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⑭無人島生活5日目02■ なぜ私の胸元を見ながら喧嘩する。そして手作り菓子にはとんでもないもの入れるヤツいるから気をつけ

 ――私はヤツの状態を確認する。


 ハーマンも、制服がボロボロで頬がコケてる。


 船が沈んでからもう5日経つ。

 それなりに苦労はしたのだろう。

 よく無事にこの島に流れ着いたものだ。


 ――それはともかく。

 ふむ、今なら体力的に勝てる……かどうかはわからないが、逃げる事は簡単だ。

 テレポートあるし。


 けど、拠点が近すぎる。

 すぐに発見されるだろうなぁ。



「ハーマン様、ずいぶんな格好ではないですか。ご苦労なさったのですね」


「ハッ。そんな事、思ってもいないくせに。……お前は今までどうしていた」


「貴方と同じ、サバイバル生活5日目ですわ」


「そのカゴはなんだ? ここには住民でもいるのか? お前が作ったわけでもあるまい」


「落ちてました(嘘)」


「は……。まあいい。救援がくるかどうかは、わからないが……一時休戦、協力しあおうじゃないか」


 いやー……。あなたが私に持ってる感情考えると無理でしょ……。

 ミーシャにも悪影響でそうだし。


「断ります」

「なんだと」


「私は一人でも大丈夫ですので。お互い一緒にいて居心地の良い相手でもないでしょう。そういえば浜辺にドミニクス殿下とサンディ様がいらっしゃいましたよ、そちらに合流なさっては?」


「サンディが、生きて……いるのか……!」


 彼の顔に、生気がさした。

 ヒロイン命だものな、それは心配していただろう。良かったね。


「そうですよ。お二人で協力し合う、と仰ったので、このように別行動しております。さて、そろそろ、その剣を降ろしてくださいません?」


 本当はすぐに、闇の手を召喚し、こいつを背後から殴り飛ばしても良いんだけれど、暴力はギリギリまで使わない方がいいだろう。

 今の話で引き下がって、殿下たちを探しにいってくれれば、それでよし。


「いや? サンディと殿下がいらっしゃるなら、土産が必要だろう」


 そういうとハーマンは、剣先を私の胸元まで降ろし、ボタンを1つ飛ばした。

 私の胸が揺れて谷間がのぞく。


 ……こいつ!! このエロセクハラ野郎!! 


「サンディに以前、お前を大人しい女にしてほしいって頼まれてな」


「……そうですか」


 へーーほーーーふーーーん。


 サンディ、あいつ……。


 もういいや、闇魔法を使って殴ろう、と思った時。


 ガキン!!!


 ハーマンの剣が、その音と共に半分になった。

 音の源、そして剣を真っ二つにした、光の刃が地面に突き刺さる。


「な!?」

「ええ!?」


 そしてその後――


 ピーーーーーー、とレーザー音がして光の線がハーマンが持つロングソードのまだ残っていた刃を、粉々にした。


 こ、これは!



「アーシャに何してるの………」


 ……。


 とても声の主に心当たりがありすぎる。

 声がしたほうって空なんだけど……まさか、と思って空を見上げたら、うっすら光る球が浮かんでおり、その中にミーシャがいた。


 こいつ、飛んでやがる……!


 そしてなんかちょっと頬が赤く染まってる。


 さ て は。


 ……ボタン飛ばすとこ見てしまったのか!


 くそっ!


 免疫のないミーシャにイケナイ扉を見せてしまったか!!



 そしてミーシャの傍には白い鳳凰――鳥さんが羽ばたいている。


 うわ~~、神々しい!!

 脱・腰ミノさせておいて良かった。


 どうでもいいけど、鳥さん、目がハシビロコウ(前世情報)だよ!! いつもの可愛い瞳どこいった!!


 怖っ!!



「な……! 光魔法だと!? だれだお前!! 見たことないぞ、お前みたいな生徒!!」


「ハーマン様、彼は生徒ではないです」


 ミーシャは私の傍に降りてくると、肩を抱いてきた。


「アーシャ、大丈夫? ……怖かったよね」

「あ、いや……だ、大丈夫だよ、うん」


 別に1人でもハーマンは倒せた気はする。

 無駄な心配をさせたかもしれない。それはごめん、ごめんけど。


 でもね、心配する割に、ミーシャよ、君の目線は――


 な ぜ 私 の 胸 元 な の。


「オレの剣が……!!」


「たしか、尊敬されてるソードマスターさまから頂いた剣でしたっけ。残念でしたね」


 そう言うと、ハーマンはキッと私を睨んだ。


「絶対に許さん……!」


 睨んでくるけど、わずかに視線が、下方向にずれてますね。あなたの瞳も。


 なんで私の……胸 元 を睨んでるのかな?(不愉快)


「アーシャを見るな!!!」


 ミーシャが叫ぶと彼の神鳥が、神々しい光を放った。


「わ!? まぶし!」

「うわあ!?」


 ――その光は、ハーマンを包み込み、しばらくハーマンは全体が光り続けた。


「あ……あああ……」


 どさっ。


 ハーマンは仰向けに倒れた。


 青い空を眺めて呆然としたままだ。

 死んで……はないよね。

 どちらかというと、何か憑き物が落ちたかのような顔つきだ。


「ふんだ。アーシャの……アーシャを見て良いのは僕だけだ……!」


 ミーシャ。……今、途中、何を、言いかけた。



「ミーシャ、今、鳥さんは何したの?」


「ん? 鳥さんにこの人、心が汚いから、綺麗にしてってお願いしてみた」


 この鳥! 心の浄化を!?


 さすが神鳥……。

 目がまだハシビロコウだけど……。

 鳥さんの感情ってミーシャと連動してるのかな……。怒ってるよね、これ。


「う……」


 ハーマンが頭を振って起き上がった。


「あ……オレは、今まで……何を……」


 自分の両手を見つめて震えてたあと、ハッとしてこっちを見た。



「エルヴェスタム公爵令嬢、今まで、申し訳ありません!! オレは……いえ、私は今までなんて暴言をあなたに……!!」


 なんだこの変わりよう!?


 土下座して、頭を地面にガンガンしてる。ちょっと待てーい!



「ちょっと、そこまでしないで! ……というか、あなたいきなり性格変わりすぎじゃ……」


 ……これは、ヒロインに出会う前の彼のイメージだ。



「随分前、サンディにクッキーを貰ったんですが、その後から頭がおかしくなっていって……」


 ……あのヒロイン、確か聖属性でほかに魅了とかもってなかったはずだから、攻略対象が頭どこかおかしいのはなんでだろうって思ってたのだけれど、クッキー?


 想像でしかないけど、ログインボーナスでもらえるやつとか、課金アイテムとかってやつ?


「ねえ、他の取り巻き男性達もクッキー食べた?」


「ああ、皆でよく頂きましたよ。それ以来どうにも……サンディを崇拝する気持ちになってしまって……」


 そういうことか!


 彼女は自力で彼らを攻略した訳じゃないんだな。


 でもまあ、ログインボーナスや課金アイテムもヒロインが使っていい特典っちゃ特典だから、ルール外ってわけでもないのだよなぁ。

 やってる事は鬼畜なんだけど。


 正直、彼女のやり方見てると、なんでこれで男が落ちるのか、とか思ってたとこはあるけど、外見がめちゃくちゃ可愛いからやっぱ顔が全てなのかしら、とも思ってた。


 さらに私も悪役令嬢の仕事サボってたしなぁ。


 なるほど、課金アイテムか。合点がいった


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