翌朝。
私は、自分の小屋に持ち込んだサンディの服を整理していた。
私は一周回って、憤っていた。
くそ、もう二度と破廉恥だと言わせない服を来てやる!!
破廉恥とは言われてないけど!!
ウニクロよこせ、ウニクロを!!
サンディはSサイズのみ着ていた。だから、そっちはあの課金部屋のクローゼットにハンガーで並んでた。
そのサイズ以外は、大きいやつって文字が書かれた紙袋に無造作に突っ込んであった。
それを持ってきたのだ。
「とりあえず、着れる着れないかを判断していくか。同じサイズでも大きさ違ったりするしなぁ」
そのうち、航海にでると思うと、服は多めに準備できるならしておきたい。
私は独り言を言いながら、とりあえず無造作に取り出した、丈が長めの白いニットを着た。
「あれ、夏用ニットかな。チュニックタイプのような……太ももまで丈あるし……背中と胸元が空いてるから、これセットのインナーがあるんじゃないだろうか。無ければちょっと没だな」
ゴソゴソ探していると、まず、ショートパンツが見つかったので履いてみた。サイズは合った。
部屋で過ごす用なら良いだろう。
続けて私はアンサンブルを探したが、その途中でまた懐かしい物を見つけた。
「お、ニーソックス。リボンついてて可愛いな。あ~。長めのセーターに短パン履いてニーソとか、あったよ。いたよ。前世に。懐かしー」
……ん?
でも、なんかこれ。なんか引っかかるこのスタイル。
なんだっけ。
その時、ドアがコンコン、とノックされた。
私がドアを開けると、はしごで登ってきたミーシャが顔を出した。
「アーシャ! おはよう。あの、昨日の夜ごめん、その」
言いかけてミーシャが固まった。
「ああ、その事ならもういいよ。ミーシャは全く悪くな……ん?」
ミーシャがまた赤面している。
あ、やべ。このニット、胸元が少し覗いてたんだった!
アンサンブルというかインナーがまだ見つかってなかったんだった!
「アーシャ……また、そんな……か、可愛いけどなんていうか……あっ」
ミーシャがはしごを踏み外した。
「ちょっと! ミーシャ!!」
私はツリーハウスの扉から身を乗り出し、闇の手を出してミーシャを受け止めた。
「あ、アーシャ、ありが……う……!」
闇の手のひらから私を見上げたミーシャは、また口元を抑えた。
だ、大丈夫か!
「アーシャ!! 僕はいいから、早く部屋もどって!! 僕以外に見られないで!」
ミーシャが顔を真っ赤にしてギュッと目をつぶって叫んだ。
「何事ですか!」
ハーマンが駆けてきた。
「ミーシャが梯子を踏み外して……でも受け止めたから大丈夫だよ」
私は無表情で答えた。
昨日の夜のハーマンに私は怒っている。
しかし、ハーマンもキッと怒った。
「……あなたはまた、なんて格好してるんですか!? 免疫のない殿下を殺すつもりですか!?」
殺すつもりってなんだよ!!
「なんだ、うるさいな。まだ眠いってのに……」
「どうしました? 何かトラブルでも……」
ドミニクスと、コニングも来て、私を見上げて赤面した。
「アナスタシア様! ちょっとそれは……お部屋にお戻りください!」
「……おまえ、バカかー!! 丈が短すぎる!! 足を晒した格好で出てくるな!!」
……足。
あっ!!
私は問題点に2つ気がついた。
「……………」
バタン。
私は、いまだに固まっているミーシャを、地上に静かに降ろしたあと、無言で扉を閉めた。
ツリーハウスの中で、ガクン、と膝をつく。
まず1つ目……これ……童貞を殺すセーターだ……。
遠い記憶過ぎて思い出せなかった!!
なんかひっかかるって思ったのに!!
私は両手で顔を覆った。
彼シャツに反応してたミーシャだ。
ストライクゾーンだったかもしれない……。
ミーシャよ……意外とこういうの好きというか、刺さるよね……。
そしてもう一つ……。
……ニーソックスは履いてたし、ショートパンツも履いてたから隠してるとこは隠してるが……。
……多分、あいつら『絶対領域』に対して怒ってるな……。
前世でも、一部の人に刺さるファッションであるし……この世界で太もも晒すとかは、はしたないにも程がある……!
これは馬鹿と言われても何も言えない。
というか、死にたい、粒子になって消えたい。
しかし、しかしだよ。
このツリーハウス内だけで部屋着の予定だったよ!
外で着るつもりなど欠片もなかったよ。
ぐうう、前世の服はうっかり着ると、今世においては刺激が強すぎる。
だめだ、私はもう終わりだ。
死にたい。
私はDTK(童貞を殺す)服を脱ぎ捨てて、誰にも何も言われることがないであろう、学園の制服に着替えた。
そして、布団を被って引きこもった。