お昼ごはんはタコパーティにします。タコパ!
新鮮なうちに頂きましょう。
ヒロインのおごり、そして御結婚の引き出物です。
ゴリオと結婚おめでとうございます……!
「いや、よく無事で帰ってきましたね。お疲れ様です兄上、姉上」
ドミニクス殿下が言う。
「姉上じゃないよ!? それに書類上は、私はまだあなたの婚約者ですからね!?」
「そうだったな、姉上」
このやろう……。
その横でハーマンがタコ刺しを作っている。なにげに手際がいい。
わさびと醤油が欲しいなぁ。
贅沢言うと、オリーブオイルが本当に欲しい。
ああ、何か食用油手に入らないかなあ。
人数増えたから小麦も急にガクンと減った。
そうだ、あとで漂流物見に行こうっと。
「アナスタシア様、今後似たような事がありましたら、テレポートですぐに逃げてください。あなたは将来王妃になる方なのですから」
ハーマンが私に小言を言ってきた。
「まだ王妃になるとは決まってないわよ……」
「諦めてください。……どのみち貴女、たとえばミーシャ殿下が結婚やめる、と言い出されたとしても、ドミニクス殿下の元へ戻されますよ」
ぐはっ。確かにまあ、私はドミニクス殿下ヘルプ仕様で教育されているしな……。
ドミニクス殿下が、眉間にシワを寄せた。
「それは困るな。こいつお小言うるさいし」
「それはドミニクス殿下がちゃんとお勉強してくれないからでしょ!?」
「ほら、うるさい。兄上も本当にコレでいいんですか」
ドミニクス……! そうだ、こういうヤツだった! ヒロインから解放されても結局そういうとこは変わらないんだな!!
「え、何言ってるのかなハーマン。僕は絶対、アーシャと結婚するよ。それにドミー、アーシャをコレ扱いしないでくれる? アーシャは僕の奥さんになるんだから」
やんわり注意しながらも微笑んでそう言うミーシャ。
確定事項にされている。
こいつら、外堀埋める気か!
コニングが気分が悪そうな顔で、タコを石焼きしながら言う。
「この今焼いてる……魔物……タコ? えっと、僕達が乗ってた船を壊したのはこいつで、こいつを召喚したのがサンディ? 怖い女だな……。僕はそんな女を愛していたのか……。……というか、これ食うってすごい発想……」
「普通に美味しいわよ! 大丈夫よ!! コニング様は繊細ですね!!」
「アナスタシア様は心がお強いですね……さすが将来の国母」
コニング! おまえもか!!
こいつら絶対示し合わせてる!!
そりゃね、逃げないで王妃になるっていう考えもあるにはありますが、こういう事されると反発したくなるよ!
タコは食べきれず、冒険者魔法で保存できる処置をして、パントリーにいれたが、かなり面積占領した。
なんとハーマンが冒険者魔法を使えたので手伝ってもらった。
「意外ね。貴族で冒険者魔法を使える人って、珍しくない?」
「騎士科は、覚える人いますよ。選択授業にはなりますけどね。遠征やサバイバルを想定すると冒険者魔法はやはり痒いところに手が届く魔法ですから」
「へえー」
たしかに。今もこのタコをしばらく腐らせないで済む処理ができたしね。
前世だと氷室が欲しいってなりそうだけど、あってよかった冒険者魔法。
おかげで、そのうち航海に出る時に持っていける良い保存食になりそうだ。
「アーシャ、ちょっと来て。お風呂作りに行く前に、もうコニングの工房作っちゃうから、闇魔法で切り出した岩を捨ててほしいの」
「はーい」
「ありがとうございます……」
まともになったコニング、やや腰低い子だなぁ。
私を海に突き落とした時が嘘みたいだ。
そして岩壁にまた1つ作業部屋が増えた。
ミーシャが作れるもので、コニングが希望する道具や棚も揃った。
「午前中にいくつか薬草を見つけたので、早速保管します」
コニングが嬉しそうに作業を始めた。
「あれ、虫かご?」
「ああ、虫も捕まえてます」
例によってカゴはミーシャが作ったらしい。
「虫……?」
「……場合によっては薬の材料に」
聞くんじゃなかった!!
「さてと、じゃあ私は漂流物見に行ってくるね」
「だめ」
出かけようとしたら、ミーシャに服の裾を引っ張られた。
「え、なんで」
「……また何か起きないか心配だから、僕とドミーが温泉作るの見てて」
「そんなにしょっちゅう、事件が起きたらたまらないよ!?」
「海に落ちてからのツタコンボはまだ記憶に新しいですが、今日またタコ事件が追加されたでしょう。ミーシャ殿下の仰る通りになさったほうが良いのでは?」
ハーマンが非常に余計な口を挟んだ。
コンボ言うな!!
「なんだよ、ツタコンボって」
「ドミニクス殿下は知らなくていいです!!」
「……オレはハブかよ」
私は顔を真っ赤にして言った。
「そんな事しないわよ! でも、世の中知ってはいけないことがあるのですよ!!」
「あー……申し訳ありません、オレの発言のせいで。ドミニクス殿下、じつは」
「あああああ!! 説明すんな!!」
ハーマンがドミニクス殿下の耳元でゴニョゴニョ説明した。
「……」
しばらく間をおいて。
「姉上、オレが悪かった」
めったに謝らないドミニクス殿下に、素直に頭を下げられた!!
なんだその憐れむような目は!
謝ってもらってもなんか腹立つ!!
あと姉上言うな!