「さてと、コニング様……」
「は、はい……」
「先程の看板に書かれていたのは、この……囲まれてしまった、……この空間から、脱出するための方法が書いてありました」
コニングの顔がパッと明るくなる。
「本当ですか? それなら何故、皆さまに説明しないのです?」
「それが、その。非常に言葉にしづらい方法で……」
うわあ、助けて、言いづらい!!
「え……。それは一体……」
「それは――……」
私は説明した。
「えええ!!」
コニングが顔を真っ赤にし、悲鳴のような声をあげた。
「しーっ!!」
ソファの方をみると、ミーシャが機嫌の悪そうな顔でこっちを見ていた。
目が合うとニコ、と笑顔されたが……怖い!
「ひょっとして、その相手を僕に!?」
「違うわ!! 他の方法をなんとか探しましょう、考えましょうって話を皆にしてほしいってことよ!!」
「あっ……すみません、とんだ早とちりを。たしかにそんな事になれば、僕はミーシャ殿下に殺されますね」
コニングはさらに顔を赤くして苦笑した。
「ああ、でも」
コニングは顔は赤いままだったが、すこしクスっと笑った。
「たしかに女性からは言い出しにくい事ですよね。それに他のメンバーを考えると僕が一番話しやすい内容だろうな、とも確かに思いますね。……了解しました。僕が話しましょう」
……人選、間違ってなかったな!
コニング、話しがわかるじゃん!
「ええ、お願いするわ」
私達はソファー組へ合流し、コニングが、説明を行った。
「ぶっ」
一番に、ドミニクスが吹き出した。何故笑う。
笑い事じゃないんだぞ、お前。だいたいお前のせいだし。
「え?? なにどういうこと?」
ミーシャがわかっていない。
やはり閨教育は、まだだったか。まあ、そうだよね……幼かったし。
「え……本当にそんな事が書いてあるんですか?」
ハーマンが眉間にシワをよせて私を疑う。貴様……!!
「そんな嘘付く必要ないでしょ!?」
私は真っ赤になって否定した。
「あはは、まあ、そうですよ。嘘を付く必要はないですし、僕はアナスタシア様が嘘をついているようには見えませんよ」
コニングー!! なんて良い子なの!!
あんたが私を海に落とした事、もう許す……!!
「コニング様……」
私が感動したようにコニングを見つめると、彼はすこし照れたように微笑んだ。
「はは……」
「僕だってアーシャ信じてるよ……」
はっ。
隣に座っている光属性のミーシャから、黒いオーラが……。
ヤ、ヤンデレ化はだめだ!!
私はミーシャの両手を包んで言った。
「そうよね、ありがとう、ミーシャ……」
「うん。そうだよ。僕が一番信じているからね」
「う、うん……」
危ねぇ。
それにしても酷いヤキモチだな……。先が思いやられる。
「まあ、それなら話しは簡単だな……兄上、姉上お願いします」
ドミニクスが、しらけたような声で言う。
……は?
「そうですね。お相手が決まっている方々がこのメンバーにはいるのですから。簡単な話しです」
待て、ハーマン。
「ちょっと、待ってください。他の方法を相談しようという会議がしたかったんですよ、アナスタシア様は」
コニングが制する。コニングありがとう、ありがとう。
「他の方法ってなんだよ。方法は一つしか書いてないならそれが答えだろ。めんどくさい。抱き合え」
ドミニクスー! お前はもう少し考えるということを覚えろ!!
「ところで、えっちって何? それをアーシャと僕がすればいいの?」
ミーシャがそこでそう言った。
一同がシーンとした。
「ふ………ふふふふふ……私はもう駄目だ……」
私は頭を抱えて、俯いた。
「あ、アナスタシア様しっかりしてください!!」
コニング、お前は良いやつだな……。
お前だけが私の気持ちをわかってくれる。
生まれてきてくれてありがとう。
「兄上……。ああ……。そうか、閨教育はまだでしたね……」
さすがのドミニクス殿下も、ミーシャには気遣うそぶりが見えた。
「あー、ミーシャ殿下。念のため確認させてください。子供はどうやったらできるかご存知ですか?」
ハーマアアアァン!
なんてことをミーシャに聞くんだ!! やめろ!!
「ああ、もちろん知ってるよ。えっちってそういう意味? 俗語か何かかな? そうかキャベツ畑作らないといけないんだね! あ、でもこの空間にキャベツの種とかないな……。なるほど、アーシャが頭を抱えるはずだし、他の方法を探そうっていう意見も最もだ」
――シーン。部屋は2回目の沈黙に包まれた。
「あー……しょうがない。アナスタシア。オレとやろう。ちょうどそこにベッドもあることだし」
ドミニクスが真顔でとんでもないことを言い始めた。
「おま、何言ってんだ!?」
「少なくともオレとお前は書類上まだ婚約者だ。正当な理由がある」
「あるわけねえよ!? おまえバカじゃねえの!?」
もう、令嬢の言葉は吹っ飛んだ。
私は日本のどっかの田舎の方言みたいな発音で言い放った。
「うわ、お前言葉、汚いな!? それがお前の真の姿か!? とんでもない女だったんだな!」
顔が笑ってる! こいつ遊んでやがる……!!
「誰のせいだ!? あんたもう、ほんと最低!!」
「ちょっと、ドミー。アーシャを怒らせないでくれる? 怒るよ?」
ミーシャ……庇ってくれてありがとう。
でもね? 喧嘩してるわけであってイチャイチャしてるわけじゃないの。
だから、ヤキモチの黒いオーラ出さないでほしいな!
「そうですよ、ドミニクス殿下。それに今は正式に婚約者といっても既に破棄すると宣言されましたし、無効かとオレは思います」
ハーマン! そうだよね! あいつ頭おかしいよね!!
「ああ、すみません兄上。つい……。……まあ、そうだな。オレも協力しようとは思ったが、やはりこんな女は願い下げだ」
「こっちのセリフだ!?」
「ドミー、本当に怒るよ」
「兄上、すいません」
私にも謝れよ!?
「したがって、ミーシャ殿下」
ハーマンがミーシャに向き直る。
「何?」
「今からちょっと……お勉強しましょう。あちらにデスクがありますので、移動なさってください」
「え、勉強? なんの?」
ミーシャがハーマンに連れて行かれる。
「待てやぁ!!」
私は泣いて立ち上がった。
「ははは、アナスタシア。嫌がってたみたいだが、これでもう将来の王妃確定だなぁ! 兄上、しっかり勉強してください!」
ドミニクスが楽しそうに笑って私を闇の手を使ってソファーに強引に座らせる。このヤロオオオ!!