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⑮無人島生活5日目03■ 割りと身近な人が意外な癖(へき)を持ってたりしますよね。


「ねー、何の話ー?」


 ああ、ミーシャが退屈してしまった。


「ミーシャ、ごめん。ちょっと彼の話をよく聞きたいの」


「洗濯物干場の約束はー?」


 むっすー、としてる。


「そうだったね」


 約束は守らないとな。しかも、私からお願いしたことだ。

 今日のところは、ここまでにしよう。


「ハーマン様、どこか拠点にされてる場所は有ります?」

「いえ、特には。毎日場所を変えて移動しておりました」

「えっと、少し情報交換などをしたいと思いまして。拠点をお持ちなら伺おうかと思ったのですけど」


「ああ、結構ですよ。時刻や日付を決めてくだされば、私がここへお伺いします。そちらの御仁にもご迷惑をおかけしました。なんなら明日のこの時間ここへ参りますが、いかがです?」


 綺麗なお辞儀で私達に挨拶するハーマン。


「ありがとうございます、ハーマン様。ではそれでお願い致しますわ」


 ハーマンは去っていった。




 ハーマンが去っていった後、横を見ると、ミーシャが口を尖らせてる。

 ハーマンから助けたのに、ハーマンと私が話し合いの場をもつことになったのが気に入らないんだろう。 当然のことではある。ごめんね。


「……あの人と僕で話し方違うよね、アーシャ。話すの楽しそうっていうか」


 結構細かいこと気にしてた!


「あー……うん、いや、あれは情報収集したくて。楽しい会話っていうより必要な会話っていうか」


「ふうーん……仲良くはないの?」


 ようは、やきもちか……。


「仲良くはないよ。他人っていうか……。さっきのミーシャの鳥さんのおかげで、仲悪くもなくなったけど」


「そっか。なんかとても仲良さそうに見えちゃった」


「それは、そう見えただけだよ。必要なことを話してたからね」


 尖った口は元に戻った。

 それはそうと、お礼を言わないと。


「ミーシャ、ありがとうね、心配してきてくれて。よく私が危ないのわかったね」

「あー、うん。えっと……そこの小鳥たちが教えてくれたから」


「えっ」


 このシマエナガ(仮)たちはミーシャの友達だったのか。


「そうか。小鳥さんたちありがとうね」


 言葉はわからないだろうけれど、お礼を言った。

 小鳥たちは首をかしげていた。可愛いなあ。


「……(教えてくれたっていうか。その子たちの目を使って視てたんだけどね、僕が)」


「洗濯物、さっさと終わらせちゃうね」

「うん」


 私は洗濯物の続きを始めた。

 闇の手でばしゃばしゃ。

 その横で、ミーシャが洗濯物干し場を黙々と作り始めた。


 洗濯物が終わった後、ミーシャに教えてもらいながら、洗濯物を干すための縄を編んだ。

 こういう編み方とかも自分で考えたのかな。すごいなミーシャ。


「一人だったから……時間はいっぱいあったからね。いろんなことをたくさん考えたよ」


 すこし寂しそうな笑顔だった。


 そうだ、昨晩のことがハプニング過ぎてつい忘れてたけど、ミーシャは10年以上寂しい思いをしてきたのだった。

 これは忘れちゃいけないことだった。反省。


 私はよしよし、と彼の頭を撫でた。


 寂しそうな笑顔は嬉しそうな笑顔に変わった。

 色々お世話になりっぱなしだし、何かお礼がしたいのだけど私にできるお礼って何があるだろう。


 出来上がったばかりのロープを使って洗濯物を干した後、樹の家へ帰ることにした。


 太陽の位置的に、そろそろお昼作らなきゃなぁ。

 あと……あ! そだ。


「ミーシャ、赤くてこれっくらいの実……木苺っていうんだけど、どこかで見たことない? こういうやつ」


 私は紙に描いてみた。


「きいちご……ああ、知ってるよ。でも近くのは僕が食べちゃってて少ないから……。えーっと……」


 ん……? また何か動物に聞いてくれてるのかな。便利だな。


「あ、こっちにたくさんあるみたい」


 割と近くにあった。ありそうな気がしたんだよね、聞いてみてよかった。


「わ、本当、いっぱいあるね」

「好きなの?」

「ううん、これで少しだけジャム作ってみようかと思って。あと小麦粉で簡単なクッキー作ろうかなって。卵なしクッキー。で、ジャムを乗っけて食べるの」


「クッキー……知ってる、なんか覚えてるよ! たべたいー!」


 目がキラキラしてる。可愛い。


「……ミーシャが食べたクッキーは王宮料理人が作った高級品だろうから、きっとがっかりするよ?」


 私は苦笑した。

 私は特に器用でもないし、料理が好きな方でもない。

 前世では、たまに興味引かれては作り、そして飽きてやめたりと、本当にど素人だ。


「そんな事ないよ! アーシャが作ってくれるものなら何でも食べるし絶対美味しい!」

「そっか、じゃあ頑張るよ。……ミーシャ、また道具作ってくれる? あると嬉しいものがあるの」

「作る作る!」


 よかった、楽しそうだ。


 昼ごはんをとりあえず食べながら、作って欲しいものを説明した。

 めん棒やら、クッキー型。ボウル。魚など生物を捌くのとは別のまな板……etc


 結構お願いしたのに、わかったー、わかったー、とニコニコ笑顔で引き受けてくれる。

 なんて良い子なんだ。……というか優秀なお子様……いや、うん、王子様だな。

 しょうがないとはいえ、王子様をこきつかっちゃってるなぁ、私。


「丸とか四角、それにお星さまの形に、ハートの形……へえー。クッキーの形ってこうやって作ってたんだね」


「他にもやり方あるかもしれないけど、私はこれしか知らないの。形は別に私が言ったものじゃなくても、ミーシャが作ってみたい形があれば、それでもいいよ」


「うん。たのしそう、僕も型抜きやってみたいー」 

「じゃあ、一緒に作ろうか」

「うん」


 とってもワクワクしているな。

 こうしてると本当に見た目は大人なのに子供に見えてくるから不思議。



 出来上がったクッキーは、素人感は否めないものの、それなりに満足できるものだった。

 ジャムをつけてミーシャに食べさせて上げたら、またとても喜んでくれた。


 結局ミーシャに手伝ってもらうことにはなったものの、喜んでくれたし、少しはお礼できたかな。



 それにしても、わざとじゃないのにミーシャに色んな扉を見せてしまっているな……。


 気をつけないと。


 出会った時は全裸。そしてまさか反応するとは思わなかった彼シャツ。

 そしてさっきの……うっわ思い返しても恥ずかしい。


 ……忘れよう。



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