夕食、 私はコシヒカリの袋を開けた!
ふふふ! 魚沼産って書いてあるぜ! 最高!!
土鍋の絵を書いて、ミーシャにそれっぽいものを作ってもらった。
サンディの炊飯器があったので、それに米と水を入れて、前世で大体これくらいで炊いてた! みたいな比率を目分量でいれた。適当適当。
固く炊けるか柔らかく炊けるかわからないけど、まあどっちだとしても食べれない事ないでしょ!!
私は固い米も柔らかい米も、雑炊も大好きだ。
「お……。いい感じに炊けた!」
お米がキラキラしてるぅー! ひゃっほう!
この世界にも米はあるが、やはり日本の米ほどには、美味しく感じられない。
「美味しそうだね」
近くで別の調理をしていたミーシャが言う。
私とハーマンがキッチンに立とうとしたところ、今日はミーシャがご飯を作りたい、と言い出した。
なので私と一緒にスープを作ったり、サラダ作ったりしてる。
「うん! 炊きたてを食べたいけど、今日はおにぎりにする!」
「ふふ。目がキラキラしてるよ、アーシャ。……おにぎりってさっきも言ってたけど、ライスボールのこと?」
「ああ、うん。そうだよー」
「たまに変わった言葉出るよね、アーシャ」
ぎく。
そういえばさっきのアレしないと出れない部屋の看板も日本語だったっけ。
みんな忘れてそうだから良かったものの。
「さっきの部屋の看板の文字、何語なの?」
覚えてた!! さすがミーシャ。
うーん、捏造した言語を言ったところで、意味ないだろうしなあ。
「ニホンゴ、だよ。この間のユカタも、ニホンって国のものなの」
「そんな国があるんだね。……世界の国々は記憶してたはずなんだけど、憶えがない国だなぁ。王宮に帰ったら図書館で調べてみたいな」
出た。お勉強好き。
私はその後、塩おにぎりを人数分作って各々の皿に並べた。
その他、ミーシャと作ったサラダとスープ、そしてサンディの冷蔵庫に入ってたフランクフルトとハムだ。
豪華じゃーん。
コンちゃんが、ヒロインベッドを気に入ってて、倉庫に棲み着きそう。
前にコンちゃんにあげたクッションを咥えてずっと持ち歩いてるのも可愛い……。
歓迎の意をこめて、コンちゃんにも食事を用意した。
「きゅ。きゅ」
果物やらお肉やらあげた。喜んで食べてる。
かわいい……。
そして私も……ああ、コシヒカリ! コシヒカリのおにぎりだよ!! 前世ぶり!
サンディ!! ニホンのどこの誰だったかは知らないが! ありがとう!
「おまえ、泣くほど美味いのか……? そんなにライスボール好きだったのか」
「好きさ! 大好きさ!!」
「……おまえ、言葉……いや、まあいいか……」
ドミニクスがなんかドン引きしてるけど、どうでもいいや。
コシヒカリ(魚沼産)食べられたとか、今生において最高の出来事ですよ。
「なんだか、王都にいた時とイメージが全然違ってきましたね。この人」
ハーマンにこの人扱いされた。
「かなり分厚い猫被ってましたね、アナスタシア様」
コニングが苦笑しながら言う。
「貴族なんて皆そうでしょ」
「アーシャ、そんなに王都だと違うイメージの子なの?」
「兄上、こいつは王都だといつも、すまし顔で上から目線のいやなヤツでしたよ。実を言うとオススメしませんよ」
こいつ……。 せっかくのご飯が不味くなるような事をまた。すいませんね! 嫌な奴で!
「否定はしないよ。確かにすましてたのは本当だしね。どうやらドミニクス殿下は、私のお小言が多かったせいでトラウマになっているようですねー」
「はっ。誰がおまえなんかでトラウマになるか」
「んー……ドミー。ひょっとしてアーシャのこと好きなの?」
ミーシャが頓珍漢(とんちんかん)な事を言った。珍しいな。
「ゴフッ」
ドミニクスが口に含んでた水でむせた。
「な、何を言ってるんですか。兄上。そんな訳ないでしょう」
「そう? それならいいんだけど」
ミーシャは普通に笑顔で喋ってるがどこか圧がある。
ハーマンとコニングが、私達を見て、うわーって顔で見てる。なんなの。
「ミーシャ、それは無いわよ。その人は婚約者であっても、一度だって私に何かしら、それらしいアプローチしたことないもの。むしろいつも喧嘩に近いような感じだよ。初見でお前を愛することはないとか言われたし」
誕生日プレゼントとか明らかに侍従が選んだものとか送られて来てたしなあ。
ついてたレターの字も、こいつのものじゃなかったし。
「へー。そっか。そうなんだね」
なんか、納得してないな。
「そうですよ。兄上が引き取ってくれるなら、有り難いってもんです。せいせいしますよ」
ミーシャを見ずに、再び水を口に含むドミニクス。
「それはそれは両思いで良かったわ」
ふん。
「あ~あ……」
「そっか、そういう……うん」
だから、ハーマンとコニング! その憐れむような目はなんだよ! どうしたんだよ!
「なんだ、お前ら……」
ドミニクスがハーマンとコニングを見た。
「いえ……」
「なんでもないです……」
「……」
ドミニクスはその後、食事をたいらげて、さっさと食卓を立った。