺麗ですよ!? 映画の方から来られた方ですか!?


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